(1963/スタンリー・ドーネン製作・監督/オードリー・ヘプバーン、ケイリー・グラント、ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ、ネッド・グラス、ドミニク・ミノット、ジャック・マラン、ポール・ボニファ/113分)
TVの洋画劇場で何度か観た作品。ブログフレンドのオカピーさんがレビューをアップされて、数年前に1コインDVDを買っていたのを思い出し、鑑賞。何年ぶりか忘れるほどのご無沙汰でした。
親友のシルヴィー(ミノット)とスキー場にバカンスに来ていたレジーナ(ヘプバーン)は、夫のチャールズにはウソや秘密が多くて、しかも何か危ない仕事もしているようなので離婚をすると宣言するが、パリの自宅へ戻ってみると夫はおらず、部屋の中はもぬけの殻、やって来た警察署長(マラン)にチャールズが列車から転落死したことを報される。遺留品は航空会社のバッグが一つだけで、中にはレジーナが知らない偽名のパスポートがあり、家財道具を競売して手に入れたであろう25万ドルもの大金もなかった。チャールズに関する署長の質問にまともに答えられないレジーナ。そもそもチャールズの事を良く知らずに結婚したのだった。
電気も水道も止められた部屋で呆然としていると、スキー場で知り合ったピーター(グラント)が新聞記事を見たからとやって来て、親切にも彼女にホテルを世話してくれた。
シルヴィーと二人だけの葬儀会場。
突然、見知らぬ三人の男(コバーン、ケネディ、グラス)が次々と現れ、遺体がチャールズであることを確認した。中には死んだ事を疑うように遺体を傷つける者もいた。
葬儀場のレジーナにアメリカ大使館からの呼び出し状が届き、翌日行ってみると、情報局長のバーソロミュー(マッソー)から、意外なことを聞かされる。
チャールズは本名をボスといい、戦時中はCIAで働いていた。5人の仲間と共にドイツ軍の軍資金となる25万ドル相当の金塊を盗む指令を受けるが、本国には失敗したと嘘をつき何処かに埋めて隠した。戦後、掘り返して山分けする予定だったが、チャールズが抜け駆けして独り占め、その事を知った他の仲間に殺されたのだろうと言うのだ。
事情が飲み込めたレジーナはフランスを出ると言い出すが、バーソロミューは、チャールズは逃げようとして殺されたのであなたも逃げない方が良いと言う。例の三人の男は、あなたが25万ドルを持っていると思っているし、ひょっとしたら既に25万ドルは別の男がチャールズから奪っているかも知れないと。
ホテルに戻ってみると、三人の内の一人スコビー(ケネディ)が部屋の中を嗅ぎ回っており、気が付くとピーターも三人の男も皆このホテルに宿泊しているのだった。
ピーターと二人きりになったレジーナに電話が入る。電話の主はスコビーで『一緒にいる奴の名前は本当はダイルだ。そいつもお金が目当てだから気を付けろ』と言われる・・・。
「踊る大紐育 (1949)」や「雨に唄えば (1952)」などの演出で有名なスタンリー・ドーネンの、お洒落なムードのサスペンス。
「シャレード」【原題:charade】とは、<身振り手振りで言葉あてをする遊び。ジェスチャー・ゲームのひとつ>とウィキペディアでは紹介されており、双葉先生の「映画の学校」では<文字による謎々あそびのことで、一見したところ意味不明な言葉でも、その言葉を構成する一字一字を推理していくと一つの文章になる、という暗号解読式の趣向>もあると書かれています。
思わず身を乗り出してしまうミステリアスな序盤、何が真実なのか分からなくなってくる中盤、ハラハラし、アッと驚く展開の終盤と見所は充分なのですが、初めて観た時は(中学生くらいだったでしょうか)途中から意味が分からなくなってしまった記憶があります。今回久しぶりに観てみると、子供の時にストーリー展開に付いていけなくなった理由が何となく分かってきました。
序盤のミステリアスな展開から、まず観客が気になるのは25万ドルの行方。ところが、謎めいた三人の男たちの登場やら、ピーターまでもが嘘をついているという展開ばかりが表立っていて、肝心のお金に関する流れが伸びていかないんですね。中盤では、誰が殺人者かという流れの方が強くなってくる。たとえ真実に近づかない事であっても、お金の捜査に関する流れを作っておいて、その中に男たちを絡ませていけば良かったと思うんですが、原作者で脚本も書いたピーター・ストーンは、アッと驚く結末に自信を持ちすぎたのか、お金の流れはアレで充分だと思ったのか。
もう一つ物足りないのが、オードリー演じるレジーナの魅力。オードリーが主役で三人の悪漢が出て来るという設定で思い出す「暗くなるまで待って (1967)」、そしてパリが舞台の「おしゃれ泥棒 (1966)」。あの二つの作品に出てくる女性に比べると、レジーナはやや没個性的でありますな。
これ以外の不満はネタバレになりますので、下記に記すことにします。
ヘンリー・マンシーニ作曲の超有名なテーマ曲は、1963年のアカデミー賞で歌曲賞にノミネート。
キャメラのチャールズ・ラング・Jrは、オスカーノミネートが10回を越える大巨匠で、この後「暗くなるまで待って」も「おしゃれ泥棒」も撮っています。オードリーのご指名かな?
ピーター・ストーンさんはピーター・ジョシュアのペンネームを使うことも有るとか。ピーター・ジョシュアは今作のケイリー・グラントの役名でしたから、ストーンさん、お遊び上手ですね。
ついでに、警察署長を演じたジャック・マランは「禁じられた遊び (1951)」で馬に蹴られて死んでしまうミシェルの兄を演じた役者。「おしゃれ泥棒」では美術館の警備員の役でした。
▼(ネタバレ注意)
久しぶりの鑑賞なので忘れている部分がかなりありましたが、誰が一番胡散臭いかは出演者の顔ぶれを見れば、すぐに分かりますね。ケイリー・グラントが本当は悪い奴でないのも僕らにはすぐに察しが付いちゃうし(当時のアメリカの観客だって騙されないよね)、彼の正体が分かってしまうと、中盤のオードリーにウソの説明をしているシーンもホントに嘘臭くて2度目はなんだかつまらない。
ラストの25万ドルの行方は完全に忘れておりまして、そのシーンになってやっと思い出しました。
ギデオン(グラス)は夜中に誰かに電話で起こされて、エレベーターの中で殺されます。やったのはダイル(マッソー)なんですが、ギデオンは電話の相手がちゃんと分かっているように話しています。つまりダイルがパリにいることを知っていることになります。これって少し可笑しくないですかね。
ギデオンとダイルが裏で繋がっていたという事ですが、この辺の事情が曖昧なままでスルーされています。観客に犯人はテックス(コバーン)かピーターかと思わせて、ミステリアスムードを盛り上げたい為だけのシーンで、これも2度目以降は作りが雑な印象を残しちゃうんだよなぁ。
ラストの劇場でのハラハラは文句なしに面白い!
▲(解除)
TVの洋画劇場で何度か観た作品。ブログフレンドのオカピーさんがレビューをアップされて、数年前に1コインDVDを買っていたのを思い出し、鑑賞。何年ぶりか忘れるほどのご無沙汰でした。
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親友のシルヴィー(ミノット)とスキー場にバカンスに来ていたレジーナ(ヘプバーン)は、夫のチャールズにはウソや秘密が多くて、しかも何か危ない仕事もしているようなので離婚をすると宣言するが、パリの自宅へ戻ってみると夫はおらず、部屋の中はもぬけの殻、やって来た警察署長(マラン)にチャールズが列車から転落死したことを報される。遺留品は航空会社のバッグが一つだけで、中にはレジーナが知らない偽名のパスポートがあり、家財道具を競売して手に入れたであろう25万ドルもの大金もなかった。チャールズに関する署長の質問にまともに答えられないレジーナ。そもそもチャールズの事を良く知らずに結婚したのだった。
電気も水道も止められた部屋で呆然としていると、スキー場で知り合ったピーター(グラント)が新聞記事を見たからとやって来て、親切にも彼女にホテルを世話してくれた。
シルヴィーと二人だけの葬儀会場。
突然、見知らぬ三人の男(コバーン、ケネディ、グラス)が次々と現れ、遺体がチャールズであることを確認した。中には死んだ事を疑うように遺体を傷つける者もいた。
葬儀場のレジーナにアメリカ大使館からの呼び出し状が届き、翌日行ってみると、情報局長のバーソロミュー(マッソー)から、意外なことを聞かされる。
チャールズは本名をボスといい、戦時中はCIAで働いていた。5人の仲間と共にドイツ軍の軍資金となる25万ドル相当の金塊を盗む指令を受けるが、本国には失敗したと嘘をつき何処かに埋めて隠した。戦後、掘り返して山分けする予定だったが、チャールズが抜け駆けして独り占め、その事を知った他の仲間に殺されたのだろうと言うのだ。
事情が飲み込めたレジーナはフランスを出ると言い出すが、バーソロミューは、チャールズは逃げようとして殺されたのであなたも逃げない方が良いと言う。例の三人の男は、あなたが25万ドルを持っていると思っているし、ひょっとしたら既に25万ドルは別の男がチャールズから奪っているかも知れないと。
ホテルに戻ってみると、三人の内の一人スコビー(ケネディ)が部屋の中を嗅ぎ回っており、気が付くとピーターも三人の男も皆このホテルに宿泊しているのだった。
ピーターと二人きりになったレジーナに電話が入る。電話の主はスコビーで『一緒にいる奴の名前は本当はダイルだ。そいつもお金が目当てだから気を付けろ』と言われる・・・。
「踊る大紐育 (1949)」や「雨に唄えば (1952)」などの演出で有名なスタンリー・ドーネンの、お洒落なムードのサスペンス。
「シャレード」【原題:charade】とは、<身振り手振りで言葉あてをする遊び。ジェスチャー・ゲームのひとつ>とウィキペディアでは紹介されており、双葉先生の「映画の学校」では<文字による謎々あそびのことで、一見したところ意味不明な言葉でも、その言葉を構成する一字一字を推理していくと一つの文章になる、という暗号解読式の趣向>もあると書かれています。
思わず身を乗り出してしまうミステリアスな序盤、何が真実なのか分からなくなってくる中盤、ハラハラし、アッと驚く展開の終盤と見所は充分なのですが、初めて観た時は(中学生くらいだったでしょうか)途中から意味が分からなくなってしまった記憶があります。今回久しぶりに観てみると、子供の時にストーリー展開に付いていけなくなった理由が何となく分かってきました。
序盤のミステリアスな展開から、まず観客が気になるのは25万ドルの行方。ところが、謎めいた三人の男たちの登場やら、ピーターまでもが嘘をついているという展開ばかりが表立っていて、肝心のお金に関する流れが伸びていかないんですね。中盤では、誰が殺人者かという流れの方が強くなってくる。たとえ真実に近づかない事であっても、お金の捜査に関する流れを作っておいて、その中に男たちを絡ませていけば良かったと思うんですが、原作者で脚本も書いたピーター・ストーンは、アッと驚く結末に自信を持ちすぎたのか、お金の流れはアレで充分だと思ったのか。
もう一つ物足りないのが、オードリー演じるレジーナの魅力。オードリーが主役で三人の悪漢が出て来るという設定で思い出す「暗くなるまで待って (1967)」、そしてパリが舞台の「おしゃれ泥棒 (1966)」。あの二つの作品に出てくる女性に比べると、レジーナはやや没個性的でありますな。
これ以外の不満はネタバレになりますので、下記に記すことにします。
ヘンリー・マンシーニ作曲の超有名なテーマ曲は、1963年のアカデミー賞で歌曲賞にノミネート。
キャメラのチャールズ・ラング・Jrは、オスカーノミネートが10回を越える大巨匠で、この後「暗くなるまで待って」も「おしゃれ泥棒」も撮っています。オードリーのご指名かな?
ピーター・ストーンさんはピーター・ジョシュアのペンネームを使うことも有るとか。ピーター・ジョシュアは今作のケイリー・グラントの役名でしたから、ストーンさん、お遊び上手ですね。
ついでに、警察署長を演じたジャック・マランは「禁じられた遊び (1951)」で馬に蹴られて死んでしまうミシェルの兄を演じた役者。「おしゃれ泥棒」では美術館の警備員の役でした。
▼(ネタバレ注意)
久しぶりの鑑賞なので忘れている部分がかなりありましたが、誰が一番胡散臭いかは出演者の顔ぶれを見れば、すぐに分かりますね。ケイリー・グラントが本当は悪い奴でないのも僕らにはすぐに察しが付いちゃうし(当時のアメリカの観客だって騙されないよね)、彼の正体が分かってしまうと、中盤のオードリーにウソの説明をしているシーンもホントに嘘臭くて2度目はなんだかつまらない。
ラストの25万ドルの行方は完全に忘れておりまして、そのシーンになってやっと思い出しました。
ギデオン(グラス)は夜中に誰かに電話で起こされて、エレベーターの中で殺されます。やったのはダイル(マッソー)なんですが、ギデオンは電話の相手がちゃんと分かっているように話しています。つまりダイルがパリにいることを知っていることになります。これって少し可笑しくないですかね。
ギデオンとダイルが裏で繋がっていたという事ですが、この辺の事情が曖昧なままでスルーされています。観客に犯人はテックス(コバーン)かピーターかと思わせて、ミステリアスムードを盛り上げたい為だけのシーンで、これも2度目以降は作りが雑な印象を残しちゃうんだよなぁ。
ラストの劇場でのハラハラは文句なしに面白い!
▲(解除)
・お薦め度【★★★★=この映画を観ていない、友達にも薦めて】
それにしても、やっぱり役者さんに詳しい方は誰が犯人かわかってしまうものなんですね~。さすがです!
リアルタイムで観ていたら、有名なのはグラントとジェームズ・コバーンだけで、マッソーも低迷の時期だから、頭の中???だらけで観たかも知れないですね。
>25万ドル
はヒッチコックのいうマクガフィンではないのかなあ?
結局悪党・善玉入り乱れてのゲーム感覚を最初から最後まで楽しめば良い、と僕は解釈していますけど^^;
幕切れ前のサスペンスは、スターシステムの弊害がなければ、グラントとマッソーのどっちを信用したら良いんだと、僕らもヒロインのオードリーよろしくドキドキできちゃうんだけどねえ^^
>日本でも1コインでも売れないはずなのに
53年製作の「ローマの休日」が揉めたことを思い出しますが、そういえば変ですね。
水野春郎さん監修(解説は無しです^^)のヤツですけどね。