テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

禁じられた遊び

2005-10-15 | 戦争もの
(1951/ルネ・クレマン監督/ブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリー、シュザンヌ・クールタル、ジャック・マラン/87分)


 フランス映画を語るときに、この作品を外すわけにはいきません。
 一般に反戦映画と云われていますが、そのつもりで観たン十年前。確かに哀しいラストではありますが、それまでのストーリーは、少年ミシェルの子供時代の楽しかった思い出話の感覚で観れるので、“微笑ましい映画”との印象が強かったです。初恋話ではないけれど、突然現れた可愛い少女との束の間の生活は、ミシェルの心に楽しい思い出を残したのではないか。そんな風に捉えていたのですが・・・。

 DVDが出ていたので久しぶりに観てみました。87分という短尺で、アッという間に終わってしまいました。
 前回の印象は薄らいで、“禁じられた遊び”にのめり込んでいった子供たちを客観的に見ることが出来ました。光り輝くようなモノクロ画面ののどかな田園風景にサイレントの匂いをも感じましたね。役者の動きもそう。前回も感じましたが、ミシェルのドレ家とお隣さん(グアール家)とのいがみ合いはコミカルで牧歌的でさえある。その辺の設定もサイレント映画みたいでした。
 出だしの疎開風景やドイツ軍の空襲シーンには、ドキュメンタリーを撮っていたルネ・クレマンらしいタッチがみられました。全体の雰囲気も、時々流れるギターのBGMだけの映像詩のようであります。

*

 1940年のフランスの田舎道。ドイツ軍の攻撃から逃れる為に、人や車、馬車などの長蛇の列が続いている。ポーレットも両親と一緒に車で移動していたが、そんな民間人の列にもドイツ軍の爆撃機は容赦なく爆弾を落とし、機銃掃射をくわえていた。
 飛び出した愛犬を追いかけていくポーレットを捕まえようとした両親は、背中を撃たれてあえなく死んでしまう。わずか4、5歳のポーレットには両親の死の意味が分からない。馬車で移動中の老夫婦が彼女を乗せてくれるが、小犬は死んでいるからと川に捨てられてしまう。先を急ぐ人々でごったがえす中、ポーレットは馬車を降り、流れていく小犬の死骸を追って河原を走る。

 愛犬を拾うことが出来たポーレットをミシェルが見つける。ミシェルはこの近くの農家、ドレ家の末っ子坊主だ。ポーレットが先程の空爆で親を亡くした少女であることを理解したミシェルは、家に連れていく。
 ドレ家では長男が大怪我をしたばかりだった。空爆で主人をなくした馬車が畑にやって来て、それを制しようとして馬に蹴られたのだ。医者は、空爆による傷病者の治療に出かけていて村には不在だった。

 ミシェルとポーレットは小犬の埋葬をする。ポーレットはお墓には十字架を立てるということを教えてもらう。小犬が一人では可哀想だとモグラや虫の死体を集めて近くに埋葬しようと思う。そこは、二人だけの秘密の場所だった・・・。

▼(ネタバレ注意)
 数日後、ミシェルの兄が亡くなる。
 その葬式の日、墓地でたくさんの十字架をみたポーレットは、ミシェルにそれを欲しがる。いけないこととは知りながら、ポーレット可愛さに夜中に墓地へ行って十字架を盗むミシェル。大人が気付かないわけはない。司祭にミシェルの仕業だと教えられた父親は、ミシェルに盗んだ十字架の使い道を聞きだそうとするが、ミシェルはしゃべらない。14本も盗んでいたので、弁償するのも大変だ。次の日、警察がやって来る。ミシェルの父親はミシェルを見つけて十字架の場所を聞き出そうとするが、警察は実は、ポーレットを孤児院へ連れていこうと迎えに来ただけだった。

 “お墓作り”が“禁じられた遊び”というわけだ。十字架を盗むことも勿論いけないことだから“禁じられ”ているが、としわもいかない小さな子供のすることだから、悪意はない。ポーレットは無意識のうちにパパとママのお墓作りをしていたのではないか。見終わってふとそんなことを考えましたな。

 ラストシーンの切なさ。“微笑ましい映画”との印象が強かった前回はそれ程感じなかったのですが、今回はウルッとしてしまいました。戦争に翻弄されたいたいけな少女の話であることを思い知らされました。
▲(解除)

 ポーレットを演じた天才少女ブリジット・フォッセーは、46年生まれだから当時5歳くらい。演技を感じさせない自然な表情が素晴らしい。15年後、「さすらいの青春(1966)」でカムバックしたのは雑誌で読んで知っていたが、この映画は観なかった。青春メロドラマとのこと。スチール写真では、現代劇ではない、ちょっと旧めの衣装を着ていたように記憶している。

 ミシェルのジョルジュ・プージュリーは、「死刑台のエレベーター(1957)」に出ていた。犯人モーリス・ロネの車を盗む若いカップルの役だった。ン? ここでも盗みをやっていたのか。2000年に亡くなっていた。

 『愛のロマンス』という、オープニングのタイトル・バックから流れているナルシソ・イエペスのギターは有名ですな。昔は、ギターを覚えたての頃は、誰もが一度は弾いていました。

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8 コメント

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すっかり・・・ (TARO)
2005-10-15 12:28:37
大昔にみましたが、ストーリーの細部はすっかり忘れてました。何が「禁じられた遊び」だったのかも、忘れてた・・・(呆然



「さすらいの青春」は「モーヌの大将(ル・グラン・モーヌ)」の映画化です。青春小説の名作ですね。映画はいまひとつ締まりにかけたかも。
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「モーヌの大将」 (十瑠)
2005-10-15 13:53:09
ン?

なんか、本の方は読んだような気がしてきました。文庫本だったと思いますが・・・。
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小ネタ・・・ (izumi)
2006-02-25 14:41:36
十瑠さん、こんにちは~。

うっ、“小ネタ”、本当に気になりますね・・・。

あの痙攣は演技だったと思う事にしましょう。うんうん。



ラストが本当に切なかったです。

私もあのラストでウルッときました。
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ウルッ (十瑠)
2006-02-25 20:01:25
ポーレットの泣き顔には負けますね。

ジワジワと涙が溜まっていくのが分かるし・・・。
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明けましておめでとうございます。 (mayumi)
2009-01-09 00:22:32
今年もどうぞ、宜しくお願い致します。

ミシェル役の子が、「死刑台のエレベーター」のあの若いカップルの子だとは知りませんでした!そして、確かに、また盗んでますね(笑)。

ブリジット・フォッセーの泣き顔の演技。あれ、どうやって演技指導したんでしょうね?本気で泣いてるように見えます・・・。
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mayumiさん、今年もよろしく♪ (十瑠)
2009-01-09 17:12:08
>ブリジット・フォッセーの泣き顔の演技。・・・本気で泣いてるように見えます・・・。

『ミッシェル』という言葉に反応して、今度は『ママ』を思い出してしまうポーレットにはまいります
やっぱ天才なんでしょう
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ラテン気質 (オカピー)
2019-06-08 21:45:03
弊記事へのコメント有難うございました。

>ドレ家とお隣さんとのいがみ合い
フランス人もラテン系であるわけですが、フランス映画でここまでイタリア的な隣人関係が見られるのは珍しいなあと思いました。

>ブリジット・フォッセー
是枝裕和監督の作品に出て来る子役たちもうまいわけですが、彼らのたくまざるうまさと違って、演技をしている巧さですよね。僕も今回観直して、やはり感心しました。

>「さすらいの青春」
既に指摘されているように「モーヌの大将」(グラン・モーヌ)の映画化ですが、割合青春の甘酸っぱさが好きな僕の好みでしたよ。映画は二回観ていると思いますが、原作は未読。
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ラテン系って (十瑠)
2019-06-09 10:06:30
スペインとかポルトガル、南米とかって昔は思ってましたけど、実はそうなんですよね。

>イタリア的な隣人関係

そう言われると、確かに。
体罰なんか当たり前の親子関係、師弟関係もイタリアとフランスって似てますよね。

兎に角可愛かったブリジットちゃんの、成人後の「さすらいの青春」は今も見たいです。スチール写真を今も覚えてますから。
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