テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

アーティスト

2018-03-24 | コメディ
(2011/ミシェル・アザナヴィシウス監督・脚本・共同編集/ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、エド・ローター、マルコム・マクダウェル/101分)


 ご存じ、2011年の米国アカデミー賞で作品賞他4部門でオスカーを受賞した作品であります。フランス製なんですけど、ハリウッドを舞台にしたからか、英語圏向けのバージョンがスタンダードだったせいなのか知りませんが・・。
 最大の話題はその創作スタイル。サイレント時代のハリウッドを描くという事で、モノクロ・スタンダードサイズで、しかも無声映画なのでした。1971年に50年代を舞台にした「ラスト・ショー」がモノクロ画面で作られ話題になりましたが、ストーリー当時の雰囲気を出す為に採用するにしても21世紀にサイレントで作るってと、びっくりしたもんです。「アーティスト」は大凡一世紀前のムードを持ってこようとしたわけですネ。

*

 時は1927年のハリウッド。
 無声映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンが、愛犬ジャックと共に新作の舞台挨拶に登場するのがオープニング。共演女優とは仲がよろしくないようで、ジョージが彼女の観客への紹介を遅らせたりと意地悪をする所がユーモラスに描写されるのが、かつてのサイレント映画らしい雰囲気であります。
 その後劇場の外で記者やカメラマンに囲まれてインタビューを受けるのも恒例だが、大勢のファンの中には女優の卵であるペピー・ミラーもいて、群衆に押されたペピーはジョージとぶつかってしまう。一瞬記者たちも凍り付くが、ジョージは怒ることもせずに笑顔で対応してくれた。

 次の日、仕事を探しに撮影所にやって来たペピーは、ジョージ主演の映画に踊りの出来る女の子の役で採用された。勿論エキストラだ。撮影所内の物陰でダンスの練習をしていると、偶然に見えた彼女の綺麗な脚元が気に入ったジョージが声を掛け、二人は再会する。主演男優とエキストラのはずなのに二人が腕を組んで踊るシーンもあり、テイクを重ねていく間に妙な親近感が湧いてくるのだった。
 出番の終わったペピーはお礼を言おうとジョージの楽屋を訪ねるも不在。つい部屋に残してあった彼の洋服に腕を通したりしているところを、帰ってきたジョージに見られ恥ずかしい思いもするが、大スターは女優の卵に優しくアドバイスをする。成功したいんなら個性を持たなきゃと、口元に付けぼくろを描いてやるのだった。

 時代はサイレントからトーキー(発声映画)に移行する頃。
 ジョージが所属する会社もこれからはサイレント映画は作らない方針となったが、トーキーに将来は無いと信じているジョージは会社を辞めて自身で無声映画を作ることにした。一方のペピーは徐々に知名度を上げ、ついにはトーキー映画の主役に躍り出るようになった。
 恐慌の嵐が吹き、ジョージの財産も危うくなり、頼みの綱は新作映画のヒットだけだったが、皮肉な事に彼の新作の公開日はペピーの新作公開と重なることになった。はたして、埋まった客席がまばらなジョージの映画に対して、ペピーのトーキー新作は映画館の表の道路上にまで切符を買い求める観客が列をなしている状態だった・・・。

*

 44歳で監督賞を獲ったミシェル・アザナヴィシウスについてウィキにこう書かれてました。

 <監督のミシェル・アザナヴィシウスはサイレント映画時代の映画製作者を賞賛し、自身も長年サイレント映画を作ろうとしていた。・・・アザナヴィシウスは、全盛期のサイレント映画の多くはメロドラマであると考え、本作をメロドラマにすることにした。彼は1920年代のハリウッドに関して詳しい調査を行い、また、大量の字幕を使わずに物語を理解させるテクニックを見つけるためにサイレント映画を勉強した>
 
 確かに少ない字幕でもストーリーはよく分かるし、字幕の入れ方もそつが無かったですね。個人的には後半の主人公の心情については、もう少し字幕なりが欲しいシーンもあったような気がしてます。
 序盤のBGMはチャップリン映画でよく聴いたメロディーだったので懐かしかったし、愛犬ジャック君の演技も最高で、これもチャップリンを思い出しました。
 序盤の劇中劇ともいえる新作映画の上映シーンで、観客の反応でストーリーを進めるテクニックが披露されていて、これはルビッチを参考にしたのかなぁとオールドファンは嬉しくなりましたね。

 実はチャップリンの「モダン・タイムス (1936)」もトーキー時代に作られたサイレント映画で、建前はサイレントなのにトーキーならではのチャレンジもしていて、例えばちょっとした音やチャップリンの唄声を聞かせるというシーンがある。あれに挑戦したんでしょうか、この映画にもちょっとした音出しのシーンがありました。どんなものかは後日ネタバレ記事があるかも。

 お薦め度は★三つ半。
 後半の悩める主人公のシークエンスが長すぎると感じました。明らかにハッピーエンドで終わるはずの物語で暗い展開がしつこくないかと。それならそれでもう少し意外性のある展開が欲しいと思いましたね。
 タイトルが「アーティスト」だからジョージが主人公だけど、予告編を観ると二人の恋物語とみるのが自然。その割にはヒロインの描写がバランス的には不足していると感じましたネ。それに個人的にはヒロインの魅力がいまいちかなと。新人さんの設定ですからね。ベレニス・ベジョは監督の奥さんだそうです。
 でもま、クラシック映画への興味を広げてくれたんではないかと、おまけして★四つです。

 脇役にも意外な人が出てて面白かったです。
 ペピーの最初のお抱え運転手にエド・ローター。
 ペピーのオーディションの時に隣に座ってた白髪のおじいさんはマルコム・マクダウェルでした。





・お薦め度【★★★★=真の映画好きの、友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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