hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●茂木本家美術館「北斎の滝と橋展」

2016-05-08 | Art

茂木本家美術館「北斎の滝と橋展」
 
北斎の滝シリーズ「諸国瀧廻り」を見に、千葉県野田市へ。

野田といえばおしょうゆ。茂木本家美術館は、キッコーマン創業の茂木家の12代目茂木七左衛門さんのコレクションを基に設立された美術館。

こちらも予約が必要。建物やコレクションについて、スタッフさんが簡単に説明してくれます。他にも何組も先客がいましたし、説明の後はゆっくり見られるので、緊張しなくて大丈夫でした(^-^)。

建物の解説は、窓の視覚のしかけ、窓から見えるサルスベリの木、木が映り込む仕掛けなど、興味深かったです。
 

北斎が70歳ころの作「諸国瀧廻り」全8枚が専用個室に。版画なので小さめなのですが、貸し切り状態なので、かぶりつき(^-^)/。

水が面白いのです。状態が良いので色も堪能できました。

『 下野黒髪山きりふりの滝 』


日光。岩間を舐めつくす水が、生き物か蛇のような。


『 木曽海道小野ノ瀑布 』


長野県植松町。氷の柱がザクッと刺さるようなシャープさが爽快。

『 木曽路ノ奥阿彌陀ヶ瀧 』


岐阜県郡上市白鳥町。

この滝、一瞬、てるてる坊主に見えるやつ。見晴らし台では、そこでお茶沸かすのね。

北斎は、目線の高さが自由自在で、天狗の化身かなにか?とたまに思います・・

『 美濃ノ国養老の滝 』


岐阜県養老郡養老町の養老公園。水しぶきも激しく。

 

逆に、ちょろちょろっとした流れも。「東海道坂ノ下清流くわんおん」



 ほかの作品もどれも、人が描かれているのですが、滝を見上げて激しさにびっくりしていたり、イモ洗い状態で禊ぎをしていたり、逆に馬を洗って実用的に使っていたり。

人が描かれているから、そこにずんっと描かれる滝も、どこか人っぽいのかもと。

そして北斎ブルーをこんなに吸い込むと、気分も爽快でした。

滝だけではなく、名橋奇覧のシリーズの橋も。
 「飛越の堺つりはし」

 一点に集中する重力に固視してしまうのですが、でも意外とのんきそうな鳥たちが飛んでいたりと、平和な感じです。

 

ハガキはありませんでしたが、「木曽街道名所一覧」1819の鳥瞰図は、すごかった!(画像はこちらから)

これを想像で描いたのだから、声を失う…(O_o)。

隣に、鍬形恵斉の「江戸鳥瞰図」が。スタッフさんのお話では、当時、鳥瞰図をはじめに描き始めたのはこの人。北斎はそれを見て鳥瞰図を描くようになり、「鳥瞰図といえば北斎」と言われるようになってしまった。鍬形恵斉は怒っていたということですが、確かに北斎の超絶技巧ぶりは、彼の力作をも圧倒してしまっていました・・。



常設も、明るい作品が多く、こんな明るい午後にはぴったりな感じ。
絵葉書も充実していました。

梅原龍三郎「鯛」



チューブから直接出して塗り込めているので、画像ではわからないけれど、むにゅむにゅっと飛び出しています。ピッチピチな鯛です。



小倉遊亀「古九谷徳利と白梅」



2年前,箱根の岡田美術館で、安田靫彦と遊亀が師弟揃って、同じような花瓶と花を徳利を描いているのが並んで展示されていましたが、これかな?うろ覚えなのですが。


富士山ルームもありました。
片岡珠子「めでたき富士」1992が観れたのも嬉しかった。

赤色がポイント。

坪内 滄明「秀峰」も、静謐というのでしょうか。



松本哲男「一宇一月明」1992は、大きな一枚



この三枚、同じ角度からみた富士山のようですが、山梨側かな?

 

梅原龍三郎の「富士山」は、この日の富士山の絵の中で、一番ひかれた一枚。

現代なんだけれど太古の世界とシンクロしたような、大きな世界。きんとうんに乗って見ているような気になれた楽しい絵でした。

それぞれの画風が個性を放っていて、面白い空間でした。


お庭は写真も可です。

広い敷地の奥には、お稲荷さん

ちょうど藤のきれいな季節


 スタッフさんがオススメしてくれましたが、手水の狐の透かし彫りは見もの。

「狐の嫁入り」の一行がかわいいです!新婦の乗る輿の透かしが細かい!

裏に回ると、親子狐!

こんなに凝っていてかわいい手水があるとは。茂木家の豊かさを実感。
 

四方の柱にも、それぞれ透かし彫り。
獅子に牡丹


この組み合わせは、ちょうど北斎の東博とおなじ。どちらも存在感負けてないですものね。


 中に玉が!



この牡丹は蕾が




樹齢はわかりませんが、古木を見ると抱きつきたくなります(^-^)


館内には、居心地のいいカフェも。

この日は和菓子が売りきれでがっかりしていたら、サービスのメレンゲが(^ ^)。

小さいですが、絵もお稲荷さんも広い敷地も、ゆったりとした気持ちになれる美術館でした。

帰り道の並木道には大樽が。

北斎の富岳三十六景リアルに。

れんが倉庫かな

昔使われていた、お醤油関連のもののようです。

野田市には、キッコーマンゆかりの大正レトロな建築や、町屋風の古い民家もちらほら見かけます。空き家もあれば、博物館や公共ホールとして現役使用されているのもあります。「高梨家住宅」は見ごたえありました。

観光地でもないですが、街に「すき間がある」感じが好きです。

さらに高島野十郎が亡くなった介護施設も野田。すぐ近くの報国寺というお寺さんには、田中一村の南画のコレクションがあったりと、野田市のまわし者ではありませんが、なにかとひかれる街なのです。

 



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