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二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●根津美術館「はじめての古美術鑑賞―絵画の技法と表現ー」

2016-08-21 | Art

根津美術館 「はじめての古美術鑑賞―絵画の技法と表現ー」

2016.7.23~9.4

 

所蔵品に例をとりながら、日本の絵画の技法や用語をやさしく解説。

どんな効果を生み出しているか、知ることができました。

描けそうな気がするシンプルな墨の絵。実際に自分で描いてみると、微妙な筆加減が難しくて、まったく全然線一本まともにひけやしない私。ここに展示されている作品は、いかに自然で美しく描きこなしていることか。

 

◆「たらしこみ」の章では、伝立林何吊 木蓮棕櫚芭蕉図屏風 18世紀

(画像はこちらの方のブログに

たらしこみは、この絵では木肌、葉の部分に。日本画で描かれた芭蕉が好きなので、この絵にはひかれます。しゅろは子供のころ家にあったので、幹についたもしゃもしゃしたヤツ(シュロ皮というらしい)が下によくはがれ落ちていたのを思い出して、しみじみ懐かしく。この部分もしっかり描かれていた。

それにしても、しゅろと芭蕉という南方系な植物と、木蓮との取り合わせ。しゅろは高く伸びる木ですが、目線は上から。木蓮はその上をいって咲いています。ちょっと不思議な感じ。

解説にちらっとありましたが、渡辺始興に同様の作品があるとか。(平成26年の仙台での「樹木礼賛―日本絵画に描かれた木と花の美―」展覧会チラシに出ていたこの絵かな?)始興なら大胆な植物の組み合わせもしそう。画像が荒いですが、目線の位置も似ていますし、こちらもたらしこみの部分があるように見えます。実物を観てみたいものです。

たらしこみは、「偶然を狙った効果」と解説にありましたが、これもやはり経験値あってこそ。

 

◆「溌墨」の章では、「溌墨山水図」が三点。

なかでも雪舟の弟子で、雪舟亡き後の周防画壇で活躍したという、周徳の絵は見とれました。淡いブルーも感じる墨。別の絵ですが、周徳「山水図」

水を多く筆に含ませ、「大胆に山や岩崖をかたまりとして描く」と。一瞬ですから、描くに先立って、対象をとらえる目が問われそう。心眼とまでは言わないまでも、心にどう落とし込んでおくか。簡単すぎて難しい・・・

「その即興性は、人前で描けば必ず喝采を浴びたであろう」とありましたが、なるほど、臨済僧のパフォーマンスでもあったのです。

 

◆外暈(そとぐま)

雪や光など、明るいものや白いものの表現に。

「富嶽図」仲安真康 15世紀(部分)

技法とは関係ないけれど、この絵、なんだかかわいく思えてくる。富士山がまんなかにぴょこん、どうだって感じ。(禅僧さまに怒られそうだけど、全体の構図のはしきれメモ)

 

「白衣観音図」赤脚子 15世紀

   

光背の部分、外側に薄墨をひいて、光の形が浮き上がらせている。後ろの岩を少し離して描いていたり、観音様の後ろにさらに少し影を入れたり、それで一層光のふわっと淡い感じが。気づくと白衣の白がかなり白く際立っているけれど、それから光背に目をやると、これまたこの微妙で自然な加減がなんとも言えず、いい。

滝の流れも外暈で際立っています。

それにしても、この観音様のチャーミングさ。伸びやかでくつろいで。

「白衣観音図」では、根津美術館で見た山本梅逸のもの(こちらの方のブログに)がとても心に残っていますが(これも外暈だった)、較べると、梅逸の観音様は、神々しい感じ。梅逸らしい写実的な岩が、観音様の神々しさをさらに演出しているよう。

逆に赤脚子の岩や波は優しい感じ。観音様は好きな音楽でも聞いているように水音を楽しんでいるような顔。対照的な白衣観音様です。

赤脚子という人物については詳細が不明のようですが、素敵な絵に出会えました。

 

◆「つけたて」は、応挙が開発した技法なのだそう。

松村景文「花卉図襖」1813

ねむの葉が印象的。貝母、かたくり、春ラン、百合、とろろあおい、秋かいどう、桔梗、つゆ草、カヤツリグサ、菊、水仙と。

葉も木の幹ものびやかで、達者な筆さばきにうなります。色も浅めで、すっきりした襖。これは気分がのってるかどうか透けて見えてしまいそう。

 

◆「金雲」

日本の屏風らしいこの技。雲、霞みだけでなく、省略、区切り、装飾に用いられる。(いかにばれずに手を抜くか(×)ではなくて)自在に区切り、見せたいものを強調する(〇)ことができるということ。

「両帝図屏風」狩野探幽 1661 は、風雅な世界でした。(こちらに小さな画像が)

上の洛中洛外図屏風は、南蛮屏風などでもよく見る、もくもくとした金雲ですが、探幽のこちらは、砂を巻いたような「金砂子」という方法。描かれた二人の帝はどちらも伝説の皇帝。神話の世界を表現するために、かすみのような金色。壁や床、輿に至るまで、あしらわれた模様が繊細で、色も優雅でした。

右双の黄帝は、舟と車を作り、国をすみずみまで収めた始祖。黄帝が指さす外の方には、車と舟が。今日はどちらに乗るのでしょう。舟の前後につけた龍と鳳凰も雅です。

左の舜帝は、琴を弾いて天下を治めた。帝の表情もとても穏やか。庭には鳳凰が飛んできました。

 

◆「白描」

にじみやぼかしを使用せず線だけで描くのだから、雑念やら線の拙さがばれてしまうね。。密教の仏教画に用いられるとあったけれど、確かに精神のありようを問われそう。鳥獣戯画の模写もありました。

 

◆「截金」

この細密さ!どんなに時間がかかるのだろう。文様の規則性も美しい。仏の着衣や背景に用いられるということなので、この作業自体が信仰なのかな・・。

大威徳明王像」13-14世紀 は六面と六本の手足を持つ明王、水牛の上に立ち矢を射る姿。炎の迫力に圧倒されました。

こちらはウィキペディアの画像でフリーア美術館蔵の絵。截金ではないようですが、こちらも迫力。

 

◆「裏箔」

「藤原鎌足像」16世紀(部分)

裏から金を塗る奥ゆかしさ。絹目を通すことで、金銀の強い輝きを幾分抑える効果があるのだとか。

実は人知れず奥行きのある深みを出していたのですね。画像はバックの御簾に使われていますが、他の絵では台座に。金属の表現に使うと、時間の経過や薄暗がりもあらわされていて、いい味わいでした。

 

◆「繧繝彩色」

仏画ではよく見るグラデーションですが、「愛染明王」13世紀の花弁の部分は、7段階にも分かれているとは。

求聞持虚空蔵菩薩・明星天子 14世紀は、青緑の繧繝彩色でした。

 

いい勉強になりました。

 

そしていつものように、青銅器の部屋を堪能。

中央に鎮座した三個セットの饕餮文盃

一個しか絵ハガキがありませんでしたが、饕餮の間にそれぞれ違う顔がついています。ガラスでよく見えなかったけれど、それぞれ鳥?鹿?コアラ?っぽい。紀元前13~12世紀の青銅器は、不思議すぎて尽きない興味。

楽しい時間でした。



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