hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●室瀬和美「蒔絵ー伝統を創る」と、正倉院の螺鈿

2022-12-10 | Art

書きかけ放置日記の蘇生作業、4つめです。

前回にも書いた、螺鈿と室瀬和美さんについて。

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室瀬和美「蒔絵ー伝統を創る」

2022年1月14日~23日、銀座和光 本館6階和光ホール

銀座和光、そして初日とあって、室瀬和美氏ご本人もいらしており、華やかな会場でした。

たくさんのお祝いの花の贈り主は、だれもが名前を知る方々ばかり。どれも豪華で、美しく個性的なアレンジで、全部しげしげと愛でてきました。

 

ガラスケースのなかに、漆と螺鈿の花器、茶入、蓋物など。

お値段のついている商品もあり、撮影は不可ですが、こちらの大きな金の壁画のみ、撮影可でした。

蒔絵壁画「春風」

見る角度によって、金の色調やきらめきが変化し、とてもきれいでした。

この上なく豪華なのですが、モチーフはかわいらしいのです。

 

こちらは外の通りのディスプレイの画面を撮ったものです。

映りこんだ街越しにも、文様が輝いていました。

こんなに金砂子をちりばめて、こぼれ落ちないのかしらとも思うのですが、室瀬氏は「研出蒔絵は、使うための丈夫さと美しさを兼ね備えている」と。

研出蒔絵とは、平安時代に始まる技法。漆に絵を描いて、漆が乾かないうちに金砂をまき、上から漆を塗りかぶせ、最後に研磨して下の金蒔絵を浮かびあがらせる、という手の込んだ技法だそう。

 

漆も、あまりにしっとり濡れたように艶やかなので、何度も手のひらで包んで触ってみたくなる衝動にかられました。

螺鈿では、椿やリスなどのモチーフを螺鈿で施した香箱が、かわいらしく美しく。

(会場でいただいたカードから)

椿もリスもですが、こんなに大きな面で螺鈿を切り出せることに、驚き。

しかも、こんなに淡いピンク色の螺鈿とは。どこの貝なのだろう。

黒漆にちりばめられた青い螺鈿もきらめいて、もう眼福眼福。

 

1月13日の新聞に、室瀬さんが取り上げられていました。

室瀬氏は、前回の日記の琉球漆器の再現にも携わっていらっしゃいましたが、

この記事でも、2011年に、正倉院宝物の「金銀鈿荘唐太刀」のさやの漆の再現に携わったとき、研出蒔絵と同じ技法が使われていることを知り、「技の源流が天平以来1200年受け継がれてきたことに、震えるような感動を覚えた」と。

 

そういえば、2019年の「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」では、「螺鈿紫檀五弦琵琶」と「螺鈿紫檀阮威」の模造復元品が展示されていました。

その螺鈿も、たいへん大きく美しく、目を見張ったものです。(現物は撮影不可。模造復元品は撮影可)

「螺鈿紫檀五弦琵琶」明治32年の模造復元品

裏側までも美しかった!

別の部屋には、2019年に宮内庁が8年かけて復元完成した螺鈿紫檀五弦琵琶も展示され、製作過程のビデオも流されていました。

 

「螺鈿紫檀阮威」も、明治32年の模造復元品が展示されていました。なんと愛らしくきらびやかな。

螺鈿の淡い揺らめきに、えもいわれず…。

 

宮内庁は、明治の復元から130年を経て、何百枚もの夜行貝を集めて螺鈿紫檀五弦琵琶を復元し得ましたが、紫檀やべっこうは現在は入手できないため、国内の備蓄品から調達したとのこと。弦は、上皇后さまが育てられた蚕からとったもの。

しかし次の100年後は、この高い技術を持った作家もおり、材料も確保でき、このクオリティを落とさずに復元できるだろうか??。

伝統が絶えてしまわないよう、取り組んでいらっしゃる製作者の方々、研究を重ねている方々に、深い感謝を感じます。