hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●東京藝術大学美術館 陳列館  日本画第二研究室 素描展

2022-12-03 | Art

書きかけ日記と放置写真の蘇生作業の2回目です。

どこまで遡るのよの2021年7月の日記に写真をつけておりますが、今でも藝大の学生さんたちの素描に引き込まれたことを覚えています。

この時の展示の中に、柴田是真が人体や手指を写し取った写生帖が展示されておりましたが、

ちょうどいま、国立能楽堂の資料展示室、「特別展「柴田是真と能楽 江戸庶民の視座」でも、是真の写生帖が展示されています。

藝大所蔵の是真の写生帖95冊のうち能関係の10冊をはじめとして、屏風や掛け軸など、是真と能とのかかわりがたっぷり展示されているようです。12月23日までですので、行って来ようと思います。

 

2021年6月23日~7月5日

東京藝術大学美術館 陳列館 「日本画第二研究室 素描展」 (無料)

「日本画第二研究室」の学生さん、教授、准教授の方々の素描が、各々2坪分くらいずつ、展示されていました。

その中央に、大レジェンド、柴田是真、小林古径、狩野芳崖、小堀鞆音の下絵も。古径、芳崖、小堀鞆音は藝大で教鞭をとっていました。

実は、是真や古径を目当てに来たのですが、認識が誤っておりました。現役の方々の素描、すばらしかったです。

幾人か載せていきます。

宇野七穂

干からびた花や死者を写し取った数々。

ミイラ?にも、しおれた花にも、不思議と瑞々しさの痕跡が感じられてくる。花には確かにまだ色が残っている。かつての生をすくいあげている。

 

 

山崎結以

揺らぎ、あいまいさ。柔らかい光。

先ほどとは全く違う。色と光でとらえる素描。

と思ったら、鉛筆の素描。ネコは毛の流れまで再現。

毛のやわらかい手触りが伝わる。

 

 

澤崎華子

外隈のように花の輪郭を表している。花もきれいだけれど、その背景もとてもきれいな色。

室内の光のやわらかさに改めて気づく。

 

 

宮北千織(准教授)

院展などでは装飾的な背景の女性や少女が印象的な方だけど、花の素描もこんなにも美しく繊細なのかとうっとり。

色の変化、小さなめくれ、萌芽、息遣い。

つぼみの先端にまでも命がいきわたっている。

しべなど、命が次代に廻り代わることすら想起させられてしまう。

梅は、小さな枝にも繊細に視線が行き届く。

線ものびやかで、花の新芽も生き生き。

 

燕子花にはため息もれそうな。

開き始める花びらの動き。繊細でひそやかな時間を写し取っている。

葉っぱの先端の向きまでも、見入ってしまう。

 

アジサイは、色のハーモニーを写し取っている。

こういう方に比べたら、私の眼と神経って百万倍くらい画素数が荒いんだろうな...

 

斉藤典彦(教授)

「ものがそこにある様とイメージの間を、

 今日も行きつ戻りつする。

 捕まえたと思う瞬間、

 何かがすり抜けていく。

 もののありさまに微小を見、

 絵具の滲む様に極大を思いやる。

 そんなことの繰り返し。」

山をこんなふうにとらえられる方なんだ。

水のにじみと広がりがとてもきれいだった。

私は花の中では珍しくクリスマスローズが苦手なのだけど、ここではこんなに美しくとらえられていることに驚く。そしてこんなに秘めた強さのある花だったのかと。

葉っぱにもピンク。

 

 

渋谷真希

「対象物と向き合ったときに、その場その瞬間に感じた感覚や思いを、実直に描き表したいなと思いしたためる。」

本当に、なにげなく行き過ぎては消える瞬間瞬間の、言葉のない記録のようだった。

 

江連裕子

水映りを描きとった数々。

微かな風も見える。

水田!個人的に好きな画題です。

 

古い家屋や廃屋を写し取った素描も数点。

描いているもの、まなざし、その時の心持ち。図々しくも、もしかして共感できていると言ってもよいだろうか。

 

そこに咲く花や、枝から折り取った枇杷。この方の絵には、なんだかそこに静かで長い時間の幅があるのを感じる。

 

 

佐々木慧

「対象の存在をぴったりとそのまま自分の手がなぞるように写せたとき、素描ができたと感じます。自分のわがままなしにただ写すことができれば、対象の内側にあるものも自然と見えてくるのではないかと思います。」

言葉その通りの絵。たんたんと、無心の謙虚な姿勢。

 

 

柴田是真の写生帖には、なんと人物。

手を描きつけている。おばば様は母のますだろうか?。右側の人物は是真の子?肉づきが印象的。

花の素描は生き生き。筆の強弱の巧みさやのびやかな線に惚れ惚れ。

 

小林古径

ひだの向き、葉脈の向き、命の向き。一枚一枚の花弁に、迫力と生気。

手でこすったあとも見えて、古径ファンとしては感涙もの。

静かな絵なのに、迫力。

そして、一つの調和の中に納まってる。

 

狩野芳崖

こんなに小さい写生帖なのに、牛の重量感。

 

小堀鞆音

 

毎年この時期に開催されているようですので、来年もお邪魔しようと思います。

帰りに、藝大内の庭でひと息。こちらのキッチンカーのドリンクはいつもおいしいです。小さなお菓子がついてくるので喜んでいます(招き猫のほう。ツリー型のサンドクッキーは別注。こちらもおいしいです。)。