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はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
牧知花&はさみのなかま名義の作品、たっぷりあります(^^♪

臥龍的陣 番外編 空が高すぎる その9

2023年05月11日 20時01分35秒 | 臥龍的陣番外編 空が高すぎる



劉表の家臣のひとりに、おしゃべりな男がいた。
伊籍、あざなを機伯と名乗った。
かれはどうやら、ひと目で徐庶を気に入ったらしい。
一通りのあいさつをし終わったあと、いまはちょうど手が空いているからといって、親切にも、襄陽城のあちこちを案内してくれることになった。


その伊籍がいうことには、襄陽城の居城は、劉表が入るまでは、風紀が乱れきって、建物もぼろぼろで、荒みきった場所であったという。
これを劉表がきれいに整えた。
こと細かに指示をだし、いまのように、大幅に改修させ、居心地のよい場所となったという。
とはいえ、ここにずっといると、『居心地がよい』となるのか、それとも、周囲に配慮し、あえてそう口にしているだけなのだろうかと、徐庶はひそかに疑問に思った。


さらに伊籍は言う。
劉表は、曹操が儒者をきらっていることをよく知っている。
そこで、多くの儒者が平穏をもとめて南へ逃れてくることを見越し、かれらのために多くの住居を建てたのだという。
そのひとりが司馬徽であり、名文家で名高い王粲でもあるという。


『おれが故郷の潁川から逃げてくる途中では、そんないい話を聞いたことがなかったが』
と徐庶が思い返していると、伊籍は、屈託なく、
「劉州牧は、この戦乱の世において、やんごとなき身の上の方が、下手をすればどこまでも堕ちてしまう今日のありようを嘆いておられるのです。
そこで、中原で苦しい生活をしておられる高名な方々に手紙を書き、積極的に襄陽城に招聘されておられる。
それゆえ、むかしは田舎の城と揶揄されていたこの襄陽城も、あっという間に、天下の智者の集る学問都市に変貌した次第。
われら家臣は、つねづね、それを誇りに思っているのですよ」
と、言った。


それを聞いて、徐庶は納得した。
『身分が低いおれなんぞに、劉表の声がかかるはずがない。
よく考えてみれば、劉表は儒学者を保護しているので声望は高く響いているが、荊州の民を慰撫したという話は、あまり聞いたことがない。
内乱も起こらず、長く平和を保っているということは、目だったことはしていなくても、きちんと民を大切にしている証左だともいえるが…荊州の平和は、ひとえに曹操と袁家の戦いが長引いているからではないのか。
そんなふうに思ってしまうのは、おれのひがみだろうか。
劉表が儒学者を保護している目的は、自分の名を保たせるための上っ面だけのものように思えてならないのだが』


掃き清められた廊下と、色とりどりの花の飾られた花壇と、清楚な衣を身にまとった、華やかな仕女たち。
美しい城であると思うが、どこかうわべだけだという感覚がぬぐえないのは、いま自分が感じたことを裏付けるものなのだろうか。


太陽はたしかに空から光を降り注いでくれているというのに、城内には、どこか暗さが感じられる。
気のせいだとは思う。
だが、本能が、どこかで、この城を拒否しはじめていた。


つづく

※ いつも当ブログに遊びに来てくださっているみなさま、本日は遅くなって申し訳ありません。
そして、ブログ村およびブログランキングに投票してくださっているみなさま、サイトのウェブ拍手を押してくださった方、ほんとうにありがとうございます(*^▽^*)
とても励みになっています。
さて、本日は更新時間がずれて、申し訳ありませんでした。
昨日の夜の時点では、「朝は余裕があるだろう」と思っていたのですが、じっさいに家事をぜんぶやってから外出の支度となると、時間がほとんどありませんでした…
やっと落ち着いてきたので、いまの時間(20時)に更新しています。
お待たせして、しかも分量が少ないですが、きりがいいので、この内容です、おゆるしくださいませねー。
今日の残りの時間、みなさまが楽しく過ごせますように。
祈りつつ。ではでは、また明日、いつもの時間にお会いしましょう('ω')ノ



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