No Room For Squares !

レンズ越しに見えるもの または 見えざるもの

駅前の光景 JR北上線・黒沢駅

2021-10-01 | 駅前の光景










単発だけど。久々のシリーズ「駅前の光景」。日本で最も乗降客数の多い駅は新宿駅で、一日250万人以上の人が利用すると言う。僕が学生時代によく利用していた池袋駅は、約190万人で3位らしい。緊急事態宣言下で、それがどうなっているのかは知らない。知らないけれど、田舎に住む身からすると驚きの数字だ。秋田県でもっとも利用者数の多い駅は、秋田駅である。一日約2万人。秋田県では他に1万人以上利用する駅は存在せず、2位の土崎駅で約4千人。そもそも秋田県の人口は約96万人。仮に県民全員が秋田駅を利用してどこかに行き、また帰りに秋田駅に降り立ったとして、池袋駅と同等。渋谷駅の利用者数に及ばない。そんな非現実的な話はさておき、一日100万人を超える利用者がいる駅にも、無人駅で殆ど利用者がいない駅にも、等しく駅前が存在する。駅前というカテゴリーで括ることが不可能に思えるほど、激しい差異がそこにはあるだろう。されど駅前。

今回の駅はJR北上線の黒沢駅。北上線は秋田県横手市と岩手県北上市を結ぶ全長約60kmの路線である。奥羽山脈を東西に横断する形で東進する。山越えでは、和賀川につくられたダム湖の錦秋湖に沿って走り、車窓からは四季折々の美しい景色を眺めることができる。和賀川は終点の北上あたりで北上川に合流する。北上線はここで終わりである。その後の北上川はどうなるのだろうか。北上川は進路を南に取りつつ、やがて宮城県に入る。そして石巻市で太平洋にたどり着く。北上川の終点部分には、石巻市立大川小学校があった。あの東日本大震災の大津波で、全児童の7割にもあたる74名が亡くなった小学校だ。僕は和賀川を見ると、この川は北上川と合流し、やがて大川小学校まで流れていくんだなと、なんともいえない気持ちになる。

さて黒沢駅だけど、この駅は秋田県と岩手県の県境付近にある。住所的には秋田県横手市となる。駅周辺の黒沢地区は中心部から遠く離れた小さな集落である。岩手県境まで僅か2km。もしかすると岩手側との往来の方が盛んなのかもしれない。例えば、最寄りの食堂を利用するとして、同じ秋田県で一番近い食堂まで約8kmほどある。ところが岩手県側であれば、約2.5km先と遥かに近い。(その食堂は画期的な食堂で、驚きの仕掛けがある。いつか紹介したい)。駅周辺の集落には店も何もない。ただ民家以外には、少し離れた温泉への送迎待合所があるだけだ。そもそも鉄道だって、数少ない温泉利用者以外は、学生や高齢者だけだろう。駅前に佇むと、少し離れたバイパス道路を走る車の音が聞こえる。それ以外は風の音と鳥の声だけだ。豪雪地帯なので、冬になれば全ては雪に覆われる。真冬の駅は見たことはないが、それも良いかも知れない。何をどうしたって、密になることなんて不可能な場所もある。


X-PRO3 / XF16-80mmF4 R OIS WR


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