グレースの自動車・鉄道撮影記

80年代の自動車(日本車と日本車ベース自動車)の画像や鉄道車両(115系等)の写真など。画像の無断転載は固くお断り。

2023年2月に撮影した現代自動車グレース

2023-02-10 15:37:41 | 韓国の自動車
 海外自動車探索復活第一弾として紹介するのは韓国の現代自動車で生産されていたワンボックスカーモデルの現代グレース。
 グレース登場前の1977年から1981年まで現代自動車ではHD1000というワンボックスカー(韓国だとミニバスと呼ばれる)を生産販売していたが、全斗煥政権下で第二次オイルショックを理由にした自動車合理化措置の影響でHD1000の生産が停止され、現代自動車からワンボックスカーが消えることになる。
 しばらくして自動車合理化措置が解除され現代自動車でHD1000に変わる新しいワンボックスカーを開発し、1986年12月からグレースを販売することになった。グレースのデザインを見て気づいた方も多いと思うが、当時、現代自動車と提携していた三菱自動車のワンボックスカー最新鋭だった3代目デリカがベースとなっており、デリカをベースにしながらも韓国の事情に合わせながら生産された。三菱3代目デリカと細かい差異があったり、途中で小変更を加えたりしたものの、1993年3月まで3代目デリカほぼそのままの姿で販売され、韓国内では角ばったデザインに見えることから角グレースと呼ばれる。同時期に販売していた三菱ベースの自動車、ポーター(2代目デリカトラック)やグレンジャー(デボネアV)も角ポーター・角グレンジャーと呼ばれている。

 今回見掛けた個体は1989年3月から1990年11月まで販売された1989年型。この年式からウインカーランプがオレンジ色から白色へ変更となっているのが特徴。右側のウインカーランプが破損しているので分かりにくいが、左側のウインカーランプが白色になっている。
 これまで紹介した角グレースはフロントガーニッシュ付でヒュンダイマークが中央にある(ヒュンダイマーク無しのもあるが)1990年11月以降の個体だったが、この個体はフロントガーニッシュが無くヒュンダイマークが右側にある1990年11月以前のモデルである。韓国内で残る角グレースはフロントガーニッシュ付でヒュンダイマークが中央にある1990年11月以降の後期型ばかりなので、この個体は貴重な存在と言える。2023年現在では角グレース自体が貴重品レベルだが、この個体はその上をいくと言えよう。さらにフロントガーニッシュが無いのでベースとなった3代目デリカに一層近いと言える。


 運転席ドアのグレースロゴとパワーステアリングのロゴ。パワーステアリングはハンドルを回す力をアシストするもので現在の自動車には標準装備されているもの。1980年代だとまだ当たり前の装備ではなかったから、このようなロゴが付いているのだろう。


 運転席側サイドビュー。タイヤのホイールカバーはこのような感じ。三菱デリカとはタイヤのホイールカバーが異なる。因みに1990年11月以降のモデルともホイールカバーの形状が異なる。


 助手席側サイド。これでウインカーランプが白なのが分かるだろう。しつこいようだが、フロントガーニッシュ無しでウインカーランプが白でヒュンダイマークが右側にあるのは1989年3月から1990年11月までの年式の特徴である。
 これまで書き忘れたがバンパーがデリカよりも大きいのがデリカとの識別点だろう。グレースだけでなく日本車ベースに製作された韓国車はベースとなった日本車よりもバンパーが大きくなっているケースが多い。
 分かりづらいが、助手席ドア取っ手の上にオレンジぽいハングルのロゴがあるが、この自動車の車名であるグレース(ハングルは「ー」と伸ばさないので正確にはグレイス)の文字が書かれている。以前紹介したマイクロバスのコーラス初期型にも似たようなロゴが書いてあった。
 後輪はデリカと同じタイプのスチールホイールとなっている。(ロードビューを見ると左側前輪もデリカと同じスチールホイールらしい)


 助手席側の前面アップ。(スマートフォンで撮影)

 運転席側サイドビュー後ろ寄り。右側にスライドドアが無いので恐らく乗用モデルだろう。
 リアフェンダーにサイドマーカーがあるのも1989年3月以降のモデルならではの特徴。右側後輪はホイールカバーが残っている。
 柱があって分かりづらいが、韓国のグレースはロングボディが一般的。日本のデリカはショートボディが一般的なので日本のデリカを見慣れてると車体が長く感じる。当初は日本のデリカでお馴染みのショートボディもあったが、あまり需要が無いのかすぐに設定が無くなったそうである。


 リア。リアワイパー付なので、乗用モデルで間違いないだろう。南京錠が付いており車両の全体的な雰囲気からして倉庫として使われているようである。ロードビューを見る限りフロントナンバーが切られ倉庫として使っている年数は結構長いだろうと思われる。
 リアにはナンバーが残っており仁川72の二桁ナンバーである。このタイプのグレースが新車として発売されていた当時は一桁ナンバーなので、1996年3月から2004年1月までに再交付されたものだろう。

 変わりましてグレースのマイナーチェンジモデル、ニューグレース。この個体は乗用モデルのグランドサルーンである。1993年3月から1996年4月までのタイプでニューグレースとしては前期型に当たる。引き続き3代目デリカベースで側面などにデリカの面影があるが、フロントやリアデザインがヒュンダイオリジナルのデザインとなった。このモデルは韓国以外の国(中国・トルコなど)でも販売され、海外での販売も視野に入れたので三菱とデザインの差別化を図ったのだろうと個人的には思っている。
 仁川5の一桁ナンバーのなので1993年3月から1995年12月頃までのモデルと思われる。さらに韓国に残るグレースとしては珍しくカンガルーバーが付いている。個人的にカンガルーバー付きのグレースは初めて見たと思う。


 リア。この個体も不動車というか倉庫として使われているのだろうか。タイヤはパンクしているが、ホイールカバーがスピード感があって格好良く感じる。因みにこのタイプのホイールカバーはグランドサルーン(グレースの中では最高グレード)で使われていたそうである。側面のロゴやデカールにも時代を感じる。

 ニューグレースだとこのような車名ロゴになり、先ほどの角グレースとはフォントが異なる。


 グランドサルーンのロゴ。グランドサルーンは角グレースが販売されていた1991年8月から設定されたグレードらしい。

 バックドアのガラス左上にはグレイスと書かれたステッカーが残っていた。

 最後にニューグレース後期の15人モデルを。1996年4月から2004年2月までのタイプでグレースとしては最終型に当たる。フロントバンパーの形状からして2000年10月から2002年12月生産分だろう。
 写真の個体は塾送迎車だろうか。日本のデリカとは違った進化を見せた感があり韓国の社会事情が見える個体である。
 かつては当たり前のように見れたそうだが、近年は大気汚染対策で減りつつあるとのこと。グレースは現代自動車発展のきっかけとなった車種の一つでもあり、三菱自動車と提携していた頃の生き証人でもあるので長く残ってほしいものだ。