南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

名探偵・南野海の事件簿「壁抜けネズミの恐怖」その二

2007-01-28 11:23:33 | 名探偵・南野海
 おかしい。なぜ、ネズミは燻り出そうとしたとき、出てこなかったのに、今またここにいるのでしょうか?

 一夜明け、名探偵・南野海は推理します。

 推理1 夜中に聞いた物音は幻聴。あるいは夢。
 推理2 ネズミは非情に我慢強く、バルサンの煙の中をじっと耐えていた。
 推理3 ネズミはなんらかの方法で、部屋を脱出して、また入ってきた。

 床に黒い消しゴムのかすみたいな固い物体が落ちてました。
 どう考えてもネズミの糞です。しかも昨日なかったところにあった。
 あの音が幻聴でなかった証拠です。(推理1却下)
 ではネズミはバルサンをひたすら耐えて、部屋に隠れていたのでしょうか? それならば今この瞬間にも、この部屋のどこかにいることになります。
 なにせ、部屋の中には本や雑誌や新聞が散乱し、隠れるところには事欠かないのですから。

 これは部屋を片づけろっていう天のお告げか?

 しかなたく、一週間ほどかけて部屋を片づけました。そしてネズミの野郎の隠れそうなところを徹底的に探ったのです。
 だけど、なぜかネズミはいません。そのくせ夜になると、出没するのです。

 名探偵・南野海はようやく悟りました。この事件の真相は、推理3、つまりネズミはなんらかの方法でこの部屋を自由に出入りしているのです。

 だけどいったいどこから?

 アニメなんかだと、よく壁に開いてるちいさな穴から出入りしたりしてますが、そんなものはありません。大掃除したおかげで断言できます。
 もちろん、床や天井にも穴なんかありません。この部屋には押し入れも天井点検口もないのです。
 窓はあれ以来閉めっぱなしですし、ドアから出るとき、ネズミが逃げ出したなんてことはあるはずもありません。

 完全密室です。

 名探偵・南野海ははじめて密室事件に遭遇しました。
 さあ、名探偵なら密室事件を解決してこそ一人前と言うものです。
 しかしいくら頭をひねっても、名推理が浮かんでくるなんてことはありません。

 転機が訪れました。夜、まだ起きているとき、がさがさという物音がミニキッチンの方からしたのです。
 僕は忍び足でこっそりと近づきます。
 そして音のするあたり、シンクの下の扉を開けました。
 ほんの一瞬、なんかの影が見え、消え去りました。
 そこに残っているのは、醤油などの調味料と、袋を破られ、かじられた餅。正月すぎて、残ったままそのままになっていた餅です。

 謎はすべて解けた。

 その中は給湯の配管が縦に走るパイプシャフトにつながっているのですが、そこに数センチのすき間があったのです。
 ネズミの野郎はここからパイプシャフトをつたって、部屋と屋根裏を行ったり来たりしていたに違いありません。
 しかしその調味料を置く物入れの扉は基本的に閉まっているのに、どうやって部屋の中へ?
 その答えも見つけました。そのとなりにはミニ冷蔵庫を置くスペースがあるのですが、そことつながっていて、しかも冷蔵庫と壁には一センチか二センチくらいのすき間があります。
 つまり、ネズミは冷蔵庫と壁のすき間から入り、そのままパイプシャフトを抜けていたのです。
 原因がわかった以上、あとはそのすき間をふさぐだけ。
 めんどくさいですが、夜な夜なネズミに脅かされることを考えればしかたありません。
 東急ハンズに行って、板だののこぎりだの木工用ボンドだのを買ってきて、そのすき間をふさぎました。

 これで事件解決です。

 そう、解決するはずでした。

 つづく



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