編者のつぶやき

川田文学.comの管理者によるブログ。文学、映画を中心に日常をランダムに綴っていく雑文

ホントのこと

2007年10月27日 | Weblog
 一連の亀田騒動に終止符をうつため設けられた、昨日の謝罪会見をリアルタイムに、ラジオで通勤途中で聞いていた。頭を坊主に剃り、黒いスーツで現れたという長男は、平謝りの態だったが、一区切りついたころに、一人の取材記者がこう切り出した。
「あなたは、『肘でもいいから目に入れろ』と、言ったんですか、言わなかったのですか。そこをはっきりとお聞かせください」
 一番、聞きたいことだ。そしてそこが一番肝心なところでもある。
 彼はしばらく無言で通し、「反省しています」と言った。協栄ジム側は、反省しているという言葉がすべてを表しているし、彼の口から、はっきりと言った、言わないという言葉を言わせたくない、といった内容のことを言って援護した。
 そして「あの試合中は、興奮状態で、一切何も覚えていない」と、政治家のようなことを言った。試合中の音声が取れているので、事実は明白なのだが、それを後日「言った」とはっきり認めると何が起こるのだろう。何を恐れているのだろう。ボクシング界の追放か?
 私は、このやり取りを聞いていて、川田先生がむかし言っていた藤猛という天才ボクサーのことを思い出していた。ハワイから彗星のごとくボクシング界に現れ、ハンマーパンチと呼ばれた強打で、一挙に「世界J.ウェルター級王者」に躍り出た。(わたしは、彼が世界王者になった、サンドロ・ロポポロ戦2RKOの試合をビデオで観た。)通算38戦34勝うち、29KO。たかが30年前、当時のスーパーヒーローだったはずの彼は、今はなぜか、その噂にさえ上らない。
 打たれ弱い藤猛が、途中、試合放棄をしてしまったため、ボクシング界追放になってしまったと聞いていたが、ウキペディアによると「王座陥落後の1970年、試合直前でありながら突然の出場拒否を一方的に宣言、事態を重く見たコミッションにより無期限試合出場禁止の処分を受け事実上の現役引退となった。」とあった。どちらにしても、彼は、致命的なミスを犯したために重い処分を受け、忘れ去られてしまった偉人の一人だ、といえるだろう。
 まだ、20歳そこそこの亀田長男は、そのことを肌で知っている。だから、はっきりと言えなかったのだ。そして、協栄ジム側も言わせたくなかったのだろう。彼の「賢明さ」は、彼の才能の埋め合わせをしてくれるだろう。しかし彼は、金や名声では埋められない空洞を心に開けてしまったことは確かだ。