編者のつぶやき

川田文学.comの管理者によるブログ。文学、映画を中心に日常をランダムに綴っていく雑文

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あけましておめでとうございます。

2008年01月19日 | Weblog
 すこし遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
 昨日、私が勤めている会社で感慨深い事件があって、そのことを年はじめに。
 わたしは、とある学校の教材編集の仕事をしているんですが、ある日同僚が「あなたの下で仕事をしているアルバイトが、仕事を終えた後、30分ほど、ほかのアルバイトと談笑してから、タイムカードを押していた」言ってきた。私の勤めているビルはある程度広く、アルバイトの数も多い上、仕事が各自変則的で、一人一人チェックすることができないので、各自の善意に任せているところがある。しかし、その日、私は、18時半に仕事を終え、コートを着ていた彼を目撃していた。
 心の中で、小さな葛藤があったが、思い切って、彼のタイムカードをみると、19時6分となっていた。じわじわと怒りの感情が沸いてきた。何の抵抗もなくセコいやつ!と、こころの中で呟いていた。
 彼は、非常に高学歴で、腰の低いおとなしい男だが、1年ほど前から、まことしやかなうわさが囁かれていた。うわさにはあまり関心がないほうだが、否応なしに耳に入ってくる。女性アルバイトにストーカー的な執拗なメールを送っているとか、2ちゃんの書き込みをしているとか、すべて仕事には関係のないことだが、私の中で漠然とした悪い印象が、いつの間にか植えつけられてしまっていた。「即刻やめさせるべきだ」という社員もいた。
 私は翌日、彼を呼び出した。なにか、言い訳を言おうとする彼を制止し、思わず声を荒らげた。
「何も聞きたくない。とにかく今後、一切こういうことはやめるように。このことは、私はこれですべて忘れます。」
 彼の顔は、顔面蒼白で、血走った目がむき出しになっていた。
 数分後彼は、仕事に戻りPCに向かっていた私の元に、すごい剣幕でやってきて大声で、その30分間は遊んでいたのはなく、ほかアルバイトの人に教材について相談を受けていて一緒にその問題を検討していたのだと、訴えた。
 その日、彼は昼休みもほとんど取らずに、誰ともしゃべらず、黙々と仕事をこなしていた。そして、彼の怒りは、またしても夕方に校正教材を私に手渡す時に爆発した。
「これを見てくださいよ。僕はこんなにまじめに仕事をしているんです。それをあたかもサボっているようにいうなんて。こんなに細かく仕事をしている人がほかにいますか!どうして僕を評価してくれないんですか。」
 彼は泣いていた。
 それは、彼が数ヶ月かけてリニューアルした初学者用の数百ページにわたる入門テキストで、赤ペンで真っ赤になったものだった。確かにその通りだ。彼は、非常に優秀で、思えば、変な噂を耳にする以前までは、いいコンビネーションで、いろいろな仕事上の困難を乗り越えてきたのだった。危機的状況を彼のおかげで回避できたのに、その多くのことを忘れていた。私はその時、今までの噂は、行過ぎた嘘であったことを瞬時のうちに感じ取った。
 その一部始終を見ていた上司は、彼を呼び出し、彼を違う社員の下で仕事をする様に提案したが、彼は、今までどおり、私の下で仕事をやっていきたいと、言ってくれたそうだ。判断は私に任せるとのことだった。
 私は、深く反省し、いままでどおり、私の下で仕事をしてもらうことにした。
 わたしは、今回の一件でつくづく他人や周りの印象を鵜呑みにするのでなく、一対一でその人と真摯に接して、自分の判断で目の前の人間の良し悪しを評価しなくてはならないのだなあと、ひどく単純なことを今更のように学んだのだった。