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スマッツ『全体論と進化』へのW.M. Wheeler (1928) の言及

2012年07月17日 14時01分16秒 | 生物哲学
2012年7月17日-12
スマッツ『全体論と進化』へのW.M. Wheeler (1928) の言及

 William Morton Wheeler (1928) の『Emergent Evolution and the Development of Societies』で、Smutsの『Holism and Evolution』に言及しているところがある。65-68頁である。

  「1925年以降に現われた、創発についての研究のなかで最も洗練されたものは、スマッツ将軍の_全体論と進化_についての1926年の本である。これは、より注目に値するもので、著者は、他の思索者によるこの論題への貢献についてよくは知らないようである。専門家ではない人による誠実な仕事によくあるように、それは大変示唆的である。しかし、『全体論』を、自然界における『努力〔?、nisus〕』、『内的駆動力〔inner driving force〕』、または『作用的要因〔operative factor〕』とする彼の捉え方には、重大な疑問がある。J. M. Robertson (1926) が書評で述べるように、『スマッツ将軍 General Smuts は、宇宙的および生物的過程を名づけるのに『機構 mechanism』と『機械的 mechanical』という不幸な用語を使うといった、近代科学の思考における堕落した言葉遣いのいくつかに対して、正しく戦っている。しかし、彼自身の哲学は結局は、Whittaker氏が正当にも宣言したように、『名称を実体化する』ことは古代哲学の多くの破滅のもとであるという次第になっている。わたしが思うに、スマッツ将軍は、『全体 whole』、『一全体 a whole』、そして『唯一の全体 the whole』によって意味されることは何かという問題に取り組んでいない。彼の本のなかでは、それらは、ヘーゲル Hegel がシェリング Schelling の或る概念について述べたように、『銃で追い払われた shot out of a gun』。多くの研究者にとっては、それらの語は、宇宙的目的の関与〔係累、影響 implications〕を示唆する。スマッツ将軍は、『聖なる出来事 divine events』または統御している〔神の〕摂理を、把握する〔theizeは、seizeの誤植? 盗む thieve?〕とか夢見ることをしない。ところが、彼はもっと混乱するようなことを行なう。つまり、『全体 whole』を『全体_論_Holism』へと実体化して、それを一原理、一力(否、宇宙における支配力)として実際に捉えて述べるのである。専門的哲学者である Hoernle' (1926) は、スマッツ将軍の本をもっと好意的に評している。すなわち、『スマッツ将軍は、全体論を哲学よりも科学への貢献だと考えている。科学者たちは、自分の特殊分野に熱中し、自然界の包括的調査には概して従事しない。したがってまた、進化の過程とその外延が同じである全体という概念を一般化することも無い。それゆえ、科学の理論において、全体論は新しいことであり、科学者たちがそれを受け入れる用意があるならば、科学的思考を再定位することを意味するだろう。おそらく、A. N. ホワイトヘッド Whiteheadの有機体についての新理論は、同様の再定位での独立した一つの試みだと、判明するかもしれない。哲学者たちは、自分たちの番になって、全体論における一定の独創性を認めるに違いない。正に、全体論の要約的特徴において、進化を完成へと向かう一連の段階として進化を説明することにおいて、全体論はおなじみの道筋を走っている。しかし、自分の哲学を進化にもとづくものにしようと努めている思索者のうちで、AlexanderとLloyd Morganにように、幾人かは、全体よりは段階 stagesという言葉で考えてきた。他の者は、James Wardのように、全体を認めたが、宇宙 the universe を霊たちの社会として分析して、彼らの全体をすべて霊的なものとした。さらに他の者は、Pringle-Pattisonのように、進化を神の自己啓示 self-revelationとして扱った。明瞭なことだが、これらの人々とは異なって、全体論は広く受け入れられている事実についての新奇な説明であり、宇宙進化の特徴についての新しい読解である。〔略〕』
 〔続く。次の段落は因果性と説明に触れている。〕」
(Wheeler, W.M. 1928. Emergent Evolution and the Development of Societies, pp.65-68.)

  なお
 2011年9月21日-1 W. M. Wheeler 1928『創発的進化と社会の発達』試訳1
http://pub.ne.jp/1trinity7/?entry_id=3901999
も参照されたい。

 
[W]
Wheeler, W.M. 1928. Emergent Evolution and the Development of Societies. 80pp. W. W. Norton & Company, Inc., New York.