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データ捏造についての統計的推論/メンデル

2010年07月30日 14時11分54秒 | 生命生物生活哲学
2010年7月30日-4
データ捏造についての統計的推論/メンデル

 茂木健一郎氏との対談のなかで、福岡伸一氏は、次のように述べている。

  「データの捏造というのは昔からありました。……メンデルですら、自分の理論に合うように数をコントロールしていたという事実があります。」(茂木 2007: 90頁)。

 事実だと確認されたという話ではなかったと思う。また、データ操作があったとすればそれは、メンデル自身ではなく、気配りした実験助手だという説があった(要文献)のではなかったかな?

 メンデルのデータの捏造疑惑については、伊勢田(2003: 219-221;わかりやすくて良い本である。吟味に値する)の「メンデルのデータ捏造疑惑」と題する節で、カイ二乗検定と関わって、仮定された比にあまりにも当てはまり過ぎで、そんなのはあり得ないといった、Fisherによる推論を紹介している。
 事実関係を調べたのではなく、なんせ当時メンデルの論文は注目されず(Darwinには別刷が送られていたが、頁間にペーパーナイフを入れた形跡は無く(だったかな?)、したがって読まなかったらしいと、言われる)、統計的(分布)モデルにもとづく、またランダムを仮定した推論であるから、むろん、データ操作があったという主張への反論はある(後述)。
 要するに、推論はあるが、当時の昔に事実確認したわけは無いだろうから、福岡伸一氏の見解とは異なって、事実だとは主張できない(とわたしは主張する)。


[B]
*ブロード,W. & ウェード,N. 1982.(牧野賢治訳,1988)背信の科学者たち.vi+312pp.化学同人.[OUL]

[I]
伊勢田哲治.2003.1.疑似科学と科学の哲学[Philosophy of Science and PseudoScience].iii+282pp.名古屋大学出版会.[y2,800+] [B20030811, Rh20031007]

[M]
茂木健一郎〔/日経サイエンス(編)〕.2007.11.科学のクオリア.日本経済新聞出版社.日経ビジネス人文庫.[OcL404]