春
季節の春も 人生の春も
すこしふるえて 愛らしいとおもいます
結城不二夫という画家がむかしいて
そのころわたしは メランコリーの幼児だった
わたしの母さんは 結城不二夫と同じ歳
母さんは四月一日うまれ 結城不二夫は四月二十三日うまれ
だから二人とも 傘寿
うるわしい 傘寿
結城不二夫は明日からの人生を「ロスタイム」だという
でも まだ たったの八十歳
しなければいけないことなんてない
しておきたいことだけがある
そんなふうな「ロスタイム」なら
母さんにもおしえたい
結城不二夫と母さんとわたしの記念
それをわたしは欲しかった
一枚の絵を買いました
ブルーとホワイトで描かれた抽象画
これはわたしの 初めての窓
六年前
結城不二夫を知らなかったわたしは
母さんを連れて伊東にいきました
伊東の思い出は
伊豆美術祭の思い出
母さんとわたしは
伊豆美術祭で林紀一郎という美術評論家と出会いました
林紀一郎はわたしの作品の批評をしてくださり
林紀一郎と母さんとわたしは
和やかにほんの少しだけ
お話する機会をもったのです
母さんはうれしそうでした
絵というものをやっとわかってくれたみたいでした
ういういしい春
少しふるえて 愛らしいとおもいました
ぼくよりお母さんのほうが二十二日分先輩なんだね
結城不二夫はにこやかにいいました
ういういしい春
春は窓を開けたくなる
さわやかな しかもあたたかい水色
水ぬるむ季節
いい窓を手に入れました
ありがとう 結城不二夫展
季節の春も 人生の春も
すこしふるえて 愛らしいとおもいます
結城不二夫という画家がむかしいて
そのころわたしは メランコリーの幼児だった
わたしの母さんは 結城不二夫と同じ歳
母さんは四月一日うまれ 結城不二夫は四月二十三日うまれ
だから二人とも 傘寿
うるわしい 傘寿
結城不二夫は明日からの人生を「ロスタイム」だという
でも まだ たったの八十歳
しなければいけないことなんてない
しておきたいことだけがある
そんなふうな「ロスタイム」なら
母さんにもおしえたい
結城不二夫と母さんとわたしの記念
それをわたしは欲しかった
一枚の絵を買いました
ブルーとホワイトで描かれた抽象画
これはわたしの 初めての窓
六年前
結城不二夫を知らなかったわたしは
母さんを連れて伊東にいきました
伊東の思い出は
伊豆美術祭の思い出
母さんとわたしは
伊豆美術祭で林紀一郎という美術評論家と出会いました
林紀一郎はわたしの作品の批評をしてくださり
林紀一郎と母さんとわたしは
和やかにほんの少しだけ
お話する機会をもったのです
母さんはうれしそうでした
絵というものをやっとわかってくれたみたいでした
ういういしい春
少しふるえて 愛らしいとおもいました
ぼくよりお母さんのほうが二十二日分先輩なんだね
結城不二夫はにこやかにいいました
ういういしい春
春は窓を開けたくなる
さわやかな しかもあたたかい水色
水ぬるむ季節
いい窓を手に入れました
ありがとう 結城不二夫展
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