THE MILK OF SORROW
「すごい作品を観た。これはアルテリオ・シネマで絶対上映する!」
と、川崎市アートセンターに帰り着くなりこう叫んだのは、去年3月に
突然他界した野々川千恵子映像ディレクターであったそうです。
「悲しみのミルク」を、KAWASAKIしんゆり映画祭代表 白鳥あかねさん
と野々川千恵子さんという二人の女性リーダーが、2009年に開催された東京フェルメックス
という映画祭で観て、「日本の人々にこの映画を観てほしい」と、公開に向けて
動き出した…そして、しんゆり映画祭やアートセンター開館に尽力した野々川千恵子さんの遺志を
形にと、多くの関係者がこの映画の配給運動を広げていき、やっと公開を現実のものにしたということです。
(以上、多摩川文化圏地域誌「多摩人」39号 アルテリッカしんゆり2011特集の情報を参考にしました)
★ ★ ★
私は野々川千恵子さんとは直接の友人ではありませんでしたが、もう亡くなって十年以上たちますが、
私の友人と野々川さんは親しい間柄であったといいます。この二人は長年新百合ヶ丘を拠点として、
川崎市、市民の文化向上のために積極的に活動をされていらっしゃいました。
アートセンターが開館してまもなく、映画を観終わったときに野々川さんにお会いし、少しお話しました。
草の根からこつこつと、新百合ヶ丘の文化、特に映画を育ててこられたなかのお一人として、まぶしく感じたのを覚えています。
私の友人も十年生きていれば、きっと何か地域のなかで彼女にしかできない仕事をしていたにちがいないと思うのですが、
その彼女の遺志を私はひそかに野々川さんに託していました。
去年、野々川さんが急逝されたのは、ほんとうに残念でなりませんでした。
しかし、上に記したように、白鳥さんをはじめとして多くの関係者の方々が野々川さんの遺志を形にしていったのですね。
「悲しみのミルク」という映画を観て、いま新百合ヶ丘を拠点に生きた、この世にはもういない二人のたくましい女性のことを考えています。
そしてふたりはいま天国で、しんゆりの話、映画の話、川崎の生涯学習の話などを飽きることなくし続けているような気がしてなりません。
★ ★ ★
「悲しみのミルク」は、第59回ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞作品です。
第10回東京フィルメックス上映作品。2010年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。
脚本・監督:クラウディア・リョサ(1976年生まれ。2010年にノーベル文学賞を受賞したマリオ・バルガス=リョサの姪)
舞台は南米・ペルーの貧しい村。ひとりの老女が息を引き取る間際に娘に託した歌は、かつてのテロの時代に受けた暴虐、壮絶な仕打ちであった。母乳から母の苦しみを受け継いだと信じる娘ファウスタ。やがて彼女の固く閉ざされた心が解き放たれてゆく。詩の力、歌の力、生命の力が闇の世界からファウスタを救いだしてゆく。