二十億光年の孤独 谷川俊太郎(1931~)
東京生まれ。父は哲学者谷川徹三。
豊玉高校卒。21歳のとき、第一詩集「二十億光年の孤独」を刊行。
戦後詩の輝かしい新人の出現だった。音やデザインや映像の世界
にも活躍。「ことばあそびうた」など大量の詩集の他、マザーグース
の翻訳などでも活躍。★二十億光年の孤独(昭和27年刊より)
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがつたりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或はネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがつたりする
それはまつたくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしやみをした