中野系

この銀河系の中心、中野で考えること

異邦人

2005年07月24日 | 音楽
音楽に順位をつけるのは難しいけれど、日本の音楽で好きな曲を10選べと言われれば、迷わずに選ぶ一曲がこの「異邦人」。

久保田早紀が「異邦人」を発売したのは1979年。突然現れた新人歌手がこのデビュー作品で150万枚を売り上げ、そしてこの一曲のみで表舞台から去っていった。悪意ある言い方でしばしば「一発屋」と呼ばれるのもこのためだ。

70年代末から80年代前半、ベストテン番組全盛自体には、このような一曲限りの人、というのが結構いた気がする。当時は今のようなタイアップ戦略、路上、インディーズといったものもなかった時代。基本的にはレコード会社の人が発掘した人を市場で試す、というやり方だったからなのだろうか。

突然の爆発的なヒットと「その後」。このような経験はそれなりの混乱と苦悩を一人の人生にもたらしたようだ。
異邦人の大ヒットから数年後、大学の学園祭で彼女のコンサートを見た私の兄によれば、彼女は最後まで「異邦人」だけは歌わず、場内の熱心な「異邦人」コールにも、頑なまでに応じることはなかった、とのこと。突然の成功は必ずしも人を幸せにはしないのかもしれない。

WEBで調べてみると、久保田早紀は「異邦人」の後、6年間で9枚のシングルレコードを出すもあまり売れずに引退、その後結婚。現在は敬虔なクリスチャンとして、教会活動に励んでいるらしい。今でも教会でコンサート活動は行っているようだが、当然ながらそこで異邦人が演奏されることはないのだろう。

このブログを書き込むPCの音楽ライブラリには「異邦人」も収められている。いまでも時々、窓の外の風景を眺めながら、この曲を聴くことがある。切ないボーカルを聴くと、これまでに色々と旅してきた風景、そこでいつも一人、その場の「他者」として旅を続けてきた自分のことを思い出す。

旅行好きと出不精という相反する二面性を抱えた自分にとって、この曲しばしば次の旅へと誘ってくれる良き案内役なのだ。

最新の画像もっと見る