夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「自由か、死か」

2022-01-12 11:36:42 | 政治
 
 英国BBCは1月9日、cocid-19による英国での累計死者が15万人を超えたと報道した。英国は、アメリカ、ブラジル、インド、ロシア、メキシコ、ペルー に次いで、世界で7番目に死者数が多い。しかし、これは英国1国がヨーロッパの中で突出しているのかと言えば、そうではない。ヨーロッパの他の国でもイタリア13万、フランス12万、ドイツ11万となっており、日本1万8千人と比べれば、その多さが分かる。さらに言えば、ヨーロッパと北米では、その他の地域と比べ、その人口に対して異常に多くの犠牲者をもたらしているのである。
covid-19による地域別累計死者数(Our World in Dataより)
     死者数   人口
ヨーロッパ155万人 人口7.5億人
北米   123万人      3.7億人
中国を除くアジア 126万人 32億人
南米   119万人  6.5億人
アフリカ 2万人   13億人
オセアニア 0.4万人 0.4憶人
中国   0.4万人  14億人
 この表の中で、アフリカが極端に死者数が少ないのは、アフリカ諸国では医療体制など行政機構が整わず、統計に表れないものが多くいることは考えられる。また、アジアでもミャンマーなど内戦に近い状態の国では、政治的混乱からデータは正確性に欠ける。さらには、covid-19による死者数の数え方も、関連死をどこまで含むかは国によって異なり、ヨーロッパ諸国の中でも公式発表で、ベルギーが最も関連死をデータに参入させていることが指摘されていることなどがある。しかし、それでも死者数の誤差は超過死亡数から想定して、最大でも2倍以内だと考えられる。
 その誤差を考慮しても、人口当たりの死亡数が、アジアと比べ、ヨーロッパは5倍以上、北米は9倍以上という数字は、何らかの特殊な要因があると考えるのは当然である。病死に対して、最も影響を与えるのは医療体制であるが、それがアジア地域より整っているヨーロッパ、北米が異常に多い死者数を記録しているのである。
 感染拡大防止には、医療体制、ワクチンに加え、ウィルスは人から人へと感染することから、その予防にはロックダウン等の行動抑制が最も効果があるのは当然である。中国が4000人程度の死者数が極めて少ないのは、強権による徹底した行動抑制のせいである。中国の次に厳しい行動抑制措置をとったオセアニアのオーストラリアやニュージーランドが死者数が少ないのも、それを裏付けている(オーストラリアはロックダウンを終了した途端に感染が爆発的に拡大した)。インドも欧米に比べれば厳しい行動抑制をしていたし、日本は他者への「同調圧力」から、国民は自主的に行動を抑制している。それに対して欧米は、そもそもキス、ハグ、見知らぬどうしの気軽な会話など感染のリスクが高い生活習慣がありながら、ワクチン接種が一定以上進まない状況で、ロックダウンで感染減少すると、その解除による反動で急激な感染拡大を繰り返しているのである。
 
 個人の自由という壁
 ドイツのシュタインマイヤー大統領は、国民に泣き声交じりで「どうか、ワクチン接種をお願いする」と言った。フランスのマクロン大統領は、「くそくらえ」という言葉を使って、ワクチン忌避者を非難した。それは、欧州、北米で反ワクチンデモが頻発し、供給量が十分にあるにもかかわらず、日本や韓国、シンガポールなどアジア地域に比べ、ワクチン忌避者が多いからである。
 それには欧米や北米では、個人の自由を尊重する文化、思想が根付いていることが関係している。勿論それは、イデオロギーとしての自由民主主義が強い地域ということの表れでもある。デモをする権利は保障しなければならないし、医学的ワクチン不可な人びとの数倍も思想的ワクチン忌避者が存在する(例えば、ドイツでは極右AfDの支持者の多くはワクチン忌避者である)としても、そのワクチン忌避者が行動抑制などおかまいなく感染を拡大するとしても、彼らの権利を守ることが優先される。

ヨーロッパと北米は桁違いの感染拡大
2022年1月10日直近1週間平均感染確認数(100万人あたり)
                 Our World in Dataより
 EU  2264人
  ヨーロッパ全体 1444人
 北米 1038人
 南米 428人
 アジア 67人
 世界全体 324人 
 (フランス 4001人)
 (アメリカ 2264人)
 (日本 43人)
 2022年になっても、ヨーロッパと北米は桁違いの感染拡大が止まらない。100万人あたりの感染確認数は、EUで2264人、北米で1038人に対し、アジアは67人、南米428人、世界全体の平均でも324人である。
 世界中で最も個人の自由を制限した対策が取られているのは、勿論中国である。(政治的自由が脅かされるロシアでも、個人の自由までは極端な制限を加えることはしていない。)それに対して、個人の自由が最も尊重されているヨーロッパと北米で、感染は爆発的に拡大している。オミクロン株の重症化リスクは低いといっても、爆発的感染拡大が起これば、それに比例して死者数も増加する。まさに、自由か死か、の選択なのである。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする