穏やかな表情のチョルを前にして、ミエは幾分驚いていた。
こちらには気づかないチョルに声を掛けようと、ミエが手を上げたその時・・。
「あ・・」
「ちょっと!じっとしなさいってば!」
前を歩いていた姉弟らしき子達が、しゃがみ込んだ弟に向かって声を荒げる。
「お母さんに言うよ!ちょっとこいつ捕まえて!」「捕まえてるって!」
「放せよーっ!』
その時、キム・チョルは口元に笑みを含ませていたが、
ようやくミエに気がつくと、いつもの彼に戻った。
ミエは上げた手のやり場に困りながら、その場に立っていた。
小銭を取るのに酷使し過ぎた右手が、痛むのもある。
「おい、どこ行ってたんだ?」「え?」
「あーごめん!」「ったく」
そう言って息を吐くチョルに、ミエは帰宅を促した。
ここに長居していては、いつモ・ジンソプと顔を合わすかわからない。
「あ!早くコピーして家帰ろ!」
「全部俺がやっといたよ。戻って荷物まとめろ」
「えっ?!」
そう言われてミエは拍子抜けである。
せっかくそのために大変な思いをして小銭を拾ってきたのに・・。
「なんだよ、行くぞ」「えぇ〜〜・・」
「あ・・」
モ・ジンソプの(かもしれない)500ウォンを握りしめて、
ミエは図書館へと戻った。
<本当の危機>
準備を済ませ、二人は図書館から外へ出た。
「コピーいくらだった?」「いいよ」
「途中で何か食べない?私奢るよ!500ウォンだけだけど」
「いいって」
ミエはコピー代のお礼をしたくてそう言ったが、
チョルは素っ気なく断った。
ミエが食い下がろうとした、その時——・・。
「それじゃあ・・」
ゾロゾロと、モ・ジンソプご一行が裏通りからちょうど出て来た。
思わず目を見張るミエ。
そこに居たのは、モジンソプ、
そして 後ろでキムチョルの悪口を言っていたっぽい子達 だ。
わっ!!
なんとしてもこれは、キム・チョルとの対面を回避しなければならない。
ミエは血相を変えてキム・チョルを引っ張った。
「ちょっ!ちょっと待って!」
「ごめん!私、上にペンを置いて来たみたい!早く戻んなきゃ!」
ミエが振り返って彼らを見ると、
彼らは中に入って来るかどうか微妙な感じだった。
それならば少しでも彼らから離れるのが先決だ。
「とりあえず2階行こ!」
サッ!サッ!
素早く問題が無いか見極めたミエは、チョルに向かって強い口調で言った。
「ここに居てよ?!分かった!?」
「私ペン探してからトイレ寄って来るから!ちょっとだけ待っててよ!」
グッ!
ドドドド・・・
そう言ってすごいスピードで走って行くミエを、
チョルは不可解な思いを抱えたまま、呆然と見ていた・・。
第三十四話④でした。
うわ〜〜落ち着かないですねこれは・・
チョルに言わなかったのは、チョルの悪口を言っていた人たちのことを言いたくなかったからかな・・?
そして500ウォンで何が奢れるのかすごく気になる私です。
駄菓子みたいなものはそのくらいで買えるのかな・・?
第三十五話①に続きます