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羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 5

2015-08-08 23:11:59 | 日記
知らない化け物の名前に反応する潮! 潮は話をざっと聞いて、走った。(訳わからん! とにかく槍!!)「蒼月くーん! 麻子が大変みたいなの!」真由子が走ってきた。「何ぃ?!」真由子と合流する潮。まだそこらに潜んでいた海座頭は(蒼月? まさか?!)と潮の姓に動揺していた。
「大きな怪物に呑み込まれた? どういう」「貸して!」麻子からの電話に戸惑う麻子の祖父から受話器を取る潮! 麻子はあやかしの腹の中から麻子のスマホで電話を掛けていた! 最近のスマホの高性能ぶりたるや!! 麻子は蛇か何かの腹の中にいると思っていた。泣き声でタツヤがいることに潮は気付いた。「そいつに伝えとけ、助けてやるから泣いてんじゃねーぞってな! 麻子、待ってろよ、いいな!!」潮は電話を切った。麻子とタツヤのボートは人魂と難破船の残骸の漂う、奇妙な水面に浮かんでいた。「寒いよぉ、母ちゃん」パチィンッ! 泣くタツヤに、麻子は自分の頬を自分で叩き、「よぉしッ!」水着の上に来ていた半袖の勢いよく脱いでタツヤに着せ、タツヤを抱き締めた。「頑張ろうね、タツヤくん」「怖く無いの?」「怖い時に怖いと思ったらダメなの、心が挫けちゃう。だから、お姉ちゃんは我慢するの。やせ我慢だけどね。それに今はタツヤ君がいるし、あいつも来るって、行ったよ」麻子はタツヤと自分に言い聞かせた。
「あぁ、ちっくしょう。変な化け物だぜ、どうなっとんだコイツの中は?」とらはあやかしの腹の中の天井? に張り付いていたが、麻子とタツヤの悲鳴を聞いた!「あ?」麻子達のボートが水面から現れた死霊とも消化器官とも知れない者どもに囲まれていた。(ちぇっ! 今回だけは潮の機嫌取っとくかぁ)麻子達に襲い掛かった消化器じみた化け物達はとらの雷で滅せられた! 中空から自分を見下ろすとらに、麻子は遭遇した。
夕日の海を真っ直ぐに、
     6に続く

うしおととら 6

2015-08-08 23:11:53 | 日記
低空で飛行する海座頭の案内で、モーターボートで疾走する潮! 槍を持っているがまだ変化はしていない。「もうすぐ奴の結界じゃあ! 心せえよ!」程なく空は暗くなり、海は荒れ出した!「来る!」緊張する海座頭! 海面に巨体を現すあやかし!「うぅッ?! デッケェなぁ! こんちくしょう!!」速攻で襲い掛かってきたあやかしに変化して迷わず舟を捨て飛び掛かる潮!!「でぇああッ!!」槍を突き立てるが、ゴムのように弾かれた! 海に落ちる潮!(槍が突き通らねぇ! だったらぁッ!!)潮はあやかしの皮膚の突起に掴まり海面から飛び出し、(結界をぉッ、ブッた斬る!!)周囲を広域に覆う結界を斬り裂いた! 夕日をまともに浴びて驚き、首をもたげ口を開けるあやかし!!「ハッハァ! 驚いたか! 今行くぞぉッ!!」潮は自分からあやかしの口に飛び込み、あやかしは潮が入るとすぐに口をを閉ざした!
腹の中でボートの先に殆ど重量も無く、座りこちらを見詰めるとらと対峙する麻子。タツヤは恐れ、しがみ付いている。「潮は、来るか?」とらは問うた。話し掛けられ、潮の名を出され二重に驚く麻子!「潮をなんで知ってるのよ? このオバケ嫌だぁーッ!!」麻子は荷物を次々ととらに投げ付けぶつけた。されるがままのとら。潮は槍に従い、麻子達の元へ凄まじい速さであやかしの体内を走っていた!
「潮はね」やがて少し落ち着いた麻子はとらを『大人しい』と見て、気が紛れるとタツヤに潮の子供の頃のことを話し出した。結果的にとらも聞かされるハメになった。「蒼月潮って言うんだ、君を殴ったヤツ」母のいない潮は幼稚園の頃から、紫暮が『仕事』で家を開ける為、よく麻子の家に預けられていた。荒れていた潮は特に母のことでからかわれると手が付けられなかった。「ある日、それをウチの親父が知って、
     7に続く

うしおととら 7

2015-08-08 23:11:43 | 日記
その日は二人とも遅くまで帰って来なかった」片頬を腫らして父と戻ってきた潮。「でもそれっきりあいつは他の子をぶっ飛ばしたりしなくなってさ」「どうして?」「さあね。だけど、その時のあいつ、なんかちょっと大きくなったみたいだった」麻子の話が終わると、周囲に異変が起き始めた!
「ひもじいよぉ、ひもじいよぉ!!」漂う人魂も、難破船も、一気に体内の更なる奥へ、吸い込まれ出した! 体内に真の口が有り、吸い込んだモノを咀嚼する!!(これがあやかしの正体かよ!)構えるとら! 「もっと喰いてぇよぉ!!」ボートの上で電話の玩具を落とすタツヤ! 麻子が拾ってやろうとすると難破船のマストがぶつかり、ボートを真っ二つにされ、頭を打った麻子は気絶! とらは麻子とタツヤを抱えて飛び上がった!
(念の為に助けてやらぁ! なんせアイツ、ワシをここで退治しかねんからなぁ!)飛行してあやかしの真の口から離れようとするとらだったが、空気と一緒に凄まじい勢いで吸われ、先へ進めない!(上手く飛べん!)あやかし体内の肉壁に四方八方に束ねた髪を伸ばし張り付かせ、中空に体を固定するとら!(ここは奴の体内、力を削がれちまう!)「ひもじいよぉ! もっとぉッ!!」吸い込みが激しく、髪の固定が保てなくなり始めるとら!(こんなとこで喰われてたまるかぁ! もう、もたねぇ!)その時、ビュオオオッ!! 槍に引かれるようにして潮が飛び込んできた! 槍はとらの目の前で止まった。「へへっ、遅かったな」「馬鹿、お前の為に来たんじゃねぇ!」笑って答える潮。ここで固定していたとらの髪が剥がれた!「ぬわぁッ?!」咄嗟にタツヤを抱える潮!「刺され!」肉壁に槍を突き刺す潮! 潮の足に掴まるとら、気絶した麻子はとらが髪の毛先で掴んだタツヤの玩具の電話のストラップに辛うじて片手が引っ掛かっていた!
     8に続く

うしおととら 8

2015-08-08 23:11:33 | 日記
「とら、なんとかならんのか?!」「これが限界よ!」「タツヤ、お前が姉ちゃんを助けろ!」「え?」潮ととらの体を伝って麻子を救えという。「できないよ!」「できなきゃあいつは死ぬ!」『怖い時に怖いと思ったらダメなの!』麻子の言葉を思い出すタツヤ!「タツヤ、俺も母ちゃんいねぇのさ! それで、ひねくれてたんだけど、ある人が言ったんだ!」子供の潮を麻子の父は1発殴っていた。「いつも母ちゃんは見てんだぞぉ!」麻子の父はそう言った。「タツヤ!」今の潮は笑顔を見せた。「俺と一緒に、母ちゃんにいいとこ見せようぜ!!」タツヤは麻子を真似て自分で自分の頬を叩いた! 気合いを入れたタツヤはとらの体を伝い、「いいぞタツヤ!」潮の声援を受け、タツヤはとらの髪の伝い出したが、あやかしの体液が槍の柄を伝って潮の手に掛かり出していた!
タツヤが麻子の腕を掴んだその瞬間、潮は手を滑らせ、槍を離してしまった! 潮は槍に巻かれた『赤い布』を掴んだ! 布は、千切れた!!「どわッ?!」槍赤く、稲光の様な光りを放った! 獣の槍は潮の手に頼らず勝手に高速で飛び出し、あやかしの真の口に突進した!!「ありゃいつもの槍じゃねぇ!」真の口の底にいた。ウツボの様な化け物の口の中にいた目玉の化け物に稲光る獣の槍は突き刺さった!!「グァアアアッ!!」黒目の部分が弾け黒い血を吹き出すあやかし!
麻子とタツヤを抱えたとらに乗った潮は槍を引き抜き、「とら、そろそろおいとましようかね?」「ああ、同感だなぁ!!」「ぬぇああああああッ!!!」「ううううああああッ!!!」潮は槍でとらの雷を受けながら体内からあやかしを突き刺し、とらはそのままあやかしの体内を疾走した!! あやかしの腹は弾け引き裂かれていった!!! 腹から飛び出した潮ととら!「あばよ、あやかしぃッ!!」怒鳴るとら!
     9に続く

うしおととら 9

2015-08-08 23:11:23 | 日記
あやかしは断末魔を上げて光りの塊となり、無数の人魂に還って昇天していった。「長飛丸って呼ばれてたんだってな」「うるせぇ、人間が勝手に付けた名で呼ばれたかねーんだよ! 字伏とか雷獣とか、それに」「そんなことはどうでもいいんだ!」潮はとらの頭に手を置いた。「とら、オメーがいなかったらこいつら、死んでたかもなぁ」気絶はしているが、無事な様子の麻子とタツヤ。「潮、お前まさか泣いて」とらの頭を殴る潮!「いってぇ! 何しやがる!!」「ありがとよ」潮は昇天するあやかしの光を見ていた。
騒動後、帰りの電車を頭に包帯を巻いた麻子と、真由子と電車を待っていた。とらも近くにいるが姿を消しているらしい。麻子は助けてくれたのが潮ではないかと思っていたが、潮は麻子の話を信じると述べるに止まった。タツヤも見送りに来て件の玩具の電話を差し出した。「母ちゃんは僕のこと見てくれてんだよね? ならこれはただの玩具の電話だよ!」力強く言うタツヤに、やがて来た電車に乗った潮は「タツヤ、格好よかったぞぉッ!!」と叫ぶのだった。
走る電車の中で、潮は波間を漂う千切れた槍の布を拾って結び直したことと海座頭の言葉を思い返していた。「今も生き続ける憎っくきあの女の息子かぁ!!」改めて蒼月潮と名乗ると海座頭は急に怒り出していた。(俺の母ちゃんが、生きている?)潮は獣の槍を抱えたまま、困惑していた。
・・・あやかしはあのイボイボのデザインが秀逸だったね。あれでデカくて長くてヌメってるから、ロクに喋れなくても強烈だった。散々パロディネタにされた海座頭のシャワーぽちょんの図もやっぱ強烈だった。あんな水滴、嫌過ぎる!