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羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

恋仲 5

2015-08-05 22:01:07 | 日記
「この7年、あかりの傍に居てやれなかった。あかりが大変な時、何の力にもなってやれなかった。花火一緒に見た時さぁ、あかりちょっと様子変だったんだよね」『あのね、あたし』『バイバイ、葵』堤防でのその夜のあかりを思い出す葵。「俺、全然気付いてやれなかった。子供の頃、あんなに毎日一緒にいたのにねぇ?」「これから助けてやればいいだろ」サラッと言う公平。頷く七海。「俺じゃないんだよ、あかりにはもういる。あかりが一番辛い時、傍で支えてくれた奴」葵は呟いた。
葵は、病院の翔太を訪ね、あかりの父のことを話した。「あかりのお父さんが?」「どうするか、翔太に任せていいか? 頼む」「わかった。知らせてくれてありがとう」葵は翔太に託し、病院を去った。仕事では、設計で揉めていた夫婦の依頼がキャンセルとなり、離婚の話まで出ていた。仲介した冴木は平謝りだった。そんな中、葵から住所を教わっていたあかりの父があかりのアパートの前まで来ていた。さらにそこへ翔太が現れた!「あの、あかりさんのお父さんですよね?」あかりの父は落ち着かない様子を見せた。その後、あかりが街を歩いていると、自宅方面へ歩いていたからか? あかりの父とすれ違った。「お父さん?!」走って追うあかりだったが、人混みの中、父を見失った。
夜、葵が一人で事務所の片付けなどをしていると冴木が来た。所長の丹羽を探しているが打ち合わせで外出していた。「でも1回戻ってくるかも?」冴木はキャンセルになった夫婦の依頼を諦めておらず、プランを考え直してきていた。「なんとか説得してみる」担当した客が設計で揉めた為に離婚するというのは避けたかった。冴木は丹羽を待つことにした。帰宅したあかりは子供の頃、父から貰った船の玩具を手に、父との写真を眺めていた。翔太から電話が入ると勢い込んで出るあかり。
     6に続く

恋仲 6

2015-08-05 22:00:57 | 日記
「翔太! お父さんがいたの! 見失っちゃって!」「気のせいじゃ?」「ううん! 絶対お父さんだった?! どうしよう、早く見付けないとまた遠くに行っちゃうかも?」「落ち着けよ」「でも!」「もう、お父さんのこと考えるの止めにしないか?」「え?」翔太は暗い通路を一人で歩きながらあかりと話していた。「7年も探して見付からないなら、無理だよ」「そんな、ずっと一緒に探してくれてたのに!」「諦めた方がいいよ、じゃあ」翔太は電話を切った。「待って!」あかりは途方に暮れ、翔太は厳しい顔で夜の街を歩いて行った。
翌朝、葵が出社すると丹羽が徹夜していた。昨夜冴木に涙ながらに説得され、家のデザイン画を仕上げていたのだった。「わからないもんですね、お互い自分のことばっかりで言いたいこと言い合って」「それって、とても素敵で幸せな関係だとおもうけど? そんなにぶつかるって、エネルギーを使うことだから、どうでもいい人にはそんなことしない」あかりのことを思い出す葵。冴木も朝一で来た。夫婦の資料を徹夜で大量に纏めて来ていた。驚きつつ、夫婦のアルバムを手に取った葵は昼休みに夫にアポが取れたと冴木と丹羽が話していると、「あの、僕も一緒に行っていいですか?」突然申し出た。
「本当にありがたいです、ここまでして頂いて」それでもやはりキャンセルで、結局離婚するという。「お二人、幼馴染みなんですよね」朝、見ていたアルバムを取り出す葵。「失って、始めて気付くんです。心から好きになれる人が、当たり前に傍にいた人が、ある日いなくなる。それがどれだけ辛いことか。何かしてあげたいって思ってもいなくなってからじゃ遅いんですよッ! 奥さんをちゃんと見ていてあげて下さい」葵はアルバムを夫に握らせた。帰りのエレベーターで丹羽は葵を面白がった。「雇って良かったって初めて思った。
     7に続く

恋仲 7

2015-08-05 22:00:47 | 日記
ねぇ、建築家に取って一番大切なモノってなんだと思う?」「クライアントの思いを一番に考えるってことですか?」「惜しい!」正解に、少しはかすったらしい。
その頃、翔太は自宅で引き出しから札束の入った封筒を取り出していた。そこで電話が入り、担当している患者の一人の容態が急変したと、呼び出しが入り、翔太は封筒を取り、鍵付きの引き出しを開けたまま出掛けて行った。
葵がマンションに帰ると出入り口前にあかりがいた。「ラック作ってくれたお礼」何やらビニール袋を差し出すあかり。「相談したいことがあるんだけど」川辺に移動して話を聞く葵。あかりは見掛けた父のこと、翔太の態度を葵に訴えた。「たった一人の家族のことなのに! 翔太が何考えてるのか、全然わかんないよ」「わかんないなら、わかんないって、俺じゃなくて翔太に言えよ」「無理だよ」「どうして?」答えないあかり。「あかりに再会してさぁ、すげぇなぁって思った。あんな大変なことがあったのにがんばっててすげぇなぁって。それってさぁ、翔太のお陰だろ?」頷くあかり。「いつもみたいに言いたいことガンガン言えよ! ちゃんと受け止めてくれるよ。だって、5年もあかりと付き合ってるんだろ? 並大抵の神経じゃできないよ?」「ちょっと、どういう意味?」「少しは大人しくなったけど、相変わらずがさつで頑固なお前の相手なんて普通は無理ってこと」「うるっさい、葵だって、少しは女心分かるようになったと思ったけど、全然じゃん! もういいっ!」あかりは怒って立ち去り出したが、振り返った。「なんだよ」戸惑う葵。「ありがとう!」笑うあかり。翔太のプロポーズの話を思い出す葵。「あかり! 頑張れよ、教員試験」Vサインで応えるあかり。「バイバイ」あかりは笑顔で去った。
マンションに帰り、あかりから貰った
          8に続く

恋仲 8

2015-08-05 22:00:38 | 日記
ビニール袋の中身を取り出す葵。小振りタイ焼きだった。「冷めてるし」それでも嬉しそうにかじっていると、冴木から電話が入った。夫婦の離婚は回避され、設計も続行されることになった。「葵に言われて目が覚めたって」「そっか」「あ、いきなり電話してごめんね。じゃあ」「あ、ちょっと待って、これから、時間ある?」葵はささやかな、打ち上げに冴木を誘った。
急変した患者が安定し、一段落着いた翔太だったが、病院にあかりの父が現れた! ちょうどあかりからも電話が入ったが、これには出ず、自分に頭を下げたあかりの父を奥へ案内する翔太。中華屋で葵が冴木に、あかりとのことを「もう終わったから」と吹っ切った様子を見せる中、連絡のつかないまま、あかりは差し入れ持って翔太のマンションに来ていた。開いたままの引き出しに目を止めるあかり! 当の翔太は人気の無い所で朝持ち出した封筒をあかりの父に差し出していた。「50万あります。2度とあかりの前に現れないと約束して下さい。あかりの人生から、出て行って下さい!」言い放つその姿を同僚の沢田が物陰から見ていた。
そして、あかりは引き出しからワンピースの51巻を取り出した。ただの偶然であってほしいと願ってページを開くと、中からかつて自分が書いたメモが出てきた!「何これ?」あかりは茫然と皺の寄ったメモを見ていた。
・・・父親がもうダメになっていて、翔太があかりを守ろうとしているのかもしれないが、これはアウトじゃろう。翔太は自業自得だが、冴木は可哀想なことになりそうだね。