村外れの井戸の側の茂みからエラムが忍んで現れた。「誰もいないようです、急ぎましょう」小走りで井戸に向かうエラム。アルスラーンも茂みからモソッと現れた。「よかった。まだ水は枯れていないようです」アルスラーンはおもむろに手近にあった釣瓶を井戸に落とした。「よしっ」釣瓶と繋がった縄を持つアルスラーン。「殿下? 私が」「何、これくらい、私にだって」縄を思い切り引っ張るアルスラーン。しかし滑車に掛かった縄は千切れてしまい、勢い余ったアルスラーンは尻餅を突いた。「うわぁ?!」「殿下ぁ、大丈夫ですか?」助け起こすエラム。「平気だ。それより!」起き上がり井戸を見るアルスラーン。「すまない、桶を落としてしまったようだ」「大丈夫です、すぐに替わりの物を探して参りましょう。殿下はあそこで待っていて下さい」端にあった小屋を差すエラム。「あ、私も」アルスラーンは周囲を見回し小走りに去るエラムに付いてゆき損なった。
窓が破られ、家畜も一匹もいない、人気の無い家畜小屋の2階で、アルスラーンは一人佇んでいた。(少しは役に立たないとなぁ。今の私はただの足手まといだ)考え込んでいると「やめてくれぇ!」外から声がする。「娘の命が欲しかったら、金目の物を持ってこいッ!」窓から伺うと、ルシタニア兵が村人を脅している。「財産は既に差し出し、改宗もした! 私には娘しか残っていない!!」「嘘をつけ!」「本当だ!」「娘の命が惜しくはないのか?」「やめてくれぇ」アルスラーンは外へ駆け出したが、自分の持つ煌びやかな剣が目立ち過ぎるのに気付いた。アルスラーンは『手近な替わる物』を探し、兵士達の元へ駆け付けた!「止めないかぁ!!」アルスラーンは『鍬』を構えた。「なんだお前?」困惑するルシタニア兵。「その人を離せ!」「へっ、なんだそんなもん構えて」失笑するルシタニア兵達。
6に続く
窓が破られ、家畜も一匹もいない、人気の無い家畜小屋の2階で、アルスラーンは一人佇んでいた。(少しは役に立たないとなぁ。今の私はただの足手まといだ)考え込んでいると「やめてくれぇ!」外から声がする。「娘の命が欲しかったら、金目の物を持ってこいッ!」窓から伺うと、ルシタニア兵が村人を脅している。「財産は既に差し出し、改宗もした! 私には娘しか残っていない!!」「嘘をつけ!」「本当だ!」「娘の命が惜しくはないのか?」「やめてくれぇ」アルスラーンは外へ駆け出したが、自分の持つ煌びやかな剣が目立ち過ぎるのに気付いた。アルスラーンは『手近な替わる物』を探し、兵士達の元へ駆け付けた!「止めないかぁ!!」アルスラーンは『鍬』を構えた。「なんだお前?」困惑するルシタニア兵。「その人を離せ!」「へっ、なんだそんなもん構えて」失笑するルシタニア兵達。
6に続く