羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

深夜食堂

2014-12-04 20:06:57 | 日記
毎週土曜日の朝、閉店前の『めしや』に熟年の平賀夫妻が散歩がてら訪れるようになった。夫婦は決まってしじみ汁の定食を頼む。仲睦まじい様子は常連客の間で評判だった。
その妻が孫の出産の為に帰郷した。平賀の実の孫ではない。妻はバツ2でつい昨年平賀に同窓会で再会して結婚していた。平賀の方は初婚だった。珍しく夜中に店を訪れた平賀はマスター達に事も無げに事情を語った。
妻の帰りが延びた。孫の産後の日達が悪いらしい、手持ち無沙汰になった平賀はルールもよく知らない囲碁番組を見るようになっていた。ある夜、めしやを訪れた平賀が酒を勧められて「僕、酔うとしつこいから」と断っていると、奥の席に囲碁番組の時間係がいた。驚いた平賀だったが思わず話し掛け、「気付かれたの始めて」と近しくなった。暫くして、めしやを同郷の友人に紹介すると田舎で様子を見てきた友人は妻の昔の男が妻の肩に腕を回している写真を見せられる。動揺する平賀。
妻が帰ってこない。今度は息子がバイク事故だという。平賀は愚痴り、妻が風俗で働いていた過去まで言い出そうとして「何が言いたいんだい」とマスターに凄まれた。堪え切れなくなった平賀は妻に電話をし、「メールくらい、毎日くれや」と口論になってしまう。いよいよヤケになった平賀はめしやで酒を頼み、居合わせた「駆け引きは嫌い」と言う囲碁の時間係の女と一夜を共にしてしまう。一方で妻は元彼の誘いを「もう、こういうことは卒業したけえ」と断っていた。
それから日々が過ぎた夜、再び平賀夫妻がめしやに来た。二人でしじみ汁の定食を食べて、妻から誤解させたことを謝られると、平賀は浮気の告白は言いそびれたものの「チャンスくれないか、時間は必要かもしれないが俺の気持ち、証明させてほしい」と語り、二人で夜の街へ去っていった・・・