川塵録

『インテグリティ ーコンプライアンスを超える組織論』重版出来!

コンプラを変え,会社を変え,日本を変える!

動機善なり。私心なし。

2022年10月19日 | 経営・インテグリティ・エンゲージメント
明日辺り、仕事関係で、私と中山国際法律事務所の名前がちょっと報道されることになりそう。

日本の知人の国際弁護士から、「なかなかこういう案件を引き受ける人がいないから…」みたいな感じで紹介されて、批判を覚悟で引き受けた案件。

私は特定の宗教の信者でないし、この依頼者・団体とこれまで関わりを持ったことは一切ありません。

なのに「なぜ引き受けたのか」は疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、引き受けた理由を、私の備忘のためにも簡単に書いておきますと:

  1. どんな人間・どんな団体にも正当に扱われる権利がある
  2. 依頼者の存在自体が反社会的だとは認識していない
  3. 仮に過去に過ち・改善点があったとしても、改善したいならお手伝いする
  4. ある組織が良い組織になることのお手伝いができれば、それは立派な社会貢献

が主な理由です。弁護士は、刑事事件の被告人(いわゆる極悪人)であっても「正当な手続で裁かれる」という社会的正義のために弁護をする立場にあり、そのようないわゆる「汚れ仕事」を誇り高く引き受ける職業です。

もちろん、弁護士としてのブランド・レピュテーションリスクは考えました。具体的には、私が広めたい「インテグリティ」の研修依頼が今後はやや少なくなるかも…というデメリットは天秤にかけました。

でも、
  • 頼まれた仕事は無下に断りたくない
  • 自分の保身のために「逃げる」のは信念に反する
  • 私が日頃インテグリティ研修で「勇気を出しましょう」とか言っておきながら、ここで勇気を出さねば言行不一致(男が廃る)
  • 私の専門の「インテグリティ」を使うことができて、インテグリティが広がれば、世の中が良くなる(これはやや後付けの理由)
かなあ、理由を補足すると。

もっと具体的には、
  • お前は何のために弁護士になったんだ?
  • お前は何のために生きているんだ?
  • 批判を恐れて自分の名声を保つために生きているのか?
  • 困っている人・団体がいるのに手を差し伸べないのか?
  • 勇気はあるか?

の問いは何度も自分にぶつけました。さらには、稲盛和夫さんが第二電電(KDDI)を立ち上げるときの

 動機善なりや。私心なかりしか。

は何度も自分に問いかけた上で、引き受けました。

ある団体をヘルプして人権を守ったり組織改善に貢献したりするって動機は、迷いなく「善」。私心なし。むしろ、依頼を打診されているのに、ここで逃げるのは「私心」なんじゃないかと。

また、

 やましさを感じるか?

も問いました。やましいとは感じませんでした。俯仰天地に愧じず、です。

  後記:英国法・コモンローでは、「弁護士は依頼を断ってはならない」というCab rank rule ってのがあります。弁護士が仕事を選ぶと、「不人気な依頼者に誰も弁護士がつかない」という不公平が生じるからです。私もこのルールに従ったということです。
 
____________

かっこつけてキザに言えば、乃公(だいこう)出でずんば、の気概なんですかね。

 ※ この「乃公出でずんば」の気概というのは、↑の石田禮助が国鉄総裁を引き受けるときに使ったセリフです。「私がやらなければ誰がやる」的なニュアンスです。この城山三郎の本はオススメ!

今思えば、私の心持ちは、トルーマン大統領の執務室に掲げてあった The buck stops here (全責任は俺が取る)に近いですね。誰も引き受けないなら俺が引き受けてやる、みたいな。みんな尻込むなら俺は踏み込んでやる、的な。

ここまで書いて思うのは、たぶん無意識的に、大学時代から好きだった「自ら反(かえり)みて縮(ただし)くんば、千万人と雖も吾往かん」(孟子)とか、「人生意気に感ず、功名誰かまた論ぜん」(魏徴)のスピリットが影響していると思う。

すみません、後付けの理由でカッコつけすぎました。

今日も、いつも、世のため人のため、精一杯働きます。

____________

後記:私は第三者的に改革をサポートするわけだから、仮に私にこの件に関わることで批判が来るとしても、その批判は受けて立とう、と覚悟したということです。「迷ったら辛い道を行く」のが僕のモットー。人生は挑戦なり。

後記2:日立の川村さんが『ザ・ラストマン』って本を書いてますが、その「ラストマン」って言葉が今の私に重く響いてます。

 
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