goo

ガザ 中川浩一

外務省でアラビア語通訳だった元事務職員によるイスラエルパレスチナ紛争の歴史と今後の展望についての解説書。両者の和平交渉が最も実現に近づいたにも関わらずそれが崩壊してしまった1990年代後半にイスラエルで勤務していた体験を持つ著者。その体験に基づいて語る和平プロセス実現、今の紛争解決の困難さには説得力がある。和平の弊害となっているのは、①現在も続くパレスチナ地域に入植したイスラエルのガザ、ヨルダン川西部からの撤退問題、②エルサレムの帰属問題、③イスラエル建国以降故郷を追われたパレスチナ難民の帰国問題の3つ。和平が最も実現に近づいた90年代の主役は、和平に積極的だったイスラエルのラビン、バラック両首相、紛争解決に非常に意欲的だった米国クリントン大統領、カリスマ的指導者だったパレスチナのアラファト議長ら。和平の当事者とアメリカの指導者が前向きだったにも関わらず実現しなかったところに和平の難しさがある。さらにロシアや中国との対立に軸足を移さざるを得ないアメリカの現状、経済を優先し始めた他のアラブ諸国といったその後の変化を考えると、早期の停戦和平を「ほとんど絶望的」とする著者の意見、ガザ地区を何度も訪問しそこで暮らす難民の悲惨さを語る著者の目線に、何ともやり切れない思いがした。(「ガザ」 中川浩一、幻冬舎新書)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« スピノザの診... 寄席 お笑いぱ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。