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カテリーナの旅支度 内田洋子

日本人女性によるイタリアに関する随筆。日本人女性のイタリアに関する随筆といえば、何と言っても須賀敦子の「ミラノ・霧の情景」だろう。本書が名作「ミラノ・霧の情景」と比べられてしまうことは避けられないし、著者も当然それを意識して書いたはずだ。須賀敦子が教育者であるのに対して本書の著者の肩書はジャーナリストとある。当然その視点にはなにか違いがあるはずだ。須賀敦子が渡欧した時代に比べて、現在は、イタリアに行くこと・イタリアで生活することの困難さにも大きな違いがある。イタリアに行ったことのある人も須賀敦子の時代とは一桁も二桁も違うはずだ。そんな違いを乗り超えて、著者が本書で何を伝えてくれるのかが、読む前からの大きな期待だった。しかし、読み終えて感じたことは、時代や立場の違いにも関わらず、両者がある意味でとても似ているということだった。実際にその場所に住んでいる人には変化している様に感じることでも、異邦人や旅人にとっては変わらないということがある。その辺りを素直に表現するとこういうことになるのかもしれないし、あるいはそれがイタリアという歴史ある国の特徴なのかもしれない。多くの日本人がイタリアに惹きつけられる理由がそうした自然と感じる普遍性のようなものなのかも知れないと感じた。(「カテリーナの旅支度」 内田洋子、集英社)

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