水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ものの見方(3)

2020年10月24日 | 学年だよりなど
  3学年だより「ものの見方(3)」


 1985年、ウルグアイは民主化の道を歩み始める。出所したムヒカ氏は、ゲリラ仲間と政治団体を結成し、1995年の下院議員選挙で初当選を果たした。2005年にウルグアイ初の左派政権となるタバレ・バスケス大統領の下で農牧水産相として初入閣する。そして、2009年度の大統領選挙では、国民党のラカジェ候補を決選投票で破り大統領に就任した。
 はじめて議員になったとき以来、ムヒカ氏はネクタイをしていない。ネクタイは政治家のウソを隠す道具だと言う。国連での演説も、ノータイで演壇に立っていた。


~ 私たちは市場と競争社会から文明という落とし子を生み出し、物質面での驚異的な進歩をもたらしました。そして市場経済は市場社会をつくりだし、それを世界規模に拡大してしまいました。
いわゆるグローバリズムです。
 そのグローバリズムを、私たちはコントロールできていますか?
 逆にコントロールされてはいないでしょうか?
 こんな残酷な競争で成り立つ社会で、「みんなで世界を良くしていこう」なんて議論が、本当にできるのでしょうか? 私たちは本当に仲間なのですか?
 我々は、発展するためにこの地球上にやってきたのではありません。
 幸せになるためにやってきたのです。
 かつての賢人たち。エピクロスやセネカ、そしてアイマラ人たちは次のように言っています。
「貧しい人とは少ししかものを持っていない人ではなく、もっともっとと、いくらあっても満足しない人のことだ」と。大切なのは“考え方”です。
 見直すべきは我々が築いてきた文明の在り方であり、我々の生き方です。
 発展は幸せの邪魔をしてはならない。 
 環境のために闘うのなら、一番大切なのは、人類の幸せであることを忘れてはなりません。 ~


 映画「ムヒカ 世界一貧しい大統領」は、日本人ディレクターの視点でとらえた、ムヒカ氏の人生が描かれている。「南米の小国の貧しい家に生まれた若者が、一国の大統領になる」と聞けば、どんなサクセスストーリーかと思ってしまうが、まったく異なる。
 その実質は、祖国の差別と貧困をなくしたいという信念を貫き通した一人の男の姿だ。
 花屋の手伝いをしているときも、国連で演説しているときも、一切ブレがない。
 夢を叶えたのではなく、自分を貫いた結果、たまたま大統領にもなったのだ。
 だからこそ、世界中から集まってきた各国の代表や専門家集団を前にして、揺るがぬ思いを述べ、彼らが忘れていた観点を知らしめることができた。
 大統領を退任した後、日本を訪れて広島に出向いたり、東京外国語大学で講演を行ったりした様子も描かれている。85歳になったムヒカ氏は、つい先日政界引退を表明した。
 映画は、シネスイッチ銀座、新宿バルト9などで絶賛上映中。いまの貴重な時間のうち2時間を費やすだけの価値はある。入試そのものに直接役立つ内容さえふんだんに学べる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする