富岡製糸場世界遺産伝道師協会 世界遺産情報

「富岡製糸場と絹産業遺産群」は日本で初めての近代産業遺産として2014年6月25日付でユネスコ世界遺産に登録されました。

「群馬県蚕神総合調査報告会」を開催

2018年07月25日 22時42分27秒 | 世界遺産伝道師協会

「群馬県蚕神総合調査報告会」を開催

 

 7月21日(土)午後1時30分より、前橋市文京町2丁目、群馬県生涯学習センターの4階第1研修室で「群馬県蚕神総合調査報告会」を開催しました。

 ここに「群馬の蚕神」として、その「報告会」を持つことが出来たことは、昨年の8月1日に25名の調査員(伝道師)で発足した「蚕神総合調査」のプロジェクトチームが約1年に及ぶ中で調査の実施・調査票の作成と取りまとめ・原稿の作成と校正等々を経て纏めた結果です。

 この日は35度を超す暑い一日でしたが、会員(伝道師)や一般の方々を含め120余名という多くの参加を得ることが出来ました。

 午後1時30分には、この蚕神総合調査プロジェクトチームリーダーの町田睦伝道師の司会で「報告会」が始まりました。

 はじめに富岡製糸場世界遺産伝道師協会近藤 功会長からは「あいさつ」として、『当協会は平成16年から「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を目指して県民運動の中心的存在として活動をして来ました。当時は、こちらから語り掛けるとほとんど「あり得ない」との逆風の中を世界遺産の価値を語り続け、平成26年にカタールのドーハで開催された世界遺産委員会で登録を実現することができました。世界遺産登録運動を続ける中で、かつて群馬県が誇った養蚕業の衰退で隆盛時に行われていた「蚕」に関わる民俗行事も忘れ去られようとする状況にある。「運の虫」と呼ばれる蚕の飼育の厳しさや難しさから、心のよりどころとして「蚕神」を祀る養蚕信仰を大切にしてきた。伝道師の中には世界遺産登録運動の過程で忘れさられそうな「蚕神」の調査を個人的にでも纏めたいという動きがあり、協会として部分的な調査ではなく群馬県全体の実態把握と群馬県の養蚕業の発展と養蚕信仰の分析などができたらと考え、プロジェクトチームを作り、チームリーダーの下、飯島康夫新潟大学准教授の指導を受けつつ調査に取り組むことにした。この調査事業を推進するのにあたり、サントリー文化財団の助成事業に応募しましたが、採用を見送られました。そこで、この調査事業は、群馬県内の養蚕農家の激変は、養蚕信仰の調査を後ろに追いやれない状況と調査を担当する伝道師の高齢化も相まって調査時期として待ったなしの状況でしたので、平成27年にサントリー文化財団か頂いた地域文化賞の副賞を資金に実施することにしました。印刷製本費は、これで何とか捻出できましてが、調査研究費にまでは手が回らず調査員(伝道師)は手弁当で過酷な環境の中を奔走しました。すでに人が近寄らなくなり荒廃した荒れ野の中や崖の上等々厳しい場所も多々ありました。この結果から見学コースも作成し、これらを世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の基盤を支えた養蚕業への熱い思いを感じることで、地域振興の一助になればと思っています。  この「報告書」は、調査員の苦労の賜物であるだけでなく、会員(伝道師)全体の汗の結晶です。また「報告書」が地域の関心のある方々に活用いただき、役立つことを期待しています。』と述べました。

 続いて、新潟大学人文学部准教授飯島康夫氏の「養蚕信仰と群馬の蚕神」と題しての講演を前に、飯島先生の略歴を町田リーダーより紹介しました。

 講演は、『群馬の蚕神総合調査の意義は「この時期に調査し記録することにある。」として、次のような内容で話されました。

1.養蚕業の隆盛と養蚕信仰

・養蚕信仰とは、蚕が無事に成長し、多くの繭が取れることを願う豊蚕・豊繭の祈願と報謝である。

 ・養蚕信仰の背景は「運の虫」と言われ「蚕があたる」「蚕がはずれる」で養蚕農家の盛衰を左右する。  

 ・養蚕は当たれば良いので、豊蚕を確実にするため、蚕神への信仰が隆盛し多様化した。

  従って、この蚕神総合調査は「養蚕守護の神仏」をモノから明らかにすることにある。

2.群馬の蚕神―蚕神総合調査の成果からー

・養蚕農家の豊蚕の願いが切実であればあるほど、多くの神仏が蚕神として機能する。

・養蚕信仰の由来のひとつは、天竺より、うつぼ舟で豊浦に漂着し、養蚕の始まりとされる「金色姫伝説」は茨城県つくば市神郡にある蠶影神社を本社として、群馬県を含む関東地方を中心に広く信仰される。

・絹笠信仰の起源は不明である。

3.養蚕信仰の諸相―地域の祀り・家の祀りー

・蚕神を祀る単位としては、養蚕を営む地域の家々(ムラ、組、講)と養蚕の経営単位としての家ですが、この蚕神調査で報告された多くの神仏は、地域で祀られる神仏である。

・基本となる家で祀る蚕神として重要なのはオシラサマで、蚕室となる座敷の大黒柱に祀られる。

この蚕神総合調査による資料の集積は群馬の蚕神信仰研究の重要な基礎資料となることは間違いない。』と締めくくられました。

 講演後、伝道師協会近藤会長より飯島先生に対して丁重なる謝辞が述べられました。

 ここで10分間の休憩の後、午後3時から蚕神総合調査プロジェクトチーム町田 睦リーダーによる「目で見る群馬の蚕神」と題して調査結果の報告です。

今回の総合調査で「蚕神」と確認された件数は456件です。

1.県下の蚕神にみる特徴

(1)  蚕神が多い地域は数から見て中・西毛地域で、養蚕が盛んであったことを窺える。

(2)  文字塔が189基と圧倒的に多い。

(3)  本県は内陸部のため気象災害(雹害・凍霜害)による蚕霊碑が多く見られる。

(4)  蚕神の建立された年代は、大きく2つの建立期があったことが分かる。

(5)  蚕神名の多いものは、順に「蚕影山」「絹笠大明神」「蚕影大神」「蚕影神社」「蚕影大神」と、いずれも蚕影信仰系の神名で占められている。

(6)  仏教系の蚕神として「馬鳴菩薩像」が中国から伝わったとされ、県下の寺院に木像12体、石像4基、文字塔2基、画像1件の所在を確認した。

(7)  建立年の記銘率は全体では77%で、銘記率の高い蚕神は文字塔が87%、石祠が80%となっており、木像や木祠は30%と低くなっている。

2.蚕影信仰と絹笠信仰

(1)  本県における蚕神信仰の状況は蚕影信仰と絹(衣)笠信仰が主で、文字塔や石祠等「モノ」として現存している。

(2)  蚕影信仰と絹笠信仰の本県における分布状況は6対4で蚕影信仰に係る蚕神数が多いことが認められる。

3.「群馬の蚕神」の活用策

(1)今回の総合調査で確認された特徴ある蚕神を多くの方々に親しんでもらうため、自動車で巡る「群馬の蚕神巡りコース」を設定し、地域の活性化に役立てる。

(2)今回の調査で得た多くのデータ等の資料については、来春、新たに設置が予定されている「世界遺産センター」(富岡市)で保管するとともに、一部資料については一般に公開する。

(3)蚕神総合調査を「蚕神総合調査書」として記録に残すとともに、県下に残る蚕神の

   保存と活用を図るための基礎資料とする。

3.群馬の蚕神巡りコースの設定

(1)  県下の12地域(12コース)を設定(25市町村)

(2)  チラシの作成と配付

(3)  インターネットによる公開。

(4)  市町村等に案内板・説明板の設置を要請。

このような内容で町田リーダーによる調査の報告が行われました。

以上で本日の「報告会」は、全てが予定どおりに取り運ばれ、午後4時を少し回っての閉会となりました。

参加された多くの方々には納得された面持ちで帰途に着かれる様子が印象に残りました。

上毛新聞記事

(N島  進 記)

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富岡銀座まちなか交流館「平成30年6月の活動報告」

2018年07月25日 11時15分13秒 | 世界遺産伝道師協会

富岡銀座まちなか交流館「平成30年6月の活動報告」

 

◯6月2日(土)本日ご来場された、東京都日野市からのご夫妻「馬に見えないなー。」と、おっしゃりながら繭クラフトをされ、お孫さんが学校で蚕を飼っていました、と話されました。伝道師のI田みち子さんが、交流館の繭クラフトで使用しているテーブルの上に敷くテーブルクロスを2枚作り持参くださいました。又、伝道師中島副会長様・S井広志様が冷たいペットボトル等差し入れをして下さいました。(M下禮子 記)大変暑い日でしたので差し入れ大変有難く、交流館スタッフの方といただきました。又、I田様手作りのテーブルクロスは早速使わせていただきました。皆様のお心遣い本当に有難うございます。(U原一美 記)(活動伝道師 I田みち子 M下禮子 U原一美)

・昼休み時間に寄りました。繭クラフト素晴らしいですね。(群馬)

・富岡製糸場見応えありました! 繭で作るぐんまちゃんも親子で楽しめました!!(東京)

・楽しかったです。とても親切なお姉さま達で。今日は私の60才の誕生日でしたので嬉しいです…とても良い記念になりました。ありがとうございました。(神奈川)

🏠群馬・埼玉3・東京2・神奈川3・広島・不明(計11名・組)

 

◯6月3日(日)フリーマーケットが市役所であり、朝から沢山のお客様で市役所~駅周辺は大賑わい、駅東無料駐車場は満車状態でした。昨年までは「もみじ平総合運動公園」で行われ、今年は新しい市役所で行なわれたとの事。フリーマーケットにいらしたお客様は交流館にはほとんどお寄りにならなかったようでした。本日は、1組来館されてお帰りになると、次のお客様がいらっしゃるといった状況でした。K澤壮子様が交流館保管はっぴを定期的にお洗濯して下さっています。有難うございます。(U原一美 記)(N嶋 弘 K澤壮子 U原一美)

・思いがけず体験出来て良かったです。(秋田)

・秋田の方とお話しでき、楽しかったです。(茨城)

・5才の子供も楽しく作ることができました。ありがとうございました。(群馬)

🏠秋田3・茨城・群馬6・埼玉・千葉・大阪(13)

 

◯6月9日(土)昨日に続き真夏日。照り返しが強く、道を歩いていると早く建物に入りたいと交流館に来たけど涼しい!!と言いながら繭クラフトを作っていかれる人、「まちなか交流館はここで良いですか?」とやってくる人などそれぞれでしたが、家族連れがほとんどでした。バス25台でしたが、立ち寄る団体客はゼロ。北は北海道から、石川県。又、横浜からのお客様が多く見られました。年配の方は、三姉妹とご主人、兄弟で、ご夫婦、仲良しグループ、子供さんの試合が富岡であり、又明日も来ますと話す桐生のお母さん等々。これから製糸場へ行くのでその前に寄ったという紳士は、「ここで説明を聞いて良かった。」と話してくれました。(O田三枝子 記)(S藤裕子 O田三枝子)

・初めて体験して楽しく作れました。ぐんまちゃんかわいいです。(北海道)

・初めての姉妹旅で富岡製糸場に来ました。とっても楽しい体験とおしゃべりができました。(埼玉)

・熱中して作って楽しかったです。良い思い出になります。見てまた思い出せて嬉しい!!(東京)

・楽しくストラップ作りしました。まゆの手ざわりを楽しみました。(神奈川)

🏠北海道2・岩手・群馬2・埼玉・東京2・神奈川4・石川(13)

 

◯6月10日(日)梅雨に入り小雨模様の天候で来館者は比較的少なかった。しかし来館者の多くの方が熱心にパネル解説に聞き入ってくれ、繭クラフトも楽しそうに体験してくれた。パネル解説では四つの資産がなぜ世界遺産になったのか、また、四つの資産の役割等、マクロな視点からの解説も重視した。新しい発見をし、うなずいてくれる顔を目にするとこちらもうれしい気持ちになる。団体客から来館している人が多く、家族連れは少なかったように思う。繭クラフトに男性が興味深そうに真剣に取り組んでくれたことが印象に残っている。繭クラフト作りから、蚕糸業、ひいては世界遺産に少しでも関心を持ってくれればと思う。来客者が途切れた時は特に「荒船風穴」について情報交換などした。(I井規雄 記)(K渕秀子 U原一美 I井規雄)

・楽しい作業で、親切に対応していただきました。(茨城)

・I井様のお話しは、ご自身が見聞きされた実体験で勉強になりました。(群馬)

・北九州門司から参りました。まゆの貴重な体験ありがとうございました。(福岡)

🏠茨城2・群馬・千葉5・東京・福岡(10)

 

◯6月16日(土)梅雨入りしてはっきりしない天候が続いていますが、本日は温度も低く肌寒いような感じがしています。午前中は、実家が富岡で埼玉県本庄市から3人のお子さんと若いお母さんがクラフトに挑戦されて、素晴らしい繭クラフトが完成しました。午後は千葉より家族7人(3世代)が来られ、お蚕様を見たことがないので、富岡製糸場に来られ、ガイドツアーにも参加され、交流館にも寄られ繭クラフトにも参加されました。(K池 昇 記)(I田みち子 I川武男 U原一美 K池 昇)

・浦和から来ました。町なかガイドの方に駅から案内していただき、いろいろ説明してもらい、たのしい時間を過ごすことが出来て良かったです。ありがとうございました。(埼玉)

・たのしくできました。さなぎがでてきてびっくりしました。(埼玉)

・かいこががになってでる時、やわらかい方からでるのを初めて知った。発見があって楽しかった。ありがとうございました!!(千葉)

🏠埼玉3・千葉(4)

 

◯6月17日(日)今日は梅雨の晴れ間の予報だったが太陽が顔を出さなかった。昨日に続き肌寒い日でした。開館早々2名のお客様に忙しい一日になるか?と思いきや、その後、お客様はパラパラと。午後2時半、家族連れがドドッーっと来館し大賑わいでした。(S川文子 記)(N嶋 弘 Y村和子 S田道代 S川文子)

・いつも、通り過ぎていたのですが寄らせていただきました。思っていたより早く作れるので他の方にもすすめられます。親切に教えていただきありがとうございます。(群馬)

・直接繭に触れることが出来、感動でした。(埼玉)

・二度目の富岡です。前回は富岡製糸場の見学しかできませんでしたが、今日は製糸場の周りをぶらぶら散策。散策の途中にこちらのサロンで「ぐんまちゃん」作り。笑顔で群馬の紹介をして下さって、素敵な出会いのひとときを味わいました。繭の事を詳しく説明していただき有難うございました。(山梨)

🏠群馬2・埼玉3・千葉2・東京3・神奈川2・長野2・山梨・(15)

 

◯6月23日(土)梅雨入りしてはっきりしない日が続いています。今日もお昼頃から小雨が降ってきました。交流館の外通りもあまり人も歩いていません。来館者も少なかったです。お昼頃見えた中学2年生は、蚕に興味を持ち、今年の夏休みの研究課題にしたいと熱心に話しを聞いてくれました。また、来館者の半分以上の方は、世界遺産は富岡製糸場だけだと思っているようです。ここで解説を聞くなかで4資産のつながりを理解してくれました。(Y田孝三 記)(K澤壮子 I田みち子 I井規雄 Y田孝三)

・初めてまゆを触ることができ思い出になりました。ありがとうございました。(福島)

・たくさんのまゆの話を聞かせてくれて、夏休みの自由研究にしたいと思います。(神奈川)

・家族で立ち寄りました。お話しも楽しく、良い時間を過ごせました。(神奈川)

🏠埼玉・千葉・東京2・福島2・神奈川4(10)

 

◯6月24日(日)昨日までの雨模様が一転し、爽やかな青空がのぞきました。しかし客足はのびず午前・午後ともに何組かのクラフト作りは行いましたが待ち時間も多かったように思います。いらっしゃったお客様は、じっくりと味わって作りお話しをして喜んで下さったようです。川崎から来た女性は「製糸場のガイドさんや、座繰り体験など、みんなよい方でした。」と、とても和やかに語って下さいました。本日はお子様連れのお客様はゼロでした。(M田夕香 記)(N嶋 弘 O形榮一 U原一美 M田夕香)

・繭という字を見て、工作をして、乾燥した虫と糸を手でさわって、感触も工作も楽しみました。ありがとうございました。(岩手)

・楽しく体験させていただきました。出身地のお話しもできて、とても楽しく過ごせました。(長野)

・繭の中身のさなぎを見て意外な大きさにびっくりしました。楽しく体験できました!有難うございます!!(岐阜)

🏠岩手2・群馬・神奈川・長野・岐阜(6)

 

◯6月30日(土)昨日梅雨明けし、今日は本当に暑さが厳しい一日でした。交流館の前の通りはあまり人通りがなく、お客様はあまり寄らない状況でした。午後になっても日差しは益々厳しくなり、寄って下さった方々はとにかく休めて良かった…との声でした。今日寄って下さった方々は県内の方が多くて、中には初めて富岡製糸場に来ました、との方もいらっしゃいました。(M寺清江 記)(K澤壮子 S藤和男 M寺清江)

・色々と教えていただくこと沢山で、良かったです。気づき発見ありがとうございました。(群馬)

・皆さん、美男・美女で、とても良くしていただきました。(群馬)

・地元の情報が聞けてありがたかったです。(東京)

🏠群馬5・東京(6)

 

◎お客様の都道府県内訳:北海道2・岩手3・秋田3・福島2・茨城3・群馬18・埼玉12・千葉10・東京11・神奈川14・石川1・長野3・山梨1・岐阜1・大阪1・広島1・福岡1・不明1(計17都道府県+不明1 計88名・グループ)

 梅雨寒で気温の低い日や一転して高温の日、そして早い梅雨明けとなり気温の変動の激しい月でした。各地からいらしたお客様有難うございました。交流館スタッフの皆様お世話になりました。(U原一美)

 

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