透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「小夜しぐれ」 高田 郁

2017-03-13 | A 読書日記

みをつくし料理帖シリーズ全10巻 高田 郁/ハルキ文庫
「八朔の雪」
「花散らしの雨」
「想い雲」
「今朝の春」
「小夜しぐれ」
「心星ひとつ」
「夏天の虹」
「残月」
「美雪晴れ」
「天の梯」



■ みをつくし料理帖シリーズ全10巻 高田 郁/ハルキ文庫 その第5巻「小夜しぐれ」を読み終えた。いろんなことが起きるから展開が気になって読み進めることになる。高田 郁さんはストーリーテラーだ。

この巻ではまずつる屋という店の名前の由来の娘つるが17歳で亡くなった経緯が明らかになる。**種市を人殺しにしないこと。種市に死を選ばせないこと。**(82頁) え、何が起こった?

**おつるを死に追い込み、それを償うことなく逃げた男、それが錦吾なのだ。錦吾を殺めることでおつるの敵を討ちたい、と種市が思うのはしごく当然だった。**(82頁) ここでは意図的に引用する順序を逆にした。

次は野江がいる吉原の翁屋で毎年行われている花見の宴の料理を澪が作ることになる、という出来事。

**「旨い料理を出す、としながら料理が客の口に合わなければ翁屋にとっての恥。けれども、もし客の気に召せば最高の趣向。これほど誉れなことはありますまい」**(100頁)と翁屋の楼主。

この話を受けた澪は献立作りに悩む。源斎は**「あなたらしく料理をすれば良い。吉原廓の上客だから、と構える必要はないと思いますよ」**とアドバイスし、続けて**「この度の宴はあさひ太夫とはかかわりの無いものでしょうが、太夫に食べてもらいたい、と思う料理を作ってみてはどうですか」**という。

宴に招かれた上客は十人。**「花見の宴とは即ち、桜花を愛で、酒を汲み交わすものではないのか。これではただの会食ではござらぬか」
男の言葉に、隣席の摂津屋が僅かに眉を曇らせる。内心、厄介な、と思っていることが窺えた。**(141頁)こんな下りを読めば驚くし、先が気になってしかたがない。これ以上ここに引用するのは野暮というもの。

宴の後、澪に楼主はこの吉原で料理屋をやる気はないかと尋ねる。**「(前略)年に千両稼ぐことも夢ではあるまい。遣り方次第ではもっと稼げるかも知れぬ」**(155頁)澪の心は揺れる・・・。

この巻の終盤で小松原の正体が明らかになる。小松原は偽名、小野寺数馬という名の御膳奉行だった。

小野寺の妹の早帆は兄が澪を好きなことに気付く。

小野寺と早帆が夜中に台所で大豆を煎って、きな粉をつくりながら交わすやり取りがほほえましい。**「兄上とその娘とで料理屋でもされてはいかが?存外、町人の方が兄上にはお似合いか、と早帆は思いますゆえ」**(273頁)

この先どうなるのだろう・・・。