透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

文学作品に出てくる火の見櫓

2017-02-05 | A 読書日記



 吉村 昭氏には歴史上の出来事を扱った作品が多い。資料を当たり、例えば事件・事故当日の天気など、細部まで調べ上げて作品化している。

『関東大震災』文春文庫は大正12年9月1日に関東地方を襲った大地震について克明に描いている。

当時も火の見櫓はあったから、この作品の中にも出てくるのではないか、そう思って頁をめくっていて、次のような件をみつけた。**麹町区第一消防署勤務であった林錠太郎氏の回想によると、その日も若い署員が望楼に上がって火災発生を監視していた。
正午少し前、林氏が突然起った地震で署外に飛び出し望楼を見上げると、鉄骨作りの望楼が左右に激しく揺れている。倒れる恐れがあると思ったが、望楼は柔軟にしなうだけで折れる気配はなかった。(後略)**(50頁)

これほど具体的な描写に出合ったのは初めてだ(望楼は火の見櫓の別称)。

火の見櫓が出ている有名な文学作品は、何作もあるかもしれない。島崎藤村の『夜明け前』にも出ていた。(過去ログ

 宇江佐真理さんの髪結い伊三次捕物余話「心に吹く風」の2編目の「雁が渡る」には火の見櫓が主要な舞台として出てくる。(過去ログ2
 
北杜夫の代表作『どくとるマンボウ青春記』にも松本市内にあった火の見櫓が出てくる。自室のカオスな書棚から、この本を探し出せなかったが。(過去ログ3