透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

川端康成の「山の音」を読む

2010-10-23 | A 読書日記


 先日読んだ内田樹氏の『街場のメディア論』のなかで、氏は「電子書籍」と違い「本」は書棚に並べることができ、それが自己啓発的な空間を形成すると指摘していた。 

本に囲まれた空間に身を置いていることが本を読もうという動機付けになる、と理解しても著者の主意からそう外れてはいないだろう。

そのような効果かどうか、先日自室の書棚のこの本に目が行き、つい手に取った。川端康成の『山の音』。昭和42年10月初版、45年重版と奥付にあるから、40年前の文庫本ということになる。もうすっかり内容を忘れてしまっているから初読と同じだ。

日々の暮らしの中に人生の機微をみるというような、静かな作品ではないだろう。少し大きな振幅のある家族小説(などというジャンルはないとは思うが)ではないかと予測している。

初老の主人公と年上の妻、息子夫婦、夫とうまくいっていない娘らが主な登場人物。秋の夜長、少しゆっくり読み進めようと思う。


「鞄心理学」を読んだ

2010-10-23 | A 読書日記

 『鞄心理学』中山和彦/先端医学社 読了。

本書でははじめにいくつかの実例が紹介される。小脇に抱える小さなバッグ、トートバッグ、銀色に輝くアタッシュケース、スリーウェイ・バッグ(時には肩掛け、時にはノーマルバッグ、そしてリュックにもなるカバン)、紙袋、ブリーフケース型バッグなど、カバンには持ち主の心理状態などが投影されているという。

確かに小脇に抱える小さなバッグを使っている人とトートバッグを使っている人とでは明らかにタイプが違う。服装や手荷物などには性格が反映している、ということを「経験的」に感じている。

**カバンの大きさ、素材、硬さ、形態などは、精神的健康状態や社会適応性、不安、緊張感などと一定の関連があるように思います。**というのが臨床経験30年を越えたという著者の見解。

「鞄心理学」は多くの経験に基づく直感によるものであって、科学的に実証されたものではない。もしこの本を読んで物足りなさを感じるとすれば、このことに因るのだろう。好きな色や動物などによって性格を占う、雑誌ネタとどこが違うのかと。

**その人の「こころ」の状態が恒常性をもって、ある程度折り合いがついてくると、それまで何の変てつもないカバン、と思っていたカバンを、急に、利便性に富んだ理想のカバンに感じることがあります。
この状態になると、「はみだした自我」ではなく、その人の「自我ケース」として、カバンに心理状態が投影されてくるのです。
世の中のカバンを持っている人々は、このような状態に達していることが多いので、彼らが持っているカバンによってある程度心理状態を分析することができるのです。** 

カバンは「こころ」(このカッコつきのこころとは自我のこと)の折り合いをつけるものだという著者の見方になるほど! 興味深かった。

読了後は人の持っているカバンに注目するようになった・・・。

メモ) 女性の場合、流行やファッションなどのバイアスがかかることが多く、カバンに心理状態が投影しにくい。