最近不祥事が続くNHKについて,チェック体制を充実させる必要があることは間違いないが,放送はそのようなチェックを決して国会に委ねてはないのではないかと考えています。
現在,NHKは予算案が国会に提出される前に与党議員のうち250人くらいについて1人ひとり説明に回り,かつ自民党総務部会などに会長が出向いて説明をするシステムになっている。しかし,1人ひとり回った結果,何か,民主的なチェックがなれていることになるだろうか。むしろ,圧力を受けに行くようなものではないか,という批判がされている。
放送法(←クリック)の規定は,
第14条 次の事項は、経営委員会の議決を経なければならない。
1.収支予算、事業計画及び資金計画
第37条
1 協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。
3 前項の収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする。
4 第32条第1項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第1項の収支予算を承認することによつて、定める。
第53条の10 総務大臣は、次に掲げる場合には、電波監理審議会に諮問しなければならない。
1.第2条の2第1項又は第4項の規定により放送普及基本計画を定め、又は変更しようとするとき。
2.(前略)第37条の2第1項(収支予算等の認可)(中略)の規定による処分をしようとするとき。
3.第37条第2項の規定により協会の収支予算、事業計画及び資金計画に対して意見を付けようとするとき。
となっている。
すなわち,放送法では,NHKの予算は,
①経営委員会の議決を経て決定する(14条1項)
↓
②総務大臣に提出する(37条1項)
↓
③総務大臣は自らの意見を付しNHK案を変更するなどして電波監理審議会に諮問する(37条2項,53条の10第2,3項)
↓ ↓ ↑
↓ ④電波監理審議会が答申する(53条の10第2,3項)
↓
⑤内閣を経て国会に提出する(37条2項)
↓
⑥国会の承認を得る(37条2項)
という手続を経ると規定されている。
◆このように,放送法は,政党・国会議員への説明は国会で行われることを予定しており,国会上程以前,あるいは国会以外の機会に,特別に政党・国会議員に説明することは予定されていない。
◆特に,37条3項は,「収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする」と規定してある点は重要だ。
反対解釈すると,「収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してないときは、国会の委員会は、協会(NHK)の意見を徴しないものとする」ということになるからだ。
すなわち,NHK予算案は,総務大臣がチェックし,そのチェック結果をさらに電波監理審議会がチェックするから,原則として,NHKは国会で意見を述べたり説明をする必要はなく,予算案を提出した総務大臣が回答すればよいことになる。
確かに,こうすれば,NHKは,政治的圧力を回避できる。
◆問題は,NHKの民主的チェックであるが,それは,電波監理審議会にNHK担当委員を置き,それに会計士や弁護士をあてるなどして機能を充実させればよい。
ただし,現状では,同審議会の委員は、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。」(電波法第99条の3)となっており,政治的な圧力を回避できる選択方法にはなっていない。そこで,公募制などによる民主的な選出方法に改める必要はあるだろう。
NHK改革は,まず,この放送法の趣旨を蘇らせることから始めてみてはいかがでしょうか?
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現在,NHKは予算案が国会に提出される前に与党議員のうち250人くらいについて1人ひとり説明に回り,かつ自民党総務部会などに会長が出向いて説明をするシステムになっている。しかし,1人ひとり回った結果,何か,民主的なチェックがなれていることになるだろうか。むしろ,圧力を受けに行くようなものではないか,という批判がされている。
放送法(←クリック)の規定は,
第14条 次の事項は、経営委員会の議決を経なければならない。
1.収支予算、事業計画及び資金計画
第37条
1 協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。
3 前項の収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする。
4 第32条第1項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第1項の収支予算を承認することによつて、定める。
第53条の10 総務大臣は、次に掲げる場合には、電波監理審議会に諮問しなければならない。
1.第2条の2第1項又は第4項の規定により放送普及基本計画を定め、又は変更しようとするとき。
2.(前略)第37条の2第1項(収支予算等の認可)(中略)の規定による処分をしようとするとき。
3.第37条第2項の規定により協会の収支予算、事業計画及び資金計画に対して意見を付けようとするとき。
となっている。
すなわち,放送法では,NHKの予算は,
①経営委員会の議決を経て決定する(14条1項)
↓
②総務大臣に提出する(37条1項)
↓
③総務大臣は自らの意見を付しNHK案を変更するなどして電波監理審議会に諮問する(37条2項,53条の10第2,3項)
↓ ↓ ↑
↓ ④電波監理審議会が答申する(53条の10第2,3項)
↓
⑤内閣を経て国会に提出する(37条2項)
↓
⑥国会の承認を得る(37条2項)
という手続を経ると規定されている。
◆このように,放送法は,政党・国会議員への説明は国会で行われることを予定しており,国会上程以前,あるいは国会以外の機会に,特別に政党・国会議員に説明することは予定されていない。
◆特に,37条3項は,「収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする」と規定してある点は重要だ。
反対解釈すると,「収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してないときは、国会の委員会は、協会(NHK)の意見を徴しないものとする」ということになるからだ。
すなわち,NHK予算案は,総務大臣がチェックし,そのチェック結果をさらに電波監理審議会がチェックするから,原則として,NHKは国会で意見を述べたり説明をする必要はなく,予算案を提出した総務大臣が回答すればよいことになる。
確かに,こうすれば,NHKは,政治的圧力を回避できる。
◆問題は,NHKの民主的チェックであるが,それは,電波監理審議会にNHK担当委員を置き,それに会計士や弁護士をあてるなどして機能を充実させればよい。
ただし,現状では,同審議会の委員は、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。」(電波法第99条の3)となっており,政治的な圧力を回避できる選択方法にはなっていない。そこで,公募制などによる民主的な選出方法に改める必要はあるだろう。
NHK改革は,まず,この放送法の趣旨を蘇らせることから始めてみてはいかがでしょうか?
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