集成・兵隊芸白兵

 平成21年開設の「兵隊芸白兵」というブログのリニューアル。
 旧ブログ同様、昔の話、兵隊の道の話を続行します!

対戦相手より怖い、バカな興行主!

2019-01-30 20:17:16 | 格闘技のお話
 昨年大みそかのRIZINにおいて、ボクシング無敗の王者、ブロイド・メイウェザー・Jr対那須川天心の国際式ボクシングによるエキシビジョンマッチが行われました。
 結果はご存知の通り、メイウェザーが那須川選手を瞬殺するというものでしたが、今回の那須川選手の敗戦について責を負うべきは那須川選手ではなく、この無謀極まるマッチメイク・ルール設定をしたRIZIN主催者であると断言いたします。

 当初この試合は「メイウェザーと那須川が対決!」ということだけが11月初旬にプレスリリースされたものの、その時はルールも何も決まっていない状態でした。
 これはあくまで推測にすぎませんが、RIZIN主催者は、メイウェザー側に多額のカネ(メイウェザーにとってはハシタ金であろうが、RIZINにとっては大金)の臭いを嗅がせ、「ちょいとご挨拶がてら、エキシビジョンのスパーでも」などと甘言を持ち掛けつつ、最終的には大昔の「猪木・アリ」の試合のように、なし崩し的に異種格闘技のガチ試合に持って行こうという甘い考えがあったと思われます。
 そうでなければ、ギャラが不明、対戦ルールも不明というナゾのプレスリリースの意味、そして対戦決定までに幾度か起きた「メイウェザーが対戦拒否」騒動の理由が読み解けないのです。
 RIZINが参考にしたとワタクシが勝手に思っている、「猪木・アリ」の場合、試合がなんとなく成立しそうな諸条件がある程度揃っていました。それがこちら↓
・アリがプロレスというもの自体に高い関心を持っていた。
・アリは選手として最晩年にさしかかっており、プロレスへの移籍の道も模索しているところだった。
・上記の過程でアリは自分で世界最強、誰の挑戦でも受けるということを公言しており、猪木の挑戦を避けることが憚られた。
・猪木・アリ陣営双方に顔の効く人物(フレッド・ブラッシー)がおり、難しい交渉を経て形にできる可能性がゼロではなかった。
・最終的にアリにとっては大金を稼げる(アリにとっても大金)ただのお遊びでしかなく、勝とうが負けようが大した問題ではなかった。
(いずれもネタ元は「完本 1976年のアントニオ猪木」(柳澤健・文春文庫)より)
 ところがメイウェザー戦に関しては、これらの条件がほとんどない、全くのゼロベースからの交渉であり、猪木アリ戦以上に、マッチメイクの交渉が困難であることは自明の理でした。にもかかわらず、RIZINが自らの立ち位置を「猪木・アリのときの新日と同じ立場」と考えたのであれば、認識が甘すぎるとしか言いようがありません。

 また、メイウェザーとその陣営といえば、カネ目当ての有象無象が夏場のウジ虫以上に存在するアメリカン・ボクシングの世界で、ビジネスにおいても勝ち抜いてきた連中です。シビアでタフな交渉ごとは日常茶飯事というメイウェザー陣営が、ジャパンローカル団体RIZINの思惑を察知し、ゆさぶりをかけ、交渉を優位に進めることは、赤子の手をひねるより容易いことであったでしょう。
 試合のごく直前に決まった「国際式ボクシングでやる」というルール設定、蹴り技の反則に対する多額の違約金(確か蹴り1発5億以上だったと記憶)などは、いずれも完全に足元を見られ、「赤子の手をひねられた」結果としか言いようがなく、特に那須川選手は、こうした一連の交渉のあおりをモロに食らった、としか言いようがありません。

 帝拳ジムで国際式の練習を多少していたとはいえ、国際式ボクシングの試合経験がない那須川選手に、試合まで1か月を切った時点で「国際式の試合をやれ」というのは、プロ野球の選手を引っ張り出してきていきなり「似たよう競技だから、お前明日クリケットやれ」と命じるのと同じこと。
 哀れ那須川選手は、満足な準備も練習もできないまま、試合のリングに登らされたのです。
 ワタクシが「那須川選手は準備不足のままリングに挙げられた」とする理由ですが、那須川選手がメイウェザーに2回食らったパンチコーディネーション…ちょいと列挙するとこんな感じ↓ですが、
 「①L字ガードとジャブで距離を取る→②相手の右ガードの上から左フックを強振(メイウェザーはオーソドックス&リーチが長いため、この一撃がサウスポーの那須川選手のガードを通り越し、見事頭に当たった)→③相手の右ガードが固まったところで顔面に右を強振して左右のガードをくぎ付けにする→④ボディ・顔面とに右の連打」
(なお④については、那須川選手がいずれもボディで倒れたため、連打に至らず)
 この攻撃はもう、メイウェザーのコーディネーションでも初歩中の初歩であり、ボクシングにちょっと詳しい人ならすぐにわかるような攻撃。それをなんの防御もできず食らっているというのは、那須川選手がこの試合に備えた国際式ボクシングを練習できていないということと、メイウェザーのコーディネーションを知る人間が周囲にいなかったという何よりの証左です。 

 この一戦のみならず、RIZINは全くレベルの違う格闘家を、単なるネームバリューだけでムチャなマッチメイクをすることで有名です。
 本戦と同じくらいひどかったのは、平成27年末に行われた、故・山本KID郁史選手の甥・アーセン選手と、ヒクソン・グレイシーの嫡子・クロン・グレイシー選手との対戦。
 MMAファイターとしても、グラップラーとしても全くレベルが違う(アーセンは何の技も習得していなかった)マッチメイクであるにも関わらず、「最強一族の対決」などというふざけた理由で実現した結果、アーセン選手は序盤こそ、驚異の身体能力のみでクロンの十字逆をかわしたりしたものの、最終的にはあっという間に前三角で瞬殺…という、実にお粗末な内容に終わりました。
 大昔の新日本プロレスの遺恨試合じゃあるまいし、今時「最強一族」に「昔々のネームバリューありき」というウリだけで安易に視聴率を稼ごうとする頭の悪さ、そして選手を育てる観点が全くない不遜極まる悪辣な性根には、心底ヘドが出ます。

 ワタクシが地上波放送の総合・キックの試合を一切見なくなって久しいですが、今年もまた、「見なくてよかった」と思わせるに十分なものでした。
 こうした「視聴率ありき」のくだらない格闘技中継ばかりしていては、視聴者の格闘技離れは進む一方であると断言し、今回は擱筆致します。  

新年の抱負・酒を上回る鍛錬を!?

2019-01-02 20:12:24 | 格闘技のお話
 新年あけましておめでとうございます。本年も弊ブログをよろしくお願い申し上げますm(__)m。例年どおり、アホな話題、しょうもない話題を少しずつお届け致したく存じます。

 さて、凡夫であるワタクシの数少ない趣味は、格闘技に資するトレーニングと飲酒の2本立てなのですが(;^ω^)、近年は私のような「格闘技をする人(あるいはトレーニー)兼酒飲み」、ずいぶん減ったように思います。

 昔は「スポーツマンやトレーニー=酒くらい飲めなくてどうする」と思われていたふしがあり、事実、恐ろしい量の酒を飲みながら翌日は普通に試合する!練習する!そして吐く(;^ω^)!みたいな人がゴロゴロいました。
 一つ例を挙げますと、昭和50年代、阪急ブレーブスにその人ありと謳われた豪球投手・山口高志氏は、一晩でふつうにウイスキーのボトル1本はあける酒豪で、その上で日本球史に残るような剛速球を投げていたのですから、本当に大したものです。
 ところが最近は、スポーツやトレーニングに関する最新情報が容易に入手できるようになったためか、あるいは人々の健康志向が上昇したためか、体を一定以上動かす職業、あるいは一定以上のレベルでスポーツをする人の中における酒飲みの比率が、めっきり減ってしまいました。
 ただ、精密機械のごとき体調管理を要するトップアスリートが飲酒量を控える、あるいは飲酒しないというのは分かりますが、少々コンディションを崩そうが何しようが、たいして世に影響のない一般トレーニークラスの人間が、妙に意識を高く持って、飲みたいものも飲まないなどというのは、個人的にはちょっと理解できず、また、賛意を表すこともできません。

 酒がトレーニングにとって「少量なら良い効果があり、量を超すとアルコール性の筋肉溶解が起きるのでよくない」ということは、ワタクシごときでも、知識としては知っております。
(どんな機序で筋肉溶解が起きるのかといいますと、アルコールをアセトアルデヒドに分解する過程で、肝臓では大量の水と糖分が必要になる→その「水と糖分」は、手近にある筋肉を異化(要するに分解すること)させることで賄われる→筋肉が分解されて減少する、という機序だそうですが…)
 ただ、私見としましては、酒ぐらい飲んでも、それを上回っておつりがくるくらいのものをやって初めて「トレーニングしてます」と言っていいものであり、酒を控えたり、やめたりしないと体力や筋肉の量が保てないなどというのは、トレーニングが足りていない証拠としか言いようがありません。
 仮にも高いレベルでの錬成を志す者は、ビールでも焼酎でも日本酒でも、あるいはメチルアルコールでも(それはさすがにダメですが('◇')ゞ)、栄養にするくらいの気合を持ってほしいものです。
 
 まあ、本稿の半分くらいは酒飲みの言い訳と言えなくもないですが('◇')ゞ、トレーニングに関しては小さくまとまるのではなく、飲み食いもしっかりしつつ、一般の人間からドン引きされるようなトレーニングを実施し、様々な意味での強さをもとめていきたいと思っております。