父のデイサービスの間に、部屋の床修繕に業者が入った。といってもポータブルトイレの下の部分の床材のフエルトを交換するだけなのだが、その場でポータブルトイレの設置場所の変更を手伝わせた。１つ１５ｋｇのコンクリート塊の足場が４個、位置がずれると本体が安定しないのだ。悪臭の中、嫌な顔せず付き合ってくれたことに感謝した。
移動先は、ベッド際から１ｍ半ほど離れた柱の位置なのだが、ベッドからの落下後、立ち上がるのに手の届く範囲からはずし、元の場所には歩行器を置いた。予想より作業時間が１時間遅くなったうえ、母が作業の段取りを無視して外出してしまったので、駅前に出て茅ヶ崎サポセンに寄るタイミングがなくなってしまった。主婦の論理というか、頑として曲げない大雑把な時間行動と思いつき変更は、介護をやっていく上の相棒の習癖なので、無視もできない。自閉症の時間厳守の几帳面さの対極にある。
このトイレの位置変更に父がパニックを起こした。半身の力がますます弱まった父の階段介助は安全確保が難しい。それというのに連休中なので、新入りさんが従来のヘルパーさんの代行としてやってきた。これがパニックに拍車をかけた。
移送には介護の技術と同時に、個々人の状況に合わせた調整を行わなければならない。ところが、この部分が代行者にはわからない。送迎者の到着前に順路を追いながら確認をした上で、父の介助を始めた。父は両手を片側の手すりにつかまらないと即座に転倒してしまう。ところが教科書とおりなら肩を貸し、手を添えるところが、その体勢ではうまく行かない。大騒ぎで２階にたどりついた。
部屋に入って父は驚いた。家具の配置が替っていたからだった。父を立たせてから、変更の理由を説明した。しかし不安の強い父には、もう説明が耳に入らなかった。部屋に入ったら、ベッドまでのコースの途中に椅子が置いてある。ここで一休みしてベッドに戻るのだが、この椅子の場所に椅子型のポータブルトイレが移ってきたのだ。
父は不思議な癖があって、一度ベッドに横になって、布団をかけないと、次の立小便に移らないのだ。この決まった機械的な中断に見られるように、臨機応変さが弱まっていた。自閉症の儀式的なものというより、行為をワンセットで考えてその手順に沿って行動しているから、連続する部分が途切れてしまうのだ。
経験のあるヘルパーさんと組んでいたので、ベッドに触らせてから、横になる前に、ベッド脇のトイレで立小便をサポートした。トイレに出切るだけ接近させ、下半身の衣類や紙パンツを降ろし、背後から転倒防止の支えをした。その場で下半身の衣類などを戻し、ベッドに誘導した。
ところが、先に立小便させるという手順を引き継いでいた代行者のヘルパーさんは、父に立小便をさせようとした。ここで大パニックが起こった。突然下半身の衣類を脱ぎ始め、ポータブルトイレに座ったかと思うと立ち上がり、階段下のトイレにいこうとして立ち上がって転んだ。
トイレの蓋を開けて誘導すると、浅く腰掛けたまま排尿しようとし、慌てて尿取りパッドで押さえさせたが、意味が通じない。たちあがって反転し、立小便をしようとしてやめて、また座ろうとした。
一時休憩の中継点からベッドへということと、立小便するトイレがない、手がかりになるものが、ベッド脇にない。これからどうしていこうかという迷いが一気に噴出していた。排尿が無理と判断し、父をベッドに誘導した。
父はベッドに横になっては起き上がり、立ち上がろうとしては寝た。そのとき、勢いよく寝るので、ベッド枠に後頭部をぶつけてしまった。結局騒ぎが収まるまで３０分弱かかってしまった。
混乱は一日中続いた。階段を降りてこようとすること３回。濡らした下着を干そうとベランダに出てしまうこと１回、トイレを元の位置にもどそうと引きずったことが２回。（危なかった。午前４時が１回。）漏らした紙パンツを自分で交換しようとして、紙パンツの袋を散乱させて、当人も転倒が１回。排尿失敗３回。昨日は、予想していたとはいえ徹夜同様だった。
朝食を出し、こうして入力中も階段の上から、救援を求める声がしている。洗濯物の山を崩したのだった。この配置は、ベッドからトイレまでが遠いが家具のたどり歩きでトイレまでなんとかとどく。歩行困難の進行との兼ね合いを観察調整がいるが、慣れてもらおうと思う。母が起きてきたので、これから昼まで仮眠。私の右目はすでに、風呂場の湯気に包まれたような視野になっている。網膜色素変性症である。
夜間傾聴：□□君（仮名）
（校正２回目済み）
移動先は、ベッド際から１ｍ半ほど離れた柱の位置なのだが、ベッドからの落下後、立ち上がるのに手の届く範囲からはずし、元の場所には歩行器を置いた。予想より作業時間が１時間遅くなったうえ、母が作業の段取りを無視して外出してしまったので、駅前に出て茅ヶ崎サポセンに寄るタイミングがなくなってしまった。主婦の論理というか、頑として曲げない大雑把な時間行動と思いつき変更は、介護をやっていく上の相棒の習癖なので、無視もできない。自閉症の時間厳守の几帳面さの対極にある。
このトイレの位置変更に父がパニックを起こした。半身の力がますます弱まった父の階段介助は安全確保が難しい。それというのに連休中なので、新入りさんが従来のヘルパーさんの代行としてやってきた。これがパニックに拍車をかけた。
移送には介護の技術と同時に、個々人の状況に合わせた調整を行わなければならない。ところが、この部分が代行者にはわからない。送迎者の到着前に順路を追いながら確認をした上で、父の介助を始めた。父は両手を片側の手すりにつかまらないと即座に転倒してしまう。ところが教科書とおりなら肩を貸し、手を添えるところが、その体勢ではうまく行かない。大騒ぎで２階にたどりついた。
部屋に入って父は驚いた。家具の配置が替っていたからだった。父を立たせてから、変更の理由を説明した。しかし不安の強い父には、もう説明が耳に入らなかった。部屋に入ったら、ベッドまでのコースの途中に椅子が置いてある。ここで一休みしてベッドに戻るのだが、この椅子の場所に椅子型のポータブルトイレが移ってきたのだ。
父は不思議な癖があって、一度ベッドに横になって、布団をかけないと、次の立小便に移らないのだ。この決まった機械的な中断に見られるように、臨機応変さが弱まっていた。自閉症の儀式的なものというより、行為をワンセットで考えてその手順に沿って行動しているから、連続する部分が途切れてしまうのだ。
経験のあるヘルパーさんと組んでいたので、ベッドに触らせてから、横になる前に、ベッド脇のトイレで立小便をサポートした。トイレに出切るだけ接近させ、下半身の衣類や紙パンツを降ろし、背後から転倒防止の支えをした。その場で下半身の衣類などを戻し、ベッドに誘導した。
ところが、先に立小便させるという手順を引き継いでいた代行者のヘルパーさんは、父に立小便をさせようとした。ここで大パニックが起こった。突然下半身の衣類を脱ぎ始め、ポータブルトイレに座ったかと思うと立ち上がり、階段下のトイレにいこうとして立ち上がって転んだ。
トイレの蓋を開けて誘導すると、浅く腰掛けたまま排尿しようとし、慌てて尿取りパッドで押さえさせたが、意味が通じない。たちあがって反転し、立小便をしようとしてやめて、また座ろうとした。
一時休憩の中継点からベッドへということと、立小便するトイレがない、手がかりになるものが、ベッド脇にない。これからどうしていこうかという迷いが一気に噴出していた。排尿が無理と判断し、父をベッドに誘導した。
父はベッドに横になっては起き上がり、立ち上がろうとしては寝た。そのとき、勢いよく寝るので、ベッド枠に後頭部をぶつけてしまった。結局騒ぎが収まるまで３０分弱かかってしまった。
混乱は一日中続いた。階段を降りてこようとすること３回。濡らした下着を干そうとベランダに出てしまうこと１回、トイレを元の位置にもどそうと引きずったことが２回。（危なかった。午前４時が１回。）漏らした紙パンツを自分で交換しようとして、紙パンツの袋を散乱させて、当人も転倒が１回。排尿失敗３回。昨日は、予想していたとはいえ徹夜同様だった。
朝食を出し、こうして入力中も階段の上から、救援を求める声がしている。洗濯物の山を崩したのだった。この配置は、ベッドからトイレまでが遠いが家具のたどり歩きでトイレまでなんとかとどく。歩行困難の進行との兼ね合いを観察調整がいるが、慣れてもらおうと思う。母が起きてきたので、これから昼まで仮眠。私の右目はすでに、風呂場の湯気に包まれたような視野になっている。網膜色素変性症である。
夜間傾聴：□□君（仮名）
（校正２回目済み）
