湘南オンラインフレネ日誌

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11/10 県立鶴嶺高校「ボランティア塾 in 鶴嶺」初日を終えて

2010-11-14 18:02:40 | 引きこもり
2010/11/10 記
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県立鶴嶺高校の「ボランティア塾 in 鶴嶺」の初日に参加してきました。2回の連続企画で、湘南あすなろ会は、「ホームレスと市民生活を考える授業」の地域住民との関係の中のホームレス問題を追うことにしました。中心はホームレスの自立支援活動としてのビッグイシューの活動紹介。背景の概略的な話を私が担当。

初日は「『ホームレス』に出会う子どもたち」(本編のみ)の上映、16日の二日目が拡張シンポ形式の全体懇談とした。生徒さんは、高1の60名の皆さんが2回連続で参加。一回が45分なので忙しいが、去年に続き、今年の2回連続企画を受け入れてくださった鶴嶺高の教員の皆さんには感謝している。

今回は欠席1名の59名の参加。16日は、地域の見学者の方々が加わる。

ホームレスの問題は、すべり台構造をした市民社会の歪みを背景にして、生活破綻のリターンマッチの機会が奪われていることによる社会・経済・家族の問題であり、差別のレッテルを貼って棄民する市民社会の歪みの問題だ。この大きな隣あわせの生活不安と、蟻地獄のような社会構造にどう立ち向かうか、その私とは個人であるのかという問いを出せれば、今回の企画の目的は終わる。

では、実際にどのように連携できるのかというところで、ビッグイシューの販売活動の例が出てくる。書の購入と交流は、格差社会に生きることを考える入口になりうる。今、ここで自分が始められることからお互いを考えるその形の提案になる。茅ヶ崎には、毎晩炊き出し支援をしている他地域より進んだ活動があり、ホームレスの方々の健康と安全を守る巡回パトロールの活動がある。また湘南あすなろ会はビッグイシュー販売サポートだけでなく、寿町や山谷の見学会や、鶴嶺高の例のように、ホームレスの状態紹介の企画なども行っており、今後はバーベキューや、映画会をやるというような方向性も出ている。そこに参加してくださるのは勿論歓迎だが、バーべキューには酒が、巡回は昼は授業時間、夜は青少年条例に触れる時間帯とハードルが高い。だから彼らが学校や友人とHL(ホームレスの略。以下も同様。)の人たちを呼んでくれればいい。交流の機会をつくり、話してみればいい。こちらの企画にはまるだけが参加ではない。その提案まで出来ればいいが、ここはあすなろ会のメンバー間では異質な発想になってしまっている。

初日、私たちはDVD機材の技術的問題に振り回されて、高校生がHLのひとたちをどのように見ているか把握するところが抑え切れなかった。DVDデッキ+大型ディスプレーという組み合わせのため、初期画面の映像選択ができないかも知れないという問題が前々日に発覚していた。初期画面で止まってしまったら作品が上映できないことになってしまうのだった。当日、最悪のことを考えて、自前でPCとDVDプレヤー、そしてデジタルからアナログ信号に切り替えてPC用ではないアナログTV画面つなぐDAコンバータ(ダウンコンバータ)を詰め込み、s-stereo端子がないことも予測して、PCから音声FM波を出す装置とFMラジオを準備した。ひとつ狂うとすべてが当てはまらなくなってしまう。大きなショルダー2つ分の荷物。到着後、開演1時間前の勝負だった。

ところが控え室に集まった団体に学校の企画責任者からの挨拶と説明が始まり、時間の猶予はじりじりと追い上げられていた。

問題は案の定発生。加えてオートスタンバイが設定を標準に戻してしまう邪魔物が入った。しかしディスプレー側の入力切替をすると、切換画面の始めの項目がスタートすることがわかって、予定の本編は始めの項目なので偶然問題をかわすことが出来た。開始10分前、生徒さんたちが廊下に集まり始めていた。iPhoneのビデオ出力ケーブルを使って、スライドショーをセット。やっと準備が終わった。持ち込んだ機材は使わないで済んだ。

時間になり生徒さんが席に着き始めた。作品は30分。だから15分が授業の導入として大事な時間となる。私たちは二人のHL体験者と、現役HLひとりと私の各自の自己紹介を行った。その中でも、E さんの就職決定の朗報を届けることが出来た反面、茅ヶ崎の販売者が卒業してしまうのだから、つながりの大きな場面をひとつ失うことになるからだった。

始めに高校生のホームレス認識がどのようなものであるか、その辺を把握していなかったが、E さんの誇らしい報告に対し、拍手はわかなかった。大人(教員9が気がつき拍手して、ぱらぱらとそれに同調する拍手がまばらに起こった。つまり、その出来事の大きさが高校生には想像できなかったことだった。バイトなら少し苦労すればあるという感覚からすれば、HLの就職それ自体の困難さ、障壁の存在がわからないことを表していた。

私は自己紹介から生業紹介を省略した。支援者代表として話し、空いた時間を作品の勘所紹介に使うことにした。大雑把に、ホームレスは生活破綻の課題であり、失業・破産と債務・家族崩壊や、刑余者のような棄民による社会参加の困難の結果なので、不況の時代、解雇、倒産、雇い止め、連帯債務や家族の事故疾病による家族崩壊など私たちのすぐ隣にHL化の問題があること。この作品の中のHLの方は債務と家族崩壊で路上に出て、そこで脳梗塞を発症。半身不随を乗り越えて生活している様が描かれている。自分の思っているHLとよく比較してみて欲しいと訴えた。隣のおじさんなのである。それをよく見てほしいと。

それから予備知識。日本には日雇い労働を求めて、HL化している人たちが集まっている地域がある。大阪の釜ヶ崎(あいりん地区)、東京の山谷、横浜の寿町がそれで、その地域のことを「寄せ場」とか「ドヤ街」と呼ぶ。(どーやのドヤではなく、ヤドの逆のドヤなのだ)ここの大きさはスライドショーの画像に任せることにした。

大阪釜ヶ崎の中に「こどもの里」という寄宿型の児童養護施設があり、その館長さんの荘保さんが取りまとめ役となって、子ども夜回りを行っている。炊き出したおにぎりを巡回して届けながら、HLのひとたちの健康チェックや交流をおこなっている。この活動は、HL襲撃の衝撃的な事件を契機に、実態をしっかり見せておく意味を込めて、差別を超えようとしている。その様子の映画だと伝えた、通じないかなと思いつつ。

高校生が驚くような幼児がHLに語りかける場面に、高校生は次第に引き込まれていった。前回の巡回の感想を子どもに聞く場面で、荘保さんがいたずらして「HLってどんなひと?」と男の子に聞く。すかさず「よっぱらいのおっちゃんやん」と応答が返ってきて、教室のあちこちに吹きだして笑う声が。そうだろうなと思う。彼らは茅ヶ崎駅南口の飲ん兵衛集団をHLと思っている。だから「よっぱらいのおっちゃんやん」に笑ったのだろう。

怠け者、アディクション、無法者のイメージである。彼らと自分とのつながりなど全く考えていないだろう。

よく見ると携帯電話の光に手が照らされている子の3人組が見えた。窓側にもひとりメールを打っていた。ところが、鈴木安蔵さんの段ボールハウス生活と、襲撃に怯える夜間の語りが始まったころから、生徒さんの頭の揺らぎが止まった。川口猛さんの段ボール集めの換金の場面で一日千円にもならないことがわかった時点で、何人かは隣の友達と顔を見合わせたり、半身不随と語る表情が彼らのおじいちゃんとなんら変わらないおっさんであることに、最後まで作品に集中して終わった。明らかに何かが動いた。そう感じさせられた。携帯電話の4人は、携帯電話を閉まったが、私たちの目を欺くような内輪にこもった笑いは消えていた。私は彼らを上映中観ていたが、机の下に視線が落ちたままだが、自分の価値観が問われるような発言の場面になると、明らかに反応していた。つまり彼は聴いている。それが感じられた。

ふと林竹二氏の南葛飾高の授業のことを思い出した。背中で授業を受けていた子が一番彼の授業を聴いて考えていた。そのビデオ画面と眼差しのことだった。教員は期待を込めて、言い換えれば教育に幻想を持って生徒を見ている。もしかしたら全く違うかもしれない。でも彼こそ葛藤の旗士なのかもしれない、そうあって欲しいと考える。貧困と生活苦がこうも多い尽くされている時代には、その姿自身、つまり自分自身の姿が、これほど見えにくい時代も無い。だから、鋭敏な感受性も対象を捉え切れているとは限らない、直感が何者であったかを目を凝らさなければ見えない時代だからこそ、彼らの反応は正しくもあり、見えているか否かということでは疑問符を呈さざるを得ない。彼は聴いている、それのみが真だ。

上映を終えて、彼らはすぐに席を立とうとはしなかった。次回、この映画や提案をもとに話し合うこと、ただそのときに、感想を暖めてきて欲しいことを伝えた。映画の中に出てくる襲撃。となりのおっさんに、お湯かけますかと。

はじめ、オートスタンバイして、上映が始められないことに肝を冷やしたが、なんとかやりとげた。だがEさんは就職したので16日は出席できない。だから懇談はある意味非常事態なのだが、なんとか乗り越えたい。そう思っている。

担当のふたりの教員の皆様、初日、無事住みました。ありがとうございました。


夜間傾聴:橋本2君(仮名)
     橋本3君(仮名)


(校正1回目済み)

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