湘南オンラインフレネ日誌

フリースクール湘南オンラインフレネ学習的就労支援活動・災害ボランティアの実践を書き溜めていきます。

2/18&19 その2 黒田裕子氏懇談講演会の報告 他

2013-02-21 04:43:38 | 引きこもり
2013/02/18&19 記
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(その2)
今回の講演会は、医療・福祉の目で防災・東北被災者の有効な生活支援の見通しをたてていく、その素地となる先進活動と情報を提示し意見交流を行うというノード(結節点)の活動だった。

第一回で県保健福祉事務所の保健予防課の講演をお願いした。この話を口火に、今回の黒田裕子氏の「要援護者の保護と医療・生活支援」を焦点にした

「被災地の災害看護活動から考える生活復興期の支援~災害時要援護者の支援を中心に~」

というテーマを語ってもらった。

訪問災害看護活動の視点に「地域トリアージ」という概念があるという。限界ある人材の中で有効性と効率を考えた、飛田の使い慣れた言葉で言えば「パーソナル・ケア」の「パーソナル」にあたる個々人の状態の個別性を、「適切に分類して対処しやすくする」という、いわゆる「仕分け」のことで、これを地域に適切に対処できるように情報をファイリングしておくという、徹頭徹尾施療者のための行動基礎情報なのだった。

福祉の立場からは、「共感と伴走」というケアの視点が入ってくる。しかし、これは安全避難の後に活きてくる概念だ。災害看護の場では、保護と安全確保ということが第一となる。これは被災から避難・治療生活、生活再建という時間軸のどこの論議なのかということで、内容の重要性の比率が変わる。災害を一括して語ってはいけない。常に時期と場面を意識して考えていかねば見誤る。

黒田さんの説明は、被災時の住民のガードに携わる方の話にシフトしていった。防災構想の大局の中で、どの組織がどのように対処し連携していくのかという点に概括的に触れ、セルフチェックの手法を使って、「あなたは的確な行動をとれるように準備していますか」と問う。この部分の話はさらりと流れたのだが、この論法は基準となる構想をバイブル(真理)としているので、社会活動(市民活動)畑からみると硬直化しているように見える。

社会活動は基本は「探り当てていく活動」、「ひとや現象と対話しながら解決に導く活動」だから、実践と企画更新は一体のもの「過ちを活かしていく活動」ともいえる。いわば「過ち組み込み済み」論、臨機応変性が、組織の遂行論を超える命のようなところでもある。

ところが災害の場合は過ちは命に関わることであって、やり直しは無い。被災後、企画は企画で見直しをされていくが、更新のスパンは長く、固有名詞は消し去られ一般化される。

日常的に災害対処法を啓蒙し、訓練を受けた者が迷える子羊を領導するという基本線に沿って、防災活動は展開されている。

ところがそこに、はまることができない事情を抱えた方たちが「要援護者」なのであって、それを無視して有効性のなたに「ひと」を整形すれば、「ひと」の全体性は失われ、削ぎ落とされた体幹がただ残るだけということになりかねないのだ。「要援護者の保護・支援」とはそういう「ひとの多様性に寄り添う」ということだ。

抜け落ちていくひとたちを保護するために「地域トリアージ」が行われる。そこに「自助・共助・公助」という論が日常待機の枠組みとして登場してくるが、この「自助・共助」が難しいひとたちの防災論、自分らなりの「自助・共助」論が成長しうる防災論はないかと考える。

発想は被災前・被災時・避難生活時・生活再建時という時間軸を意識しないと、ひとを丸抱えした防災論はありえなくなってしまうと思う。災害が去った「避難生活時」について考える場合、救急医療の観点は退き、治療と保健の福祉に近づいた視点が重要性を増してくる。

黒田さんの話は、この後、避難所生活と看護の話へとシフトしていく。茅ヶ崎の避難所は現在8箇所、福祉避難所は3カ所だとの市行政担当者から話が出て、避難所の数について黒田さんから比較的進んでいる地域という評価があり、それでもまだ被災者を収容しきれないだろうという行政担当者の悩みのコメントが入った。

阪神淡路大震災のとき、この「地域サポート」と「地域トリアージ」が行われていなかったために、単身者の孤独死は一千名に及んだ。自殺者も増えるが、生活破綻・病死によるものが主だった。そのことについて、私は意見をはさみ、東日本大震災の被災者の中から既に「孤独死」が始まっているが、阪神淡路大震災のときと同様、「孤独死」が際立ってくるのは被災後数年経ってから、つまり二年目の現在の課題ではないかと黒田さんに問いかけた。

「孤独死」は「地域の絆の問題」だと応答する黒田さんのその視野には、どのような人々が写っていたのだろう。田舎の集落の場合、地縁・血縁の結びつきは濃い。日常生活のプライベートな部分まで、互いに明け透けに見えている。一方、分譲地やマンションのように、広域から集まった「ひと」で地域ができている場合は、隣人を知らないことが珍しくない地域である。一般に後者の地域は否定的に扱われ、「田舎モデル」の地域の絆作りが必要という論のもとに、防災活動が空転する。それは住民の公共意識の浅さなのだろうか。

黒田さんの応答は、教科書通りの「防災・防犯の必要性に基く地域コミュニティ作り」だった。ある家庭は高齢者の介護を抱え、ある家族は週半分は仕事の関係で家を留守にし、ある家族は三交代勤務で夜勤がある。ある家庭は水終売を営み、ある家族は宗教に夢中である。またある家は事情があって単身生活を行い、ある家族は10人家族である。ある家族は、せん妄を伴う若年性認知症の方がいる…という具合に、多様であり、そこには噂や差別による傷つけあいや無理解が潜んでいる。早起きはいいことだ式に、防災コミュニティを当てはめていくのだろうか。民生委員や地域自治会役員によるプライバシーの集中管理おこなわれても、それは相互理解・相互扶助というひとりひとりの自覚的行動育成には直結しないだろう。

この従来型の防災シフトは現在の防災構想が、都市型の特徴である「外出時被災」の、いわば地域コミュニティの手の届かぬところの防災というシステム的な穴を持っていることも、新たな防災ネット論が検討されるべきなのだ。集落の地域コミュニティは、農漁業の社会的生産の背景や、地域が同一職種に属するというような歴史が生み出したものだ。それを安全避難の都合でコミュニティ像を社会にかぶせていくことに、疑問を感じないだろうか。

被災直後、黒田さんはそのコミュニティから独立した職業として、人命救助や安全確保にあたる。避難が済んだ時点からの看護ケアと避難所運営スタッフつぃて、災害コミュニティを立ち上げる。見ず知らずの家族も混じった仮想コミュニティである。

「外出時被災」については、誰も研究経過を語るひとがいない。見知らぬ他者に囲まれた時の被災は、要援護者には過酷な状況となる。

指示が聞こえない聴覚障がい者や、私のような見かけからは健常者に見える網膜色素変性症の視覚障がい者、指示が理解困難な知的障がいや、発達障がい、精神障がい、外国人、指示通り動くことに困難のある妊婦さんや乳幼児連れの親子、高齢者や身体障がい・病人の方なども、集団にシャッフルされてしまう。こうした方を安全避難させ、次に家族と再会させる活動が方法論を持っていないことがあるにも関わらず、みごとにこの「外出時被災」については、論じられることもなく、無視されていくのだった。

災害看護の立場からは、急性期(被災直後)、地域に派遣され地域住民の命を守るという立場からすれば、「外出時被災」は守備エリア外にはみ出してしまう。その意味で、今回の会で数回「外出時被災」について、私は黒田さんに水を向けたのだが、すべて空振りに終わってしまった。

結局、講演は、被災時の「救急医療と災害看護」「避難生活管理の留意点」を紹介することで、災害時の看護師の活動の重要性は語られたが、それは関係者向けの会という意味では、全体像を語るには、漠然と全体のシステムを語るのではなく、逆にピンポイントのテーマの立て直しが不可欠だった。黒田さんには、研修型の語りから経験紹介の語りへの誘いが必要だった。

参加された方を満足させる内容であったかと問われれば、いささか心もとないのだが、「要援護者の保護・支援」が喫緊の課題として、今問われているという感触は感じ取ってもらえたのではないかと思う。

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私は黒田さんの講演と以下のような(すれ違ったが)バックアップを行った。

以下の資料の「河北新報」の記事は、会員登録をしなければ読めないものがある。無料会員登録をすれば読み取ることができる。状況を読み取る大事な記事「☆」である。注目すべき記事は「★」をつけた。是非「☆」の記事は読んでいただきたい。



●「郡山から避難の男性 都内の宿舎で孤独死 死後約1ヵ月」(2/1)
●「被災50代男性2人、雇用促進住宅で昨年暮れに孤独死 八戸

☆「被災地の75歳以上の女性、仮設でこもりがち 厚労省調査」(2/10)
☆「仮設暮らし一層厳しく 仙台の入居世帯、不安くっきり」(1/21)
☆「震災後、けいれん増加 気仙沼市立病院患者」(1/29)
★「要援護者対策に遅れ 災害時全体計画、策定54.3%(宮城)」
★「震災時の周産期医療の実例を報告 岩手・遠野でフォーラム」(2/4)
★「障害者働く場、念願の再建 被災地女川町のNPO、4月にも」(1/23)
●「福島へ介護支援 参加を 府中の有志PR」(2/3)
★「陸前高田市 デマンド交通スタート 広田・小友気仙町対象 自宅と病院・商業地結ぶ」(2/2 過去記事検索で2/2を)
★「「陸前高田の在宅療養を支える会」震災1年11カ月、念願の発足
ケア充実へ連携強化」(2/11)

●「「避難の手助け受けた」は48% 陸前高田の障害者ら」(1/12)
☆「被災地支援センター 岩手県陸前高田市における障害者訪問調査 第一次報告(速報)について」
●「東日本大震災二年目の検証と インクルーシブな復興」


夜間傾聴>**子(父親)

(校正1回目済み)
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