世界一面白いミュージカルの作り方

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音響賞

2013-05-18 23:06:52 | トニー賞
さてさてやってきました最後のカテゴリー。
音響賞と書きましたが英語では Sound Desigh となっています。
このカテゴリーは当然ではありますがミュージカルとプレイで別れています。
このカテゴリー自体が2008年から始まったのでまだ歴史の浅い賞です。
まずはプレイノミネートから。



John Gromada               「The Trip to Bountiful」

Mel Mercier                「The Testament of Mary」

Leon Rothenberg             「The Nance」

Peter John Still and Marc Salzberg     「Golden Boy」


こういう顔ぶれです。もう観たことあっても何がなんだかという感じ。
選ぶ方も何を基準に選ぶんだか。音響について語れるかたが沢山いるんでしょう。


一応参考までに他の賞も・・・・
というか他の賞で音響賞があるのは以下の賞だけ。



{Drama Desk Award Outstanding Sound Design in a Play]


Ien DeNio           「The Pilo Family Circus」

Steve Fontaine         「Last Man Club」

Christian Frederickson      「Through the Yellow Hour」

Lindsay Jones          「Wild With Happy」

Mel Mercier          「The Testament of Mary」

Fergus O'Hare          「Macbeth」

もうこちらなんて本当に知らない名前ばかり。大変だ。

Ien DeNio オフを中心に活躍する女性音響家。
この作品は観てません。他の作品もアシスタントとかで参加してるみたい。
これからの人なんですかね。

Steve Fontaine  音響家でもありミュージシャンでもある方です。
この作品も観れてない。本当にコアな作品がノミネートされるんですね。

Christian Frederickson この方も作曲家でありヴァイオリニスト。
この作品は観ました!
近未来の荒廃したNYを銃撃戦の音や戦況を報告する他言語のラジオ等で表現。
かなり異質な作品で面白かった。ラジオ放送に日本語が混じってて可笑しかった。

Lindsay Jones ロスを中心にアメリカ中で活躍する方のようです。
作曲もするようで映画の音楽なども担当してます。
この作品も見逃してる。何も言えない。

Fergus O'Hare イギリスでの活躍が目立音響家です。
今回はアラン・カミングの「マクベス」。
精神病のサナトリウムという特殊な環境を冷たくおどろおどろしく表現してました。
全体的にタイル張りの部屋が想像できる僅かなリバーブがかかっていてとても効果的。
途中挿入される音楽がちょっと・・・趣味と合わなかったかな。
トニーからは「The Testa・・・」だけがノミネート。
こっとに音響家さんは本当に作曲から演奏までなんでもこなしますね。



というわけで早々と紹介に移ります。




John Gromada               「The Trip to Bountiful」

トニーノミネーションは今回が初めて。
プレイ作品が得意な方のようです。
音響家としてでなく劇版でのクレジットもされているので
作曲家としても活躍しているようです。
今回はプレイにしてはシーン数の多い作品だったので
シーンごとの情景が浮かぶ効果的な環境SEが印象的でした。
バス停や、バスの中、荒れ果てた廃墟など
イメージのしやすい音だったと思います。
ただコンパクトな芝居のイメージにしては
劇場自体が大きかったのでそのバランスを音響で埋めるの難しそうでした。
オーソドックスな仕上がりという感じでしょうか。
これといって目を見張る部分はなかったかな。




Mel Mercier             「The Testament of Mary」

イギリスで活躍する音響家であり作曲家です。
アイルランドの音楽大学では教授を務めているそうです。
彼も今回が初ノミネート。
とても抽象的な効果音や音楽が心情にぴたりはまってました。
観客を敢えて不安にさせる重たい音や繊細な音を
上手く使い分けて一人芝居にめりはりを出してました。
照明と音響のリンクがとても素晴らしく
無駄なく一つ一つが心情のクローズアップとして作用していて
ただでさえ激しい心情の波をより効果的に伝えてました。
抽象的な音を上手く使えるとこういう効果が引き出せるのかと
勉強できた作品です。とても素晴らしかった。




Leon Rothenberg             「The Nance」

彼も今回が初ノミネーションです。音響補としてはかなり活躍している方です。
オンでも今年は「The Heiress」を担当しています。
オフだと今年は「Murder Ballad」を担当してます。
今回はプレイといいながら音楽劇に近かったので
なかなか苦労が多かったのではないかと想像できます。
劇中に歌がいくつもありますが俳優はマイクを付けているわけではないので
伴奏の迫力のなさや声の小ささをなんとか上手く調整していたという印象。
難しいですよね。
それから俳優との呼吸が必要なきっかけが沢山ありました。
一つ一つの動作に合わせておちゃめな効果音をつけたりと
細かい仕事をしていたイメージです。
当時のボードヴィルの生な雰囲気を上手く醸し出してました。
遊び心を感じられてよかったです。





Peter John Still and Marc Salzberg     「Golden Boy」

この二人も今回が初めてのノミネート。
Peter John Still は作曲家としても活躍してます。
今回は作品的に音楽がテーマだったので
蓄音機から流れて来る音楽やヴァイオリンの演奏など
とても印象に残るシーンがありました。
ざらざらした音質が哀愁を帯びて聴こえてきて効果的でした。
ボクシングの歓声や、スパーリングの音など
生々しい音と美しい音楽の調べの対比が
作品の構造を上手く表現できていたと思います。
個人的にはなかなか好みでした。



さて今回はみんな初ノミネート。予想は・・・


Mel Mercier   「The Testament of Mary」


作品への貢献度を考えるとこれかなあ。いい仕事してました。本当に。




さてさてお次はミュージカル部門!
まずはノミネートから。



Jonathan Deans & Garth Helm        「Pippin」

Peter Hylenski               「Motown」

John Shivers                「Kinky Boots」

Nevin Steinberg               「Cinderella」



「Matilda」が入ってません。残念。接戦な気がします。



他の賞も参考にしてみましょう。




[Outer Critics Circle Award Outstanding Sound Design in a Musical]


Steve Canyon Kennedy          「Hands on a Hardbody」

Scott Lehrer and Drew Levy        「Chaplin」

Tony Meola                「The Mystery of Edwin Drood」

Brian Ronan                「Bring It On」

Brian Ronan                「Giant」

Dan Moses Schreier            「Passion」


トニーと何一つ被ってません。なんか凄いですね。

Steve Canyon Kennedy ミュージカルでかなり活躍してます。
「Jesus Christ Superstar」「Catch Me if You Can」「Mary Poppins」「Jersey Boys」
「Hairspray」「The Producers」などなど。あげたらきりがありません。
今回はもうコンサートのりの作品でとにかく歌唱がメインなので
がつんとくるパワフルなイメージでしたね。ちょっとうるさいぐらい。
でもこれぐらい盛り上げないと作品が・・・

Scott Lehrer トニーに4回ノミネートされていて1つ獲得してます。
今期は他にも「Lucky Guy」を担当してます。
Drew Levy 普段は Scott Lehrer の補佐として活躍してます。
やや抑えめなスカスカした印象が全体的に情緒的でよかった。
電気的な増幅感はあまりなく生バンドの良さが活かされてました。

Tony Meola 音響界の重鎮というイメージですね。
「Les Miserable」「Wicked」「Kiss Me Kate」「The Lion King」などなど。
数えたらきりがありません。
今回はやはり生オケ感を意識したやや抑えめの印象。
台詞や歌詞がしっかり聴こえるわかりやすい仕上がりでした。
声自体も芝居に近いナチュラルなイメージです。
一応推理劇ですからね。良いバランスだと思います。

Brian Ronan トニーに3度ノミネートされ1つ獲得してます。
「The Book of Mormon」「Anything Goes」「Nice Wok If You Can Get It」など。
今期は他にも「Annie」を担当してます。
「Bring~」ではかなりがつんと来るパワフルな印象。とにかくビートが凄かった。
「Giant」は逆に上品で繊細。じんわり染み入る印象。
どちらも作品にはばっちりあってました。素晴らしい。

Dan Moses Schreier トニーには3度ノミネートされてます。
作曲家としても劇版などで活躍してます。
今期は他にも「Cyrano de Bergerec」を担当してます。
とても小さい劇場で繊細な生オケミュージカル。
本当に生声ではないのですがとても繊細に生々しいしあがり。
距離感ととてもマッチした設計でした。

トニーとは何か観点が違うのかもしれませんね。



さてトニーの紹介に移ります。




Jonathan Deans & Garth Helm        「Pippin」

Jonathan Deans は2度目のノミネート。
「Spiderman」「Priscilla~」「La Cage aux ~」などなどミュージカルが目立ちます。
Garth Helm は初めてのノミネート。Jonathan の補佐としての参加を除けば今回がブロードウェイデビュー。
全体的にとてもメリハリのある印象でした。
ナンバーごとに繊細さやパワフルな部分がしっかり出ていていいバランス。
全体的に声をしっかり聞かせてくれて
特にリーディングアクターのリヴァーブなどはとても良い塩梅。
魅惑的でセクシーな印象を上手く作れてました。
バランスの良さが評価されたのかな。




Peter Hylenski               「Motown」

ノミネーションは3度目。
「Elf」「Wonderland」「Rock of Ages」など。
もうコンサートです。とにかくがつんときます。
はっきり言って歌詞が聞き取れませんが音圧が凄い。
個人的には聞こえなくてこまったのですが
盛り上がってるからいいのかな。
とにかくコンサート。ちょっとなあ。




John Shivers                「Kinky Boots」

トニーは初ノミネート。
「Bonnie and Clyde」「Sister Act」「9 to 5」など。
これもかなりコンサートののりに近かったかな。
まだ声もしっかりあがってたから良かったけど。
ソロはいいんだけど全体曲のマイクバランスがいまいち。
まあ音圧はしっかりあるし曲調も曲調なんでいいのかな。
作品ののり的にはあれくらいがつんとしてて良かったのかも。
別にどうってわけでもなかったかな。



Nevin Steinberg               「Cinderella」

今回で6度目のノミネーション。毎年1作品んはノミネートされてます。
未だ獲得はなしでなんですね。
「Porgy and Bess」「Hair」「The Addams Family」などなど。
しっかり声を聞かせる穏やかな印象。
音楽自体がそこまで鳴らす作品んではないので
必然的にこうなったのかな。
とても聞き取りやすく優しい仕上がりでした。
コーラスのバランスもしっかりしてて
優等生という感じです。
のりの良い作品でもないのでこういうもんかと思います。
ファミリー向けの作品ですから。


さて最後の予想ですが・・・

Jonathan Deans & Garth Helm  「Pippin」

なのかな。
これと言って決めてがあるわけじゃないんですがバランスの良さですかね。
音響を評価するのは難しいですね。
特に生ものですから毎日きっと印象も違うでしょうしね。
選ぶ人がどう選定しているのも気になります。


というわけで一通り主要部門の紹介が終わりました!!
さて明日は Drama Desk Award
結果が楽しみです。



Drama League Award

2013-05-18 01:55:07 | Drama League Award
Drama League Award が発表されました。
これまでトニー賞の各部門で紹介してきましたが
この賞について詳しく書いてみます。


1922年に始まったアメリカ演劇界で最も古い賞だと言われています。
オンブロードウェイ、オフブロードウェイを観劇する数千人の観客が選ぶ賞です。
この Drama League のメンバーになれば投票権を持てるのですが
これは会費を払ったり過去に作品に参加していればよかったりとそこまで
ハードルは高くありません。ただ観客が選ぶということが趣旨です。

さて今年の獲得作品を観てみます。





[OUTSTANDING PRODUCTION OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY PLAY]


Vanya and Sonia and Masha and Spike


これは納得。嬉しいですね。「The Testament~」にも頑張って欲しかったですが
ブロードウェイらしい順当な結果です。






[OUTSTANDING PRODUCTION OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY MUSICAL]


Kinky Boots


やっぱりね。「Matilda」に頑張って欲しかったけど・・・
ここはニューヨークですから。予想通りでしたね。






[OUTSTANDING REVIVAL OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY PLAY]


Who's Afraid of Virginia Woolf?


こちらも予想通りですね。アメリカ演劇史を変えた作品ですから。







[OUTSTANDING REVIVAL OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY MUSICAL]



Pippin


こちらも当然。今年はこれしかないでしょう。







[DISTINGUISHED PERFORMANCE AWARD]


そしてトニー賞とはカテゴライズが違うので説明しますが
俳優に送られる賞は以下の賞です。
こちらはノミネートはプレイ、ミュージカル、オン、オフ、男性、女性に関わらず
全ての作品から何名もノミネートされます。
因に今年は60名をこすノミネーション。
この中で一人だけが選ばれます。
しかもこの賞は一生に一度しか貰えないそうです。
さて今年の受賞者は・・・



Nathan Lane   「The Nance」


むしろ今まで貰ってなかったんですね。
おめでとうございます。タイトルロールでしたからね。



あとはいくつか特別賞がありますが今日発表されたのは以上です。
だいたい予想通りかな。
さて明日のDrama Desk Award が楽しみになって来ました!