世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
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すっかり秋

2012-10-16 01:56:49 | tiptap
朝は息が白むようになってきました。
夜はなんだか暖房が作動しているようです。
暖房といってもエアコン的なものではなくて
物凄く熱いお湯がパイプを通過していくやつ。
なんか一定の温度より外気が下がると作動するらしく
勝手に操作する事はできません。

さてさて一週間はあっという間ですね。
週末は色々と疲れてしまってブログ書けず。
いかんいかん。

前回はエビータまででしたかね。
それ以降の観劇は

SILENCE!
HOLD THESE TRUTHS
Dispatches from (A)MENDED AMERICA
ONCE
SCANDALOUS
GRACE

結構観ましたね。
とりあえずざーっとですが感想を書きます。


SILENCE!

「羊達の沈黙」の完全なるパロディーミュージカル。
OFFの作品ですが本当に小劇場感満載でした。
まさにナンセンスコメディーミュージカルですね。
とても面白かったです。
演出がNEWSIESの振り付けの人なんですが
くだらないことが本当によくできていて
映画を知ってる人は本当に何から何まで面白いし
知らない人でもあまりにも滑稽なので笑ってしまうでしょう。
NEWSIESよりも良い仕事してるなと心から思いました。
ただこのノリが難しいところでして
ともすればくだらなすぎて下品でやや引いてしまう可能性もあります。
こんなパロディーが作りたくて「ゴン・ヴァルジャン」をやったのですが
さじ加減が難しいですね。
こっちのお客さんは基本的に楽しんだもん勝ち感大ですから
ちょっとあれって思っても気にしない大雑把さがあります。
いいんだか悪いんだか。
でもとにかくこの作品は一つの成功型ですね。
フリンジで賞を取って世界各国で上演してますが
やはり日本だと受入れられるか・・・とのことで上演にはいたっておりません。
日曜マチネでキャストがアンダーだったためもう一度観たいなあ。


HOLD THESE TRUTHS

この作品はゲネを観劇。
これもOFFの作品でストレート。
戦時下の強制収容された日系人のお話。
実在の人物をモデルにした一人芝居でした。
このモデルの方はオバマ大統領から功績がみとめられて勲章をもらったそうですが
今年の始めのほうにお亡くなりになってしまったそうです。
こちらで紹介して頂いた舞台美術家さんのご厚意で舞台稽古から見学させて頂いていたので
色々と発見もありました。
テーマがテーマなだけに一人の日本人としてアメリカのNYでこの作品を観るという
なんだか不思議な経験に感慨深いなあと。
とてもシンプルで繊細に作られていて何より俳優が素晴らしい。
ある意味全てモノローグですが要所要所で違うキャラクターになったりして
なんだか落語を観てるみたい。90分でしたが本当に内容の濃い作品でした。
舞台が本当に客席に近いもんでとても空気が感じられてよかったです。


Dispatches from (A)MENDED AMERICA

この作品は上記のHOLD THESE TRUTHSと同じ劇場で日替わり上演される作品。
これも舞台稽古をみてゲネを観劇。
同じ劇場ですから同じセットを使う訳で客席などを組み替えて使ってました。
内容は「黒人大統領の実現があなたにどう影響を与えたか?」という
実際に行ったアンケートを元にこの作品の上演に至る過程をドキュメンタリー的に
みせて行くものでした。俳優達自身が実際にアンケートやインタビューを重ねてそれを元に
脚本を書き上げたとのこと。凄いですね。
人種問題。
なかなか日本にいると知らないふりしてることですが
こっちは日々感じる問題。
とても難しい問題ですが現実にある問題。
目をそむけちゃいけないなあ。
この2つの政治色の強い作品を上演しているカンパニーは
政治色が強いカンパニーなんだそうです。
学校やなんかと提携してこういった社会派の作品を上演してるとか。
なかなか面白いですね。文化の違いを感じます。
まだゲネだったのでこれからプレビューを経て色々変わって行くのでしょう。

大学の卒論で劇場のメディアとしての力を論じたんですが
小さなメディアとして劇場を捉えて体験させることで情報を伝達する事が可能ではないか。
ブレヒト的発想ですが未だに海外では根付いてますね。
最近は日本ではあまり社会派作品がうけなくなりました。
昔は演劇って左とか赤って言われた時代ありましたけどね。
近頃は心の闇とか人間の醜さとかなんだか個人の内面が取り上げられる事が多いです。
これも文化の差ですね。社会的な問題に苦しむ人が少ない幸せな国という捉え方も出来ます。
それはそれであながち間違いではないかも。



ONCE

2012年のベストミュージカル賞を取った作品。
ずっと観たかったのですがなかなか納得できるチケットが取れずに
高額だったしずるずると観れなくてやっと観劇。
「ONCE ダブリンの街角で」という映画のミュージカル化作品。
映画はアカデミーの歌曲賞を取ってるそうです。
実は映画もずーっと気になってましてね。
昔からアイルランドには縁を感じてまして
Tipの旗揚げ公演はアイルランドが舞台だったし。
なんか気軽に観る気になれなかったんですよね。
そうこうしてる間にミュージカル化ということです。

う~ん。

素晴らしかった。こっちにきて一番感動した気がする。
最後は久しぶりにきちんと泣いた。

ただミュージカルを観たというより芝居を観たという気になった。
作品を通してそこにあるのは芝居の空気でしかない。
歌う事自体がドラマの中に組み込まれて出来事になってるからだと思う。
意味のある歌である。これならタモリさんも文句が言えない。
実際にキャラクターが歌っている時間でしかないから。
厳密に言えばこれは音楽劇なのではないかと思う程だ。
音楽劇とミュージカルの定義は僕なりにそれぞれありますが
それについてはまたいつか書きます。
音楽は全て出演者が演奏してそれぞれの楽器を持ったキャストが
ステージの両脇に座っている。
セットはいわゆるアイリッシュパブを模したようながらんとした空間で
とくに大掛かりなセットもない。あるのはカウンターとテーブル、椅子ぐらいである。
前から5列目ぐらいだったため本当に空気を感じられてよかった。
このような作品は変に拡張されて欲しくないなと思う。
この作品実はPeter And The Star catcherと同じでNewYorkTheatreWorkshopで生まれた作品。
同じところからBestPlay(ノミネート)とBestMusicalを出すなんて凄いなあ。
ステージングは同じ人でした。
本当に楽器をあんなに上手に演奏できる俳優達に感服する。
まさに生の空気がそこに生まれる瞬間を共有できるのがすばらしい。
これが演劇だと思う。設計図にのっとってただ作業をするんじゃない。
瞬間を生み出して行くんだ!!
開演前には舞台上は解放されてて観客は舞台上でお酒を交わしながら俳優達のセッションに耳を傾ける。
なんて素敵な時間だろうか。
こんなに素晴らしい作品でも気になる所をみつけてしまうのは嫌な事である。
ちょっとだけ腑に落ちないのは何カ所かのステージング。
これだけ演劇的に作ってるのに何故かステージングだけやや抽象的に感じてします。
転換諸々の動きはいいのだが少しショーアプした感がある部分が惜しい気がしてしまう。
割り切って削ぎ落としても絶対に空気が物を言うのにと思った。
でも二階席から観た人には効果的だったかもしれないからまあなんとも。
それにしても本当によく出来た作品だった。さすがトニー賞。
俳優も素晴らしい。残念ながらヒロインがアンダーだった。
オリジナルキャストで観たいがお財布的に難しいだろうな。


SCANDALOUS

これは人生初めてのミュージカルプレビューのオープンを観劇。
開演前に演出家が出て来て挨拶してました。
なんだかBroadwayってこんな感じなんだって感心。
はっきりいってお祭りみたいなもんですね。
きっとお客さんの半分以上は作品が良い悪い関係なく楽しんだ事でしょう。
いちいち拍手でとまるとまる。
さすがプレビュー初回とのこともあり照明は色々問題有りでした。
ステージハンドの漏れ明かりも多々ありましたがなんとか最後までいきました。
主演女優が凄いなあ。Carolee Carmelloという人なんですがトニーに二度ノミネートされてるみたい。
主人公の高校時代から30代後半までを演じるんだけど
まあ最初から最後まで声を張り上げて歌う歌う。
こんなに押して押して押しまくって2時間半は本当に大変だと思う。
内容は今では世界中に信者のいる実在する女性宗教家の話。
初めてラジオを布教に使った人らしくアメリカ大陸を10回以上布教て横断したり
ロスに礼拝レビューショウのためにスタジアム寺院を作ったりとまあ凄い人なんです。
あげくには既婚者との情事のために誘拐に巻き込まれたと狂言を起こしたり。
そんな人生を描く訳です。
まあ内容も演出もそこまで魅力的ではなかったですが
音楽がゴスペルを基本にしてるのでとてもパワフルで元気が出ます。
まあ似たような曲が多くなってしまいますが
元気が出るのはいいことです。これからプレビューを経てどう変わって行くのか楽しみです。
オープンしたらまた観たいですね。



GRACE

こちらは宗教をテーマにしたストレート。
話の内容自体ははっきり言えばよくあるはなし。
宗教に熱い主人公が色々あって目先の利益を優先するようになり結局全てを失い人を殺してしまう。
まあその間に妻を隣人にとられたり夢に破れたりだなんだってあるわけですが
内容はよくあるある。
でもこれをとても面白くしてるのは脚本と演出がうまく絡み合ってるからなんだろうなあ。
物語は最後のシーンから始まる。
倒れている出演者達。
それが巻き戻されそれぞれが死ぬ瞬間が次々に見えて来る。
とても面白くショッキングな瞬間である。この巻き戻す演出もなかなか面白い。
少しだけ滑稽にも見えるがとても印象的だ。
それから舞台は物語の最初に戻る。主人公が妻と幸せに暮らす最初に。
何が面白いってセットが有機的に常に芝居に絡んでいる所だ。
セットは夫婦と隣人の部屋を兼用して使えるように家具が配置された盆。
その外にとても細い外盆がありそこにドアと窓がある。これも兼用。
そしてそれぞれの生活が同じ盆の上ではあるが別々の空間に見えてくる。
別に決まった家具を使う訳でもなく兼用であるにも関わらず
それぞれの生活が見えて来るのだ。とても想像力を使わせで面白い。
舞台奥には大きな楕円の額縁があり中のスクリーンには空がある。
常に雲が流れ星がみえたりとささやかながら変化がある。
このささやかというのがみそでシーンの中で内盆が気づくか気づかないかのスピードで
ゆっくり回転していく。時間の経過とともに。そして気づけば空間が変わっている。
とても面白い体験である。俳優の横顔をみていたはずが気づくと反対側の横顔をみている。
常に有機的にセットが動いている。
それが嫌らしくもなく主張もせず控えめなのがいい。
色んなことを想像させる。
全体的にとてもスタイリッシュで面白かった。
ただシーンの最中はいいのだがシーンとシーンの間にある転換がちともったいなかった。
なぜか転換はあんまりまとまってなくて明かりと音で誤摩化してるだけの様な感じ。
もうちょっとみせる転換にしてもいいのになあというのが感想。
90分で休憩なし。面白かった。ストレートの空気感はやぱりいいなあ。


まあ今回はこんな感じでした。
なんだかストレートプレイの方が多くなってきましたね。
新作がそろそろ増えて来るので楽しみです。
顎が痛い毎日ですがめげずに頑張らねば。
今週はオフのミュージカルの現場を見学中です。
また色々と発見できて面白いですね。

ではまたそのうち書きます。