“昔、行きつけだった蕎麦屋の店先には小さな狸の置物があって、いつも服を着ていた。ある時は浴衣、ある時はサンタ、ある時はなんとかレンジャーのTシャツといった具合だ。全て店主の息子のお古で、季節ごとに着せ替えられる。それがちょっとした楽しみだった。
麺が美味しくてお気に入りだったが、私の引っ越しにより自然と足が遠のいた。今日、約二十年ぶりに店を通りかかると、当時のまま狸はそこにあった。裏口から小さな女の子が走ってくる。それを追って男性が出てきた。狸が着ているのはフリルの付いたピンクのワンピース。
着せ替えは受け継がれたらしい。さて、蕎麦はどうだろう。私は期待を込めて暖簾をくぐった。”(8月13日付け中日新聞)
「300文字小説」から愛知県田原市の主婦・川口さん(40)の作品です。町中のこうした置物は楽しいものである。通りを行く人に楽しんでもらおうという、その家の人の思いやりが感じられる。着せ替えには結構工夫が要る。この店の人は息子さんの古を活用されている。
ボクの隣村にハッとされられるような野良着姿の案山子をおいている家がある。全く上手にできている。ボクもそれを楽しんでもらおうと、数年前から道路際に案山子をおいた。ただ手を上げて立っているだけの案山子である。楽しみにしていると言われて嬉しくなったが、それからが結構苦労である。年に数回だが着せ替えをする。多くはボクの古着を使うが、ネットで顔の面も買ったし、サンタクロースの衣装も買った。そろそろ次の着せ替えを考えねばならない。先日までトランプ大統領の面であったが、次は誰の面になるだろうか。こんなことを思ってくれる人があったらボクも嬉しい。これもボクの楽しみだ。余生はいろいろなことを楽しもう。
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