天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

宇奈月温泉

2014-07-04 | Weblog
 宇奈月温泉をご存知でしょうか?
 富山県の黒部峡谷沿いにある古くからの温泉です。

 宇奈月温泉と聞いて何を思い出すでしょうか?
 行った事のある人は、その時の事など思い出すでしょう。
 行った事がない人でも、宇奈月温泉を舞台にして起こった裁判を
 思い起こす人もいるかも知れません。
 僕もその一人です。

 今はどうか分かりませんが、
 僕が法律を学んでいた頃は、民法の最初に総則を学び、
 その中でも最初の頃に出て来るのが、
 宇奈月温泉木管事件と呼ばれる判例でした。

 宇奈月温泉の源泉である黒薙温泉から宇奈月まで約7kmにわたって、
 断崖絶壁の間を流れる黒部川沿いに、
 木管(引湯管)が設置されていましたが、
 その木管が通る、2坪弱の土地について
 土地所有者の了解を得ていなかったため、
 土地の所有者から木管の撤去を請求された裁判でした。

 この木管が通っていた土地は、元々原告の所有地ではなく、
 無断で木管が通っている事に目を付けた原告が、
 当該土地を30円程度(坪あたり約26銭)で買い取り、
 所有権を取得した上で、
 土地所有権に基づき木管の撤去を請求したものです。

 これに対し、1935年(昭和10年)10月5日、
 当時の最高裁判所に当たる、大審院は、
 本件の土地が急斜面の荒地であり、
 原告の請求は自己に何らの利益をもたらさないのに対して、
 木管を撤去すれば宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えるとして、
 原告の請求は、
 社会的に許される所有権の目的に違背して権利の濫用であるとの、
 判断を下したものです。
 この判決は、権利の濫用について、初めて判示した判例として有名です。

 宇奈月温泉のHPを見ると、
 現在は、事件の現場に記念碑が建っているようです。
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4 コメント

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Unknown (井頭山人)
2014-07-07 11:58:34
お元気ですか、お久しぶりです。
そうですか、宇奈月温泉では、一種の詐欺事件があったのですか。世の中には抜け目の無い、強欲者が居るもので、新幹線や高速道路の計画を早めに聞きつけて、該当の土地を購入しておく政治家も居る世の中です。勿論自分で購入などしません、関係を知られない知人に購入させるのですが、まあ、倫理上不正なインサイダー取引といえましょうね。

民事の法令も、色々な興味を引く面白い判例も有るのですね。法律を専攻でもしない限り、余り判例集など読みませんから、知らない事例がおおいです。なるほど、あからさまな「権利の乱用」に違いありません。公正という概念を逸脱していますから、権利と義務、自由と自律、共生と奉仕、など、倫理的な社会意識が崩壊しないようにしなければなりませんね。
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有難うございました。 (天然居士)
2014-07-17 18:46:59
井頭山人さん お久し振りです。
コメント有難うございました。

この話は、法学部の学生ならば誰でも知っているかも知れません。
もっとも今の法学部でどのように教えているか分かりませんが^^

ご指摘のように、今の世の中基本的な倫理が崩れつつあるような気がします。
拝金主義がはびこっているからかも知れませんね。
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Unknown (井頭山人)
2014-07-18 09:32:17
拝金主義ですか、仰る通りですね。世の中には金より大事なことがある事を教えません。総じて日本人の庶民の生活意識は、どの様な変遷を経て、今日に至っているのでしょうか?この辺にいくらか興味があります。以前にもお話に出ましたが、旧石器時代・縄文時代以来、自然崇拝を下敷きにした感じ方が土台に有るのかもしれません。8万年以来この極東の孤島に住み続けた私達の祖先は、自分たち自身も、この大いなる自然の一部である事を知っていたのではないでしょうか。現在よりもモット切実に、知識としてではなく体験として。日本人の伝統的な信仰は、世界の範になるものだと思います。勿論、一神教ではないし、多神教と云っても、厳密に言えば単なる多神教でもない。この起源は古事記・日本書紀よりも、モット・モット古いものです。無文字時代ですので、記録が残りませんが、縄文には確かにそれが息づいていた。ですから国学は、どうしても記録に残る古事記あたりから始める外に方法が無かった。もしも、原日本人の心を探るには、神道の原型を探る以外に無いような気がします。ではまた…
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有難うございました。 (天然居士)
2014-08-28 18:14:45
井頭山人さん 再度のコメント有難うございました。
お返事が遅くなって申し訳ありません。

原日本人の心、どのようなものだったのでしょうね。
国学は江戸時代から始まりましたが、果たしてそれで古代が明らかになったのかは少し疑問かと思っています。
真面目過ぎるような感じでしょうか?
平田篤胤辺りになると、狂信的な感じもします。
縄文時代の土偶などを見ると、大らかな感じがします。
僕も少し勉強したいと思います。
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