古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

おお! ブローベルとなりて    フィリップ・K・ディック

2021-02-28 11:04:44 | 小説の紹介

浅倉久志・訳   「ディック傑作集2」所収。

 

ハヤカワ文庫 ギャラクシー誌1964年2月号

 

ぶよぶよのゼリー状のいきもの、ブローベルに人間の

 

ジョージは生きている時間のうち、数時間ブローベルに

 

なってしまう体になってしまう。それは戦争のためで、

 

その反対にブローベル人の女、ヴィヴィアンもそうなっ

 

て一日のうち、数時間人間の姿になる、それが結婚した

 

ので生まれる喜劇というか悲劇というか。

 

全体的に明るくて、ユーモアに満ちていて、楽しい感じ

 

だが、本人は戦争の無意味さを訴えたかったらしい。

 

戦争をしているうちは人間は未熟である。そして、未熟

 

なのが人間であるのだが、いつか、そこから脱して、真の

 

平和を手にするだろうことを願う。……合掌。

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或阿呆の一生    芥川龍之介

2021-02-24 02:25:59 | 小説の紹介

「河童」所収。    集英社文庫

 

ミニマリズムにあふれた作品かもしれない。短いセンテンスの

 

中にイマージュや信念が入りこんでいる。

 

「人生に飽きている」と自殺の理由を述べているが、三十代後半

 

ボクも人生に飽きていた。人生に疲れていたし、もう人生なんて

 

飽き飽きした、と思っていた。その頃、丁度、本も読まなくなっ

 

ていたし、本当の意味で人生のどん底だった。いや、どん底と言

 

えば、二十代はずっとおみくじは大凶だったし、いろんな人にい

 

じめられてタイヘンだったが、タイヘンすぎて、死のうと思った

 

ことは不思議となかった。二十代のころは、37で死ぬとずっと思

 

っていた。

 

それから、40にバイトもやめてカフェを開いて、ちょっとよくなっ

 

てきて、本も読むようになったら、世界にはしらないことはまだ山ほど

 

あると気づけた。死ぬのはバカらしい、生きてみよう、と思った。37

 

で死なないでよかった。死んでいたら、今の景色は見られなかっただろ

 

う。芥川氏もタバコもやめて、もうちょっと狂人のたのしさを味わえたら

 

良かったのに、と思うのだが。……合掌。

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縞模様のライオン      鶴岡 卓哉

2021-02-23 10:21:40 | 詩・ポエム

縞模様のライオン  



深く沈んだところで響いてる縞模様のライオンの吠え声

社会の掟で死を迎える俺

ヤツは裏世界を牛耳るキング

今日は生きぬいたが

明日は縞模様のライオンの吠え声を聞くかもしれないぜ

縞模様のライオンは世界の終わりを意味するんだ

世界ってのは〈生きてる〉を指すんだけどさ

深い底には縞模様のライオンがいて、俺たちの肉を貪り食うんだ


おい! 今日は本間のマグロを食わせろ! カリカリには飽きたからな!
(2018年に亡くなった飛び丸)

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電気蟻     P・K・ディック

2021-02-21 14:08:55 | 小説の紹介

「ディック傑作集2」所収。   ハヤカワ文庫

 

右手が事故でなくなったことで、自分が電気蟻と呼ばれる

 

アンドロイドだったことが判明したプールさんがはまり込

 

む悲劇。

 

ここで、テープリールに穴が開いていて、現実を認識する、

 

とでてくるが、昔は、コンピュータはテープで電算してい

 

たので、そのせいかと思われる。

 

やはりSFはSFだな、とおもうのは、こんなスマホだ、YouTu

 

beだを発想していた作家はなかなかいなかったのではないだ

 

ろうか。いかに現代が未来化している、リモートにしても

 

そうだし、それも自然な流れでそうなっているので、びっく

 

りしている余地がないくらいだ。リモートって言ってビック

 

リする人いないもんな。

 

量子コンピュータができれば、人の言葉で話すコンピュータ

 

不自然なく、自分の人生を語れるコンピュータがでてくるのか

 

もしれない。……合掌。

 

 

 

 

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ピアニストの猫のうた      鶴岡 卓哉

2021-02-20 10:57:01 | 詩・ポエム

ピアニストの猫のうた  



ベッドサイドのテーブルの上のアルコールは減り続けている

ドラムに合わせて指をコツコツと叩いている

最近というか、ずっと調子が出なくてね

ピアノは鈍く光るマジックををあなたにかけて、ド♯の音で

僕の隣には猫が尻尾を振りながら虚ろな歌をうたう
もうできない、と否定的な趣旨の歌詞だよ

君の言うことは正しかったかもしれない、素晴らしい時はいつも永遠の4/3

心配しないでいいよ、僕のことはだけど

とにかく、あの雑然とした興奮の中で過ごした日々のことは多分凄いことだった

君は風の吹くサキソフォンのように吹きまくり

あっという間に消えていなくなった

僕の元には君の拾った猫が一匹、ピアノの習得に余念がない

まるで僕の学習意欲のなさを笑い飛ばすかのように

まるで君が僕の為す術もないできごとを平気でやって笑い飛ばすかのように

猫の歌ううたは〈ドミソファラシドレ〉自由自在さ



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ベニー・セモリがいなかったら  フィリップ・K・ディック

2021-02-19 09:07:14 | 小説の紹介

大瀧啓裕・訳  「ディック傑作集2」所収。

 

ギャラクシー誌 1963年12月号

 

ベニー・セモリとは架空の新聞社がでっち上げた

 

政治運動家の名前。プロパガンダのことを描いて

 

いるとおもうのだが、なにもかもでっち上げのシ

 

ステムの社会っていう。

 

P・Kはマルクスも誰か三文小説家が考え出したも

 

のかも、と妄想していたらしい。

 

世界はもしかしたら、誰かがつくりだした虚構で

 

しかも、情報それ自体も、つくりあげられたもの

 

だとしたら……。

 

念じたらUFOが見えるとしたら、この世界はフォロ

 

グラフ的なものとなっている確証かもしれない……

 

などと妄想するおれっちだった。……合掌。

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散乱7933        鶴岡 卓哉

2021-02-18 10:07:42 | 詩・ポエム

散乱7933  



放射される運命

影に隠れた死体の影の怯え

その犯罪者の心理は猥雑な台所の水垢

君は息をする屍のように柔らかだ、そして、硬い

復活した言葉の海の反乱の燃ゆる炎

その連結しない言葉は何を意味するのか?

分からないのは君が嘘をつくことだけだ

眼鏡の奥のその瞳に何が映像として反映していくのか

その刻は真実に触れるのと同じような甘美があった

捨てるのだ、全てのものを捨てろ!



松木謙蔵さんの著書のタイトルにもなった「白木槿(しろむくげ)」

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人間らしさ    フィリップ・K・ディック

2021-02-17 21:10:24 | 小説の紹介

「ディック傑作集2」所収 スタートリング・ストーリーズ誌1955年冬季号

 

レクサーⅣから帰ってきた、レスターヘリックは別人だった。本人

 

のいうところの人間とはなんぞやの答えがここにあるという。それ

 

は人に親切であれ、という気質であるらしいのだが。

 

そして、本当にレスター・ヘリックはうっちゃられてしまうのだ。

 

どこかで生きているらしいのだが、ジルはレクサー星人をとった。

 

そうだよ、女の人はきつくてやりきれない人より優しい人がいいの

 

だ、とP・Kは考えているようだ。それは、人間らしさ、というより

 

生物の持つ本質というようなもののようである。でも、レスター

 

・ヘリック氏にはそれがなかった。実に人間味の欠けた人物だった

 

というわけである。

 

どこで生まれようが、どこの生物だとかは関係ない、ネコでも犬でも

 

穏やかなのがいちばんよい、ということらしい。……合掌。

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自動工場    P・K・ディック

2021-02-16 11:37:23 | 小説の紹介

「ディック傑作集2」所収。  ハヤカワ文庫

 

ギャラクシー誌 1955年11月号

 

ディックの短編のその驚愕すべき点は、今、読んでも

 

まったく古びていない、というところ。この自動工場

 

は、一番ストーリーが読み取りにくかった。でも、世

 

界観というか、文明論的なものも読み取れて、おもし

 

ろかった。

 

この作品でもロボットが自立して、その進化をロボット

 

それ自体でコントロールする様が描かれている。このモ

 

チーフがディックは好きだったみたいです。

 

そして、ボクとしても、鉱物的なものというのはドキドキ

 

するものだ、マア、ボクは、だけど。….…合掌。

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エレガントな象    阿川弘之

2021-02-15 22:59:43 | 本の紹介

続々 葭の髄から  文春文庫 平成19年4月

 

WWⅡについて、省察したりした本というものも今や、

 

貴重になってきた。阿川提督は日本という国について

 

考えていたし、憂えていただろう。

 

天皇の後継者問題にしても、考えられただろうし、広

 

島に落とされた、エノラ・ゲイについても。このエノラ・

 

ゲイというのは、パイロットの母親にちなんだものだと

 

いう。

 

一読するだけだと、わかったような、わからないような

 

文章だが、趣があって、奥深い味わいのある文章だ、と

 

思う。誰もが書ける文章ではない、語り口。

 

エレガントな象、とは娘さんの佐和子さんの甥っ子に

 

英語を教えていて、私のような人よ、というのに答えて

 

象(エレファント)とエレガントを掛けた言葉を、という

 

説明は、まったくいらなかったですね、無粋でした……

 

合掌。 

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