古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

満潮      村田沙耶香

2022-09-15 09:33:10 | 村田沙耶香

ちくま文庫    2019年   「変半身(かわりみ)」所収

 

この物語は夫婦で潮を吹こうとする話とお見受けした。

 

「潮」といって思い浮かべるのは、先年亡くなった紅音ほたる女史

 

だろう。誰が何と言おうと「潮」の先駆者だった。彼女を超えて

 

潮を吹く人を見たことはなかった。その後、いろいろ技術的に

 

潮を吹く人はたくさん出てきたが、彼女の「潮」を見たときの

 

衝撃は超えられなかった。

 

それにしても、村田女史は男の体の仕組みを知っているのだろうか。

 

論理的に言って、男は射精じゃない、潮は吹けないだろう。

 

女性は潮を吹く時もあるが、そのあと、気持ちが悪くなったり、

 

あまり気分のいいものではないと聞く。

 

そりゃ、ぼくだって、「潮」を吹けるんなら、吹いてみたいという

 

気持ちはないではない。しかし、それは文学的な、「伝説」だろう。

 

              (読了日 2022年8・21(日)19:28)

                      (鶴岡 卓哉)

 

 

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丸の内魔法少女ミラクリーナ    村田沙耶香

2020-08-25 03:42:22 | 村田沙耶香

角川書店   2013~19年

 

これはSFというジャンルに属するのか? いや、

 

いつも村田女史は未来を志向している。

 

いつもこれからのセクシャリティについて考えている。

 

時に、それは感情問題について、だったりする。

 

「怒」について、言及した、変容。「性別」について

 

ストーリー化した無性教室。

 

36歳になった今も、魔法少女になることをやめず、ついに

 

現実が理想を超えていく感動すら覚える表題作の丸の内魔法少女

 

ミラクリーナ。

 

「怒」はコントになってしまっている。いや、それは悪いと

 

かいうんじゃないが、装置として、小説というものが劇場化して

 

いる。誰も奪えないだろう感情を失ったとき、人類はどこへ行く

 

のか? 「狂気」に満ちた世界で彼らは純然たる「正義」を見る

 

のだ……合掌。

 

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生命式       村田沙耶香

2020-08-04 15:24:10 | 村田沙耶香
河出書房新社      2009年~2018年

人間が人間をたべることは現実にはむずかしいらしい。

そういう死体をたべる部族もいたらしいが、みんなゲラ

ゲラ笑って狂ってしまったという。という、遺体をたべる

慣習のある世界を描いた生命式で幕を開ける、新たな

伝説となる短編集。

これはただならぬ短編集だ、と肝に銘じて、読み進める

が、どういうわけか、半ばくらいで、どーでもいーわ、読書?

そんなことどーでもえーわ的な気分に陥ってしまった、が、

後半は一気よみした。

「街を食べる」では、これまでの読書体験では得られなか

ったスリリングな文章でよませる。

コンピュータの内臓をみるような、ちょっと逆説的な見方

かもしれないが、そんな感じを抱いた。

性欲、セックス、物欲、料理といった、人間の根源的なこと

に村田女史の目はとことん優しく注がれてゆく。

ボクも村田女史の胸の中で、文学という胸に抱かれ眠り

たい、と狂気的に思いつめるのだった……合掌。

                 (鶴岡 卓哉)

























































    
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となりの脳世界      村田沙耶香

2019-08-11 11:38:47 | 村田沙耶香
朝日新聞出版     2018年



いろいろな小説のアイデアの元となったであろう原初体験的な


記述も見られ興味深いテクストになっている。


読んでいて、単純に楽しいし、エッセイストとしてもかなり優秀


なのではないだろうか、沙耶香さん。


小さいころについて、では初恋の原初体験で壁に心臓を埋めたと


語り、日常について、ではボクが一番面白く感じたのは、こそそめ


スープのはなしだ。コンソメじゃなく、こそそめ。すまん、じゃなく、


すまそ、みたいな? 好きなことについて、では、コンビニエンス


ストアに対してラブレターが書かれる、うーん。最後の散歩、旅す



ることについて、では、架空の相手とのデート、いや、この人にとっ



てはホントにデートしたのかもしれんが、や、スリランカへの思い出



深い旅行記が読める。



四つの章に分かれていて、村田ファンならずとも必読のエッセイ集でし



た(あんまりおもしろくない書評で、すいませぇぇぇんでしたッ!)………



…合掌。


                       (鶴岡 卓哉)   

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地球星人     村田沙耶香

2019-07-29 22:02:36 | 村田沙耶香
新潮社   2018年


秋級(あきしな)をメインの舞台に繰り広げられる、ポハピピンポボビア星人


の苦闘。


ボクも地球星人になる前は、宇宙人がやってきて、この地球から連れ出してく


れると信じていた。でも、今は地球星人なので、宇宙人はいないし、ボクを連



れだしてくれるプランも存在しないことを洗脳されてしまった。


ボクがとち狂っていたころは、たしかに、宇宙人は存在したし、いろいろはな


しをしたよ。いや、とち狂っていたのではなく正常だったのか、今がとち狂って


いるのかもしれないしな。


けど、この作品がカニバリズムで終わるとは思ってもいなかった。人間食いの歴史は


古く、中国ではよく食べていたと聞く、開高健師匠もカニバリズムに興味があったら


しく、書いておられた。


究極の美食は人間だ、と常々ボクは思っている。でも、食べようとは思わんが。


それはあくまで文学的文脈上での話だ。


村田さんはこの作品を書いて更に浄化されたことだろうと思います。人を救うとは


どういうことなんでしょうねえ………………合掌。


                              (鶴岡卓哉)
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きれいなシワの作り方~淑女の思春期病   村田沙耶香

2018-09-21 14:45:01 | 村田沙耶香
マガジンハウス   2015年8月


こういう女性向けの本がボクはけっこう好きで読んだりすること


が多い。


この村田女史が三十五歳前後に書かれていて、その年頃に陥りや


すい悩みについて書かれている。


ボクが読んだとて、共感できるわけじゃないが、顔だけげっそり


していって、腹ばかり出てくる、とか、そうなんだよな、と思い


ながら読んだ。


村田女史は歌舞伎町のコンビニで働いたことがあるそうである。


村田女史は、「サマーぶってるスプリング」なんだそうである。


その意味についてはよくわからんのだが、そういうのが似合うら


しい。


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授乳     村田沙耶香

2018-09-19 05:14:08 | 村田沙耶香
講談社文庫    2005年2月



「授乳」は第46回群像新人賞を受賞した、デビュー作である。


無機質な赤ちゃんプレイをするって話しである。


中学生にして、プレイ好きとは………やはり、沙耶香嬢の描くデビュー作に


ふさわしい題材である。


「コイビト」は、ギンイロノウタに続くようなもの、ものへの愛を描いたもの


だと思うが、それは人ではなく、人形は人形として描かれているように思う。


最後を飾るのが、「御伽の部屋」と題された、女子大生と同じ22才のいっけん


きちんとして見える男に、世界を依託するのだが、それを裏切られるといった


ストーリーである。


この作品で一番良かったのは、冷蔵庫を開けて、ゆきが自分の頭にケチャップを


かけるという場面である。世界を拒絶する表現にこういう手段があるとは、クレイ


ジーさんは天才だ、といいたくなる。


ヘンタイ要素満載で、ボクらはこういうのが読みたくて、こういう作家を待っ


ていたのだ、とこの後に続く、天才的作品を読んで思うおれっちなのだった。
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ギンイロノウタ      村田沙耶香

2018-09-09 05:26:31 | 村田沙耶香

新潮文庫


文章と自分の間に揺れ動く狂気。ビジイテチンノンヨチイクン、と


思わず口ずさんでいる自分に狂ってしまったのか、とうすら恐くなる


「ひかりのあしおと」。


「ギンイロノウタ」では、指し棒が恋人とばかりに押し入れの天井に


雑誌などから切り取った目をセロテープでくっつけ、自慰にふける小


学生を登場させ、高校生になると、ギンイロの扉を見つけようと、やっき


になる。


それにしても、高校教師が赤津野有里を教室の前に立たせスピーチを強要する


というのは、無神経な上に、それ自体がイジメだ。殺と書き殴って、心を


沈める気持ち有里の気持ちもわかる。あれっ、わかってるって、ちょっと、


いっちゃってんのかな? と自分が心配になってくるおれっちだった。 

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タダイマトビラ    村田沙耶香

2018-09-04 10:33:06 | 村田沙耶香
新潮文庫  平24年


村田女史の作品を読むたびに、その作品の揺るぎなさとクレイジーさ


に愕然とすることになる。


母性のない母に育てられた恵奈は、「カゾクヨナニー」という家族欲を


解消する方法を工夫する。そうやって工夫して生活し、ニナオという存


在も欠かせず、トビラを見つけるまでを描く。


トビラとは人間をやめることだろう。家族を捨てる、とは、そういうこ


とをコミュニティーでは指すだろう。


衝撃的な作品をこんなに書いてきている村田女史。ホントに大丈夫なんだ


ろうか、と思うが、けっこう本人はあっけらかんと、にこやかだったりす


るので、おかしなものである。
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コンビニ人間   村田沙耶香

2018-08-25 12:52:34 | 村田沙耶香
文藝春秋   2016年6月



この世界のルールに馴染めない、なんか異な感がある、フツー


にして暮らせない、そもそもフツーってなんですか? と。


コンビニバイト歴18年36才処女未婚、古倉恵子の苦悩を描く。


クズの白羽はホントにクズとして描かれている。けど、こんなク


ズは現実にはちょっといない。といえば、古倉さんもいないのでは、


でも、このコンビニ人間という小説は完結している。ひとつのコン


ビニという題材によって、世界として成り立っている。


これが、文学というものの、おもしろさではないか……。


もしかして、村田女史が根底として、古倉さんと繋がっているから


こそ、こんなリアルさの伴った作品ができあがったのでは。


村田女史という人間の奥深さ、不思議さ、ますます、他の作品も


読んでみたくなってきた。
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