古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

となり町戦争     三崎亜記

2018-08-30 14:05:03 | 三崎亜紀
集英社  2004年 第十七回小説すばる新人賞受賞作


姿の見えない戦争、それはいかにも不気味だ。


紙の上でだけ死者数が表され、そこに実感はない。


戦争というものの恐ろしさは、それをしない者には実感が伴わ


ないことなのだ。



この作品でも、まわりの人は死んだと言われるが、そこに、



「リアル」はない。



すべてにおいて、ここでは「リアル」らしいことはない。



香西さんの肉体さえもが空虚だ。そして、香西さんさえ、手に



することは本当の意味では「ない」のだ。



すべてが手の指の間をすり抜けていくようだが、確実に、巻き込ま


れていっている恐ろしさ。


読後に、作者の描ききった感が如実に感じられる、快心のデビュー


作でしたね。


コメント
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