古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

もぞもぞしてよゴリラ/ほんの豚ですが     佐野洋子

2022-01-29 02:15:24 | 佐野洋子

小学館文庫    1988年

 

「~ゴリラ」には本人はヘタといっているが、素晴らしいエッチング

 

がある。線にオリジナリティがある。文章も超現実といってよく、ファ

 

ンタジーでもなく、かといってリアルではない世界が描かれる。

 

椅子は歩くし、しゃべるし、最後はゴミの山で壊れてしまう始末。

 

悲劇なのか、と問われれば、そのような気もするし。死んだ猫が、

 

ブツブツ言った、「力いっぱい生きたのよ」、「力いっぱい死んでい

 

るのか」、「ぼく、すごく短く生きたみたい、鳥みたいに、花みたいに。

 

すてきだったなあ。もう一回ぼく、真っ白いハンカチになっても、同じ

 

ことするの」という会話がある。これは佐野女史からのメッセージだ。

 

精いっぱい生きてみろ。そしたら、いっぱい死ぬことができる。たく

 

さんの生を同時に、何人分も生きるのだ、それが、作家といういきもの

 

らしい。……合掌。

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あれも嫌い これも好き     佐野洋子

2021-12-22 03:36:50 | 佐野洋子

朝日文庫    2003年

 

佐野女史の本は全部読んだ、と思っていたが、この本の

 

取りこぼしがあったようだ。

 

このエッセイの中で心に残ったのは、「食べて下さい、残

 

して下さい」だろう。実の父が病気になり、実にうまそうな

 

うなぎを買いに走らされる。父上はうなぎ屋の娘がげっそり

 

していたのが、しばらくして行ってみると、ぷっくりとしてい

 

るのを見てからうなぎ信奉者なのだ。そのうなぎを父上は

 

食べるわけだが、洋子女史の分はない、なにせボンビーだ。

 

そして、父上の様態が悪化していくと、半分残す。残したのは

 

子供たちが分けて食べるわけだが、うなぎはほんとにうまいが

 

父上の病気が悪くなっていくことも気がかりだ。食欲と、親への

 

心配の気持ちがないまぜになって、実に切ないエッセイだ。

 

そこに、子供ながらに、佐野女史がよく表れていると思う。

 

つれないけど、かわいいやつ、そんなひとだね。……合掌。

 

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私はそうは思わない    佐野洋子

2018-12-16 11:40:19 | 佐野洋子
ちくま文庫   1987年5月


ベスト盤ともいうべき佐野さんのベストを集めた作品集。


これを読めば、佐野さんはほぼコンプリートしたといって


いいであろう。


反骨精神あふれるタイトル通り、怒っているランボーの


ような佐野画伯はすごくかっこいいのであった。


ボクも煙突のようにモクモクとタバコを吸って70過ぎで


死にてえなあ......合掌。
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シズコさん    佐野洋子

2018-12-13 11:58:43 | 佐野洋子
新潮文庫     2008年


佐野さんと母上との関係を描いたエッセイ。


ボケたことによって、関係が溶けていく様は素直に感動を呼ぶ。


ボクとハハの関係はこの上なく良い。ストレスも感じることはほとんどない。


シカトするところはシカトすれば良いのだ。いちいち目くじら立てていたら


関係はすぐに悪化するだろう。まあ、ボクはオトナなんで。


母上が亡くなられたときは、ご自身も癌になっていたとかで、まあ、母上より


先に死ぬこともなかったのが、良かったことかもしれない。


母上はボケて寝たきりだったという、誰もが体験する自分の母の死を見つめた一冊。
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がんばりません     佐野洋子

2018-11-20 15:06:57 | 佐野洋子
新潮文庫   昭和六十年


本の雑誌に連載していたものらしい。


布団がお好きだったらしいが、布団はボクも好きだ。


布団というか敷き布団が好きなんですね、ボクは。


相変わらず、息子さんはいい薬味になっている。


アヒルの子で白鳥のどこがいいの? アヒルに悪いじゃん、


は傑作である。


そういうものの見方ができる息子に育てた洋子さんはさすが


である。


いい線いってるよ、ホント。


それと、おかしいのが、顔が柴犬で体がダックスフンドという佐野


さん家の犬。


犬は基本NGなのだが、そんなヘンテコな犬なら、許せる。


マア、なにを許すのかわからんが。


お父上の話も何度もされているが、昔の父上って、偉そうだったのだな


となぜかチチのいなかったボクなんかは面白いな、と思って読んだ。


それにしても、佐野さんのエッセイ、中毒性高いな。


                       (鶴岡卓哉)
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ふつうがえらい     佐野洋子

2018-11-11 12:13:48 | 佐野洋子
マガジンハウス    1991年


じゃあ、ふつうってなんだ? という問いも浮上してくる。


フツーのサラリーマン、フツーの時計修理工、フツーの教師


など。中間的って意味か。年収が平均の人のことか。


人並みにおカネもらってる人は偉いよな、オレ、思うに。


単純にさ、人並みにおカネもらうってたいへんなことだよ。


という本書は、いろいろなところに書いたエッセイの寄せ集め。


てんでばらばらである。が故に、飽きることもない。


パートナーがいて幸せなころに書かれたらしく、それがちょっと


鼻につくといえば……。


でも、いつもの毒舌的な、ちょっと悪ぶってる佐野さん、悪くな


いです。
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神も仏もありませぬ    佐野洋子

2018-11-02 12:47:05 | 佐野洋子
ちくま文庫   2003年


”ボケ”を題材に、これほど流ちょうに語れるとは驚きである。


本人はボケているとおっしゃっているが、、文章はよどみなく


巻末の中嶋有のお父上(初めて知った)のニコニコ堂の店主の、


素人と比すると、数倍文章が巧いのがわかるようになっている。


ボクが好きだったのは納屋、納屋、というエッセイで、こぶしの


木がなくなって、淋しい思いをしていると、農家の庭先に大きな



こぶしの木があって、切ってしまうと言うのを、ノンコという女


性が、「これ、私が買う。私のお金で買う」と叫ぶ。


そして、自分の引っ越しした庭先に植えるという、実に粋な話だ。


小林秀雄賞受賞。





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役にたたない日々    佐野洋子

2018-09-05 11:02:44 | 佐野洋子
朝日文庫   2003年~2008年


この本には珍しく、古本で線引きがしてあった。最近では線引きの本は


廃棄されるらしい。でも、これを読んだ人はきっとこの本を途中までし


か読んでいない。半分くらいで線引きは終わっていた。


たぶん、韓流のところで読むのをやめたんじゃないかと思う。


ちょっとわかりずらい文章だもんな。


幻想とリアルが混在してゆくようなスタイル。


佐野女史のサバサバした感覚と物言いは読んでいて、たのしいし、それが、


いかに後ろ向きな発言でも、読み手にとっては前を向く言葉となって行く。



亡くなって八年、ヨーコさんの言葉というEテレでも放送されている番組が



あるように、見直されているのではないだろうか。
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