麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

泳ぐ機関車

2012年12月19日 | 鑑賞
ハジメは夢の中で、憧れの
西鉄ライオンズの八番ライトで
逆転満塁ホームランを放つ!

逆転満塁ホームランを打つのは
簡単なことではないが、
打率四割はさらに困難な仕事だ。

劇団桟敷童子の『泳ぐ機関車』を観た。

この劇団のおもしろさの打率は
八割を超えている。
凄いことである。

冒頭書いたのは、舞台のワンシーン。
大手忍が演じる小学生の
ハジメの目を通した物語は、
桟敷らしく本水使いや大仕掛けも
盛り込まれてはいたが、
今回はいつもの派手な活劇調ではなく
とても《大人な》作品に仕上がっていた。

活劇調では構造上避けがたい
「悪者」を今回はこしらえずに行ける
色合いの舞台だったから、
登場人物の個々に深みがあった。

深みという切り口で言えば……。

俳優の成長に合わせた、
或いは成長を見込んだ配役が
桟敷童子の《劇団力》の原動力で、
今回は前述のように大手が
二時間の舞台を見事に牽引した。

看板女優の板垣桃子は個性的な髪型の、
ハジメの祖母で登場。
他のベテラン陣(?)とともに
脇で存在感を発揮し、
芝居全体に厚みを加えていた。

『泳ぐ~』は、筑豊炭鉱を舞台にした
ハジメたち三姉弟三部作の最終章。
けれども描かれる時代はもっとも古く
リーフレットの言葉を借りれば
「エピソード0」。

そんな作品で、劇団として、
また大きな一歩を踏み出したと
感じたのは僕だけではないだろう。

桟敷童子も気付けば歴史を重ねて
世代交代や路線変更なども課題となる
「集団としてのお年頃」なのだが、
打率はもっと上がるなぁと、
錦糸町に向かいながら噛み締めた。

それから。
「生きろ、生きろ!」ラストの
突き刺さる台詞に貰った元気を
携えながら……
コメント
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