人生悠遊

写真付きで旅の記録、古都鎌倉の案内などを、周りの人の迷惑にならないように紹介していきます。

「普通」ほど普通でない言葉はない!?

2021-05-30 19:16:06 | 日記

来月の父の日を前に子供から何が欲しいと聞かれ、〇〇で良いよと答え、そこにはメーカーと製品名と色まで指定して送りました。そしてその商品を求め販売店に出かけたようですが、指定した色がなく別の色の写メを送ってきました。そこで当然ながらその色は似あうかどうかと聞き返しました。こちらは現物を見ていないのですから、率直な意見を求めた訳です。やり取りのあと、子供からの返信は「普通」の一言。思わず「普通」とはどういう意味かと返しました。最近の若者は「普通」と答えることが多いようですが、「普通」では可なのか不可なのか分かりません。辞書を引けば、どこにでも見受けるようなものであること。なみ。と書いてあります。まもなく古希を迎える者の判断基準は、普通の反語である「特別」「専門」なのですが、何事も平等であれという教育を受けてきた子供世代にとって「普通」が評価の一基準になっているかもしれません。それが良いのか悪いのか・・・?たぶん老人の戯言でしょうね。

ついでにもう一言。昨日の読売新聞に海外からの帰国者が書類の形式不備で入国できないようなことが書いてありました。私の経験でも役所に出した書類が住民票の住所でないとか、日付が書いてないとか、ハンコが違っているとか、何度も突っ返されたことがあります。渋沢栄一の『論語と算盤』読んでいますが、そこにこんなことが書いてありました。

かつて交換教授として米国より来朝せられたメービー博士が、帰国に際し、語った談話があります。・・・。日本人は、とかく形式を重んずるという弊があって、事実よりは形式に重きを置くということが強く見える。アメリカは最も形式を構わぬ流儀であるから、・・・。少しく形式に拘泥する弊害が強くなってはおりはせぬか。そうだとすれば、これはよほど御注意せねばならぬ事と思う。

コロナのワクチン接種でキャンセル分のワクチンを廃棄したというニュースを耳にし、河野コロナ担当大臣が書類なんて後で整えればよく、なんで貴重なワクチンを棄てるのかという談話を発していました。大事な本質論を無視して形式だけで判断した結果でしょう。一事が万事、こんなことをされていたら日本の将来を危惧するばかりです。

 

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鎌倉を知る ーー円覚寺と華厳経ーー

2021-05-30 13:42:30 | 日記

円覚寺を訪れ、最初に目に入るのは総門の「瑞鹿山」の扁額。そして三門にあるのが伏見上皇(1265-1317)の筆跡を写した「円覚興聖禅寺」の扁額。そしてさらに進むと仏殿があり、その扁額には「大光明宝殿」と書かれています。『かまくら子ども風土記』には北朝第四代である後光厳天皇(1338-1374)の筆跡を写したものと書いてありますが、どうも『華厳経』の世界を表わした文字のようです。

奈良の東大寺は華厳宗のお寺で毘盧遮那仏が本尊。円覚寺のご本尊は宝冠釈迦如来ですが、毘盧遮那仏そのものとされ光の仏(光明遍照)と言われています。その仏が安置されている建物が「大光明宝殿」。まさに円覚寺の仏殿には『華厳経』の世界が広がっている訳です。また南北朝初期(1334-1338)のものとされる「円覚寺境内絵図」には、現在の黄梅院のある場所に華厳塔(華厳経を納めた塔)が建っています。では『華厳経』はどんなものか?『華厳の思想』(鎌田茂雄著)、『華厳経入門』(木村清孝著)、『華厳の研究』(鈴木大拙著)等をテキストにしました。

華厳経はインドで生まれ、タクマラカン砂漠のホータンで編纂、中国で翻訳されました。『法華経』は絶対に滅びることのない永遠の真理(妙法・正法)を「法」のかたちで説いたお経。『華厳経』は大方広仏華厳経とも言われ、仏を重視した経典です。砂漠の星空をみて広大無辺の宇宙と仏とを一体化したのでしょう。そして華厳宗は開祖・杜順(557-640)、二祖・智儼(602-668)、三祖・法蔵(643-712)、四祖・澄観(738-839)、五祖・宗密(780-840)と続きますが、唐の則天武后の時代の法蔵から時を経て宗密の時代になると禅の影響を強く受けました。その華厳経「性起品」の仏性現起(あらゆる衆生には仏性が備わっていること)の考え方は禅宗の考え方とほぼ同じですし、江戸時代に活躍した白隠禅師は、人々は光輝く仏性を備えており、この娑婆はそのまま光輝く浄土で、みな毘盧遮那仏の真理の世界に住んでいるのだと語っています。

以上、円覚寺が華厳経の影響を強く受けていることは分かりました。しかし誰が、何のために華厳の世界を求めたか?はまだ不明です。妄想ははたらくのですが・・・。

 

 

 

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鎌倉を知る ーー円覚寺と『円覚経』ーー

2021-05-29 14:02:40 | 日記

『円覚経』という経典の名が『吾妻鏡』に出てくるのは和田合戦で和田一族が滅亡した後ではないでしょうか。まず『吾妻鏡』の建暦三年(1213)十二月三日の条に、将軍家(源実朝)寿福寺に御参、仏事を修せしめたまふ。これ左衛門尉(和田)義盛以下の亡率得脱のためと云々。同じ十二月に建暦から建保に改元され、同月二十九日に、将軍家、御自筆を染めて、日頃円覚経を書写せしめたまふ。今日供養の儀あり。導師は荘厳房行勇。そして三十日に、昨日供養の経巻をもって、左衛門尉義村に仰せて三浦に遣わし、海底に沈めらると云々。御夢想の告あるによってなり。

そして時代は下り、文永・弘安の役を経て弘安五年(1282)十二月八日、無学祖元を迎えて円覚寺が開山されました。円覚寺発行の冊子『円覚寺』(貫達人 著)によれば、寺号の円覚寺の由来は、寺地選定の後、この地から石櫃にはいった円覚経を掘り出したことによるといわれているとあります。

さて和田合戦や元との戦いで戦死した人の霊を、敵味方の区別なく供養するためのお経として『円覚経』がでてくるのですが、これまでどんな有難いお経なのか知らないで過ごしてきましたので少し勉強してみました。

『華厳の思想』(鎌田茂雄 著)には、『円覚経』は華厳宗の第五祖・宗密禅師(780-840)がその哲学を樹立した。『円覚経』は人間の心の本体を明らかにする経典であるが、中国の仏教でもっとも重視されたお経である。円覚は一切の根源であり、悟りの当体である。円覚とは鏡のような清らかな心の本体をいう。鎌倉の円覚寺はその名をこの『円覚経』からとっているのである。

さらネットで検索した曺 潤鎬氏の論文はもう少し詳しいので引用させていただきます。

『円覚経』は8世紀の初めに中国で成立した。宗密が深く関わっている。正式には『大方向円覚修多羅了義経』。「円覚」とその成就について説くことを目的としている。無明・幻の滅によって実現されたさとりとされる。そのさとりに至るには、特別な方法や段階的修業などは必要なく頓悟頓修を基本的立場とする。端的に表明すれば「衆生本来成仏」とする。この「本来成仏」は術語として『円覚経』ではじめて用いられた。

まだまだ論文は続くのですが、どうもこの「本来成仏」(衆生そのものがもともと成仏していて仏である)がキーワードでしょうか。この考え方であれば、修業する機会もなく戦死した人の菩提を弔えますし、亡くなった中国人の魂も救えます。源実朝や無学祖元はそう考えたかもしれません。

 

 

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ポルトガルワインを試す ーー⑰QMロウレイロ・アルヴァリーニョーー

2021-05-27 19:14:24 | グルメ

さて今回はヴィーニョ・ヴェルデ地方のワイナリーであるキンタス・デ・メガルッソのQMロウレイロ・アルヴァリーニョです。このワインはメルカド・ポルトガルからいただいたワインカタログには掲載されていない初入荷商品。ブドウの品種はアルヴァリーニョ。前に試したレゲンゴ・デ・メルガッソ・アルヴァリーニョと同じ品種です。カタログに未掲載のため店のコメントを得られませんので私の感想を書くしかないのですが、残念ながら語彙不足でギブアップします。そうはいっても折角なので一言。このワインで17本目ですが、このシリーズがまだ継続しているのは繰り返しになりますけど、ハズレがないということでしょうか。間違いなくコスパの高いワインです。

このワインが生産されるメルガッソ村は既に訪ねていますので多くは語りません。キンタス・デ・メガルッソは地元の500人のぶどう農家が共同出資する形で生まれたワイナリーだそうです。カタログに代表者らしいエリオの顔をみることができますが、「アルヴァリーニョ」の伝統を継承と品質向上に励んでいる誠実そうな人柄が滲みでていました。実際にあったことはありませんけど・・・。

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ポルトガルワインを試す ーー⑯デゾウロ・ダ・セー・ティント・プライべートセレクションーー

2021-05-20 21:59:03 | グルメ

このシリーズ、16本目のワインはデゾウロ・ダ・セー・ティント・プライべートセレクションという何とも長い名前の赤ワインです。ワイナリーはダン地方にあるウダカ。このワイナリーのワインは3本目なので馴染みがありますが、特にこのワインは特別ブレンドで醸造家が「完璧」と自画自賛する逸品とカタログに書いてありました。確かに一口含むと口の中で渋みや酸味が複雑に絡み合った不思議な味わいが広がります。トウーリガ・ナショナル、アルフロシェイト・ブレトなどダン地方で採れるブドウを特別にブレンドしたものですが、これがブレンドの技なのでしょう。カタログに載っているウダカの4本のワインの中では値段は最も高いのですが、それでも2,200円(税込)。高級ワインなど飲んだこともない身にとって相応な贅沢なひとときを楽しみました。

さてこのダン地方の中心都市はヴィゼウという町です。モンデゴ川支流のバヴィア川沿い。穏やかな丘陵地にブドウ畑が広がり、ダオンと呼ばれる有名なワインの産地であることは前にも取り上げました。ワインというのは、その土地に実ったブドウが大地から水分を吸収して育ち、微生物の力を借りて発酵させ醸造するものですが、輸入されたワインを飲むことはポルトガルそのものを飲むことにほかなりません。というのは、アルコールの化学式はC2H6O。炭素分子が2個、水素が6個、酸素が1個結合したものです。このCは有機物でありポルトガルの大地が育んだもの。ひょっとしたら何かの遺伝子情報がワインを飲んだ私の体内に取り込まれたかもしれません。こんなばかばかしい妄想も素性がはっきりしたポルトガルワインならではの愉しみですね。興味ある方は是非チャレンジしてみてください。

 

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