治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

講演「神経発達障害という突破口」ご報告 大前提として

2019-03-04 18:00:31 | 日記
そういえば、新しい読者が増えた=若い世代が増えた  ので
(たとえば今30歳の読者は花風社ができたとき7歳でしたよね)
キャラバン世代ならそれなりに知っていた「浅見の前職」とか「ニキさんと浅見の出会い」とかも知らない人が増えたっていうことですよね。
それを講演では手短に説明しました。
今回これは結構重要な情報なんです。でも何しろ盛りだくさんの講演だからあっさりと説明。

私は翻訳系出版社で編集の仕事をし、それから著作権エージェントになりました。この会社では翻訳者のエージェントもやっていました。海外から売り込みのある著作物のシノプシスを大量に作る任務もありましたので、翻訳家の卵の皆様とも仕事をし、結構な翻訳者のデビューに力を貸しました。

花風社を作ってからは最初、翻訳出版物のプロデュースや編集協力をしていました。自分も十数冊訳書を出しました。それと翻訳者養成講座をやって、翻訳者を育てては出版社に売り込んだりしていました。その講座にやってきたのがニキさんです。

だからニキさんと私は、著者と編集者である前には訳者とその師匠だったのです。今はニキさん、私のことを「浅見さん」と呼びますが、以前は「先生」でした。そういう使い分けがニキさんにはできるくらいの社会性は若い頃からあったのです。
ニキさんに限らず、私がなんらかのかたちでかかわった翻訳者の人たちは、出版不況、なかでも翻訳物のプレゼンスが下がった中でもそれなりに仕事をしているようです。

私は翻訳出版界でも革命を起こそうとしていました。それはどういうことかというと、最初から日本語で書いたように読みやすい訳でなければいずれ読者は国内物に採られるだろうという危機感をギョーカイ(あっちの)に訴えていました。今になってみると、ミステリなんかは、割とそうなっちゃったんじゃないでしょうかね。読みにくい翻訳でも海外ミステリがそれなりの地位を得ていたのは国内作家が育っていなかったからです。今、海外ミステリとか読んでいる人どれくらいいるんだろ。当時は海外ミステリの方が人気あったんですよ。

でもそれとは方針の違う翻訳家の大先生たちもいました。たとえば、パラグラフは崩さない。英語で1パラグラフでも日本語では二つに分けた方がよくても崩さない。なぜかというと「パラグラフを原文にそろえておかないと編集者がチェックするときわかりにくいから」とかいうのです。

こういうこという大先生が私はきらいでした。なぜならこういう大先生は編集者のために仕事をしているみたいだからです。

本は誰のために出すのでしょう?

編集者のために出すのではないのです。

本は読者のために出すのです。だったら編集者のチェックしやすさより読者の読みやすさを優先させろよ、というのが私の方針でした。

で、まあ今度凡医訳を見たわけですが、それで気づいたのは

・パラグラフ変えない
・同じ単語には同じ訳 例えばinterventionには「介入」
・品詞変えない
・大学受験英語みたいな「訳しあげ」の多用

で、基本的に「読者のために訳す」というより「上に立つえらい先生たちに怒られないように訳した」んだなあとわかったということでした。

google翻訳さんもわりと大学受験英語みたいな感じで出版翻訳を手がける人間の翻訳家には及ばない感じですが、少なくとも助動詞は知っているので、凡医訳よりはあてにできそうです。

そして

杉様本とかの存在が教えてくれるのは「アンチョコで済ます先生も多いのかも」っていうことです。

そしてその杉様本で知的障害を担当した若い(たぶん)先生は、秀才みたいです。
DSMの当該箇所をよくまとめていらっしゃるところもあります。

たとえばなぜ知的障害が起きるかの原因論。
割とちゃんとまとめていらっしゃる。

そしてそこを読むだけで「生まれつきとは限らない」っていうことは明らかなんですが。

それでも言うんでしょ? 凡医たちは。「生まれつきで治りません」って。

そうじゃない、っていうことは杉様本だけでもわかりますよ。
だから凡医を問い詰める会のメンバーたちが凡医を問い詰めるとき、この杉様本はなかなか役に立ちますよ。
知的障害の原因のとこみてください。生まれつきとは限っていませんよ。

そして秀才らしくまとめの上手な先生が、予後に関してだけは大きくDSMを外している。

面白い現象だな~と思うのですが、私は翻訳出版を濃く知り、アカデミックな世界を薄く知っていて、しかもギョーカイのていたらくを二十年みてきた立場から説明ができました。ので会場の皆様には説明しましたね。

あとね、これはテクニカルな話なので興味ない方はここまででいいんですが

=====き====り====と====り====線=====

日本語と英語では品詞変えないと無理、というのは出版翻訳では常識です。
ときには形容詞+名詞が1センテンスになることもあれば動詞が形容詞になることもあります。
英語のネイティブが自然に読んでいるように日本語のネイティブに自然に読んでもらいたかったら品詞は変えるのが当たり前。構造の違う言語なんですから。
でもその結果大胆な訳になってアタマの固い誰かに叱られるのを怖がる人は絶対こういうことやりません。

限局性学習症ってなんのことかわかりますかみなさん。
学習障害です。
Specific Learning Disorder
は「限局性学習症」なのです(日本精神神経なんとか学会定訳)。
限局性はglobalの反対語です。
つまりglobalにlearning disabilitiesがあるのが知的障害で、specificなのが学習障害です。そして訳語がつねに同じ限局性。

不自由でしょう。
でもこうしないといけないんだろうな~。

訳す先生たちも不自由だけどその被害を被るのは読者なんですよね~。

まーちさんのおうちでは12年前からnutritional interventionとしてのホエイプロテインを知っていました。NYで習ったのです。

そしてなんとか学会の定訳によるとinterventionは「介入」一択ですから、「栄養介入」になります。でも「栄養療法」というのが一般的な普通に流通している日本語ですね。

そしてこよりさんちでは親子で笹舟を川に流して遊んでいるうちにお子さんの弱視は治りました。

これをもしこよりさんがライセンスビジネス化し、笹舟を一個一万円で売って、「こより印の入った笹舟じゃないと川に流してはいけません」とか「正しい笹舟の流し方ライセンスを更新するために一年に一回参勤交代してくださいね」とか言い始めたらそれは「笹舟療法」になるのかもしれない。そしてこよりさんは笹舟長者として笹舟御殿を建てるかもしれません。

でもそういうことはやらない。
猫本を読んで「あ、これいい!」と思ったらまねをすればいいんです(近くに手ごろな川があれば)。

こよりさんちでやったのはお母さんがお子さんの目の弱さに気づいて行ったinterventionだけど介入も療法も療育も訳語としてはふさわしくないですね。「働きかけ」というのが浅見訳です。
そういう風にね、他人に本当に伝えたいのなら、一単語一訳みたいなことはしないんですよ。

読む方には配慮がなくて「仲間内やえらい先生に叩かれないこと」を主眼に置いた小作人システムの訳は読む方が大変です。

そう、小作人システム。医療や福祉の小作人システムが「治る」を阻んでいるのです。

続く(たぶん


新刊「NEURO 神経発達障害という突破口」


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講演「神経発達障害という突破口」ご報告 凡医の間の情報流通システム編

2019-03-04 15:39:27 | 日記
3月3日の講演終わりました。
私が大雑把に作った赤いお札を持って全国から集まってくださった方々、ありがとうございました。予告通り入り口に置いておいた「iHerb」の箱にどんどん入れていくという方式で受付がスムーズに済みました。あの部屋は一応定員83名なんです。でも83名は無理ですよね。たぶん83個椅子があるっていうだけの話なので70人くらいで打ち切ったつもりだったんですけど何人か員数外の人がいます。画伯、愛甲さん、私。そういう人の数も入れると本当に椅子はギリギリでしたね。大雑把ですみません。

そして時間が来たらサクサク話しました。花風社の会は途中しゃべりたい人がいたらしゃべってもらったりしますが、今回はそれは原則なし、ということにしました。とにかく情報量が多かったし、休み時間はきっちり取りたかったです。普段離れて暮らしていてネットとかで交流している人同士がリアルで話ができるチャンスですし。

最初にNEUROがの五文字がdevelopmental disorders についたとき、私が大納得した話をしました。ギョーカイがなぜ無視するかの予測も話しました。無視すること自体はさほど大きな問題ではないのです。なぜなら、原書も当該コーナーだけ読んでも、なぜNEUROの五文字がついたかは書いていないので。ただ、NEUROがついているかどうかで今後各種のinterventionからよさそうな方法を選ぶとき大きな目安になるんだけど、ギョーカイはそれに全然気づかず、あるいは気づかぬフリをしながら、効果のない従来型の療育を売りつけているしこの状態は変わらないであろう、という予測を話しました。

だからこそ、勝手に治ってしまえばいいんです。
そして治すのは医者じゃない。支援者でもない。
治すのは本人であり親御さんです。
だってNEUROだから。

ちょうど前日に花風社クラスタのまーちさんから情報が。まーちさんは十数年前にNYで自閉っ子育てをやってきて今ご子息は立派な会社にお勤めなのですが、当時からホエイプロテインのnutritional interventionの情報はあったこと。つまり要するにNEUROだよ、っていうことは2010年より前にはわかってたわけですね。

それを杉様が杉様本で推奨していらしゃるのは1974年に生まれたペアトレらしい。かれこれ半世紀前ですわ。おそろしい。それをね、DSM5の出た2013年以降もね、大真面目に病院でね、国民から集めた医療費食ってね、たいして効果もないのに繰り広げてね、それで「親が下層階級だから来ない」とか親の悪口言っている人がこの発達障害医療のトップオブトップなのですよ。

そしてどうしてこうやってギョーカイが古い情報を変えないのか、今回DSM5原書と訳書とアンチョコを読んで見えてきた「凡医の間の情報流通システム」について話しました。支援ギョーカイは基本的に小作人システムだと。だからこそ、凡医を問い詰めてその陳腐性を暴露しないといつまでもあいつら(凡医の群れ)は

1 生まれつきの
2 脳機能障害で
3 一生治らない

と嘘を言い続けるので凡医を問い詰めることの必要性を皆さんが納得できるようにお話しました。まあこれは「NEURO」に詳しいです。

そして三つの解放の話も「NEURO」に詳しいです。
頭蓋骨からの解放、治せない医療からの解放、一生治らないという思い込みからの解放。
このへんは本で読めるので皆さん楽しみにしていてください。

続く(たぶん

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新刊のご案内

2019-03-04 14:17:40 | 日記
*2月23日にご登録者にお送りしたメールを貼ります。
しばらくこのご案内がトップに出ます。
日々の更新はこの下をご覧ください。

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新刊「NEURO 神経発達障害という突破口」発売のお知らせ

お世話になっております。花風社の浅見です。
すでにブログで何度も告知していますとおり
花風社は3月、新刊「NEURO 神経発達障害という突破口」
(浅見淳子著 1200円+税)を出版いたします。

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 多くの元発達障害児たちが「昔、発達障害だったよ。でも治った」と言いながら自分の好きな仕事について楽しみながら社会貢献している。
 それが私の夢見る未来である。 ――本書より

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2013年にDSM(アメリカ精神医学会 精神疾患の分類と診断マニュアル)が19年ぶりに改訂され、DSM-5が発表されました。
そこで発達障害は神経発達障害と総括されることになりました。
花風社のやってきた身体アプローチでなぜ一次障害が治るとしか言いようがないほどの改善例が相次いだのか、神経発達障害という新定義は教えてくれます。
つまり花風社にとって神経発達障害という新定義は腑に落ちるものです。

けれども日本の発達支援のギョーカイ(医療・福祉・教育)は驚くほどこの「神経」の二文字に無関心なようです。
だから、適切な介入が導き出せていません。
そして相も変わらず「生まれつきの脳機能障害で一生治らない」という見解を20年変えようとしません。
けれども、浅見は今般DSM-5の原書に目を通し
NEUROの五文字は「発達障害は治る」という希望であると同時に「どうすれば少しでも改善できるのか」の工夫を導き出す大きなヒントになると気づくにいたりました。
NEUROの五文字がどんな意味を持ち、何を説明し、そしてなぜ日本の支援の現場ではあまり取り沙汰されないのか。
そういう20年変わらぬ支援の渦巻く中で少しでも子どもたちにいい未来を作っていくためにはどのような選択をすべきだと考えられるか。
それを書きました。

おそらく一読後誰かにプレゼントしたい! と思われる皆さんが多いと思いましたので、企業努力の末本書の定価を抑えました。
一冊お買い求めの方には「なぜ神経発達障害だと治るのか? 一目でわかる絵はがき」をおつけします。
そして既刊も含めまして二冊以上お買い上げの方には小暮画伯と浅見の合作「凡医を問い詰める会 会報」漫画をおつけいたします。
既刊も含めてお買い上げ冊数分だけおまけをおつけいたします。

発達障害の医療の大部分は、まだ医療の体をなしていません。
よりよい未来のため、医療者に盲従するのではなく、対等に交渉していく必要があります。
二冊以上お買い上げの方へお送りする付録漫画は、そのヒントにしていただきたい漫画です。

いずれも送料無料にてお送りいたします。
一般書店(ネット書店を含む)より数日早くお届けできる予定です。



「NEURO 神経発達障害という突破口」コーナーはこちらです。



また、既刊で何かお探しの方、まだ読んでいなければぜひ「自閉っ子のための道徳入門」をオススメいたします。
「真剣に一般社会との共存を考える」という花風社の哲学のバックボーンとなった一冊です。増刷出来いたしました。ぜひこの機会にお買い求めください。





ここ数日のブログを見ていただければ、新刊「NEURO」について詳細が載っております。
2月22日のブログには本書の大河漫画も一部立ち読みできるようになっております。
よろしければごらんください。



2019年2月23日、花風社は創立23周年を迎えました。
皆様のご愛顧に感謝いたします。
今後とも花風社の本をよろしくお願いいたします。

浅見淳子

*新刊「NEURO」
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