スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦コナミグループ杯&無限遡行

2024-03-19 19:21:26 | 将棋
 17日に鬼怒川温泉で指された第49期棋王戦五番勝負第四局。
 伊藤匠七段の先手で角換わりを志向しましたが,後手の藤井聡太棋王が拒否して村田システムの立ち上がり。先手だけ飛車先を交換してから棒銀に。棒銀は銀が交換になれば成功ですが,この将棋は飛車先交換をしてからの銀交換でしたから,通常ほどの成功ではなかったかもしれません。それでも先手が歩を得する進展でしたので,失敗ということでもなかったのだろうと思います。
                                        
 後手が3五の歩に狙いをつけてきたところ。ここで先手は☗2六銀と打って受けました。これは棒銀で交換した銀を互いに打ち合うという進展なので後手の方が得をした筈で,先手にとっては雲行きが怪しくなってきたといえそうです。
 後手は☖5五歩☗同角と捨ててから☖3一角と引きました。これは先手に銀を打たせたことに満足して,角を別のところで使おうという意図で,この意図が見事だったと思います。
 先手は☗2五歩☖3三銀と引かせました。ただ引いた後手の銀を守備に効くのに対し,歩を打ってしまった先手は銀を働かせるのに苦労しそうですから,この二手の交換も先手にとって損だったように思えます。
 ☗7七桂と銀取りに跳ねましたが,5筋の歩を捨てておいた効果で☖5四銀。
                                        
 角取りですから角を逃げるほかありませんが,☖8六歩から角を転換した後手が,歩を損してはいるものの駒の働きで上回り,指しやすくなりました。
                                        
 3勝1持将棋で藤井棋王が防衛第48期からの連覇で2期目の棋王です。

 この部分は『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』と『短論文Korte Verhandeling van God / de Mensch en deszelfs Welstand』を対象としている箇所なので,國分は『知性改善論』の議論に沿って進めていきます。ですからここでもそれに倣いますが,真理veritasのしるしsignumが必要であるということはスピノザに特有のことではないのですから,ここでいわれていることは,スピノザにだけ妥当するというわけではないという点に注意しておいてください。つまりこの種の問題は,真理獲得の方法methodusを示そうとするときには,常につきまとうものであるということです。
 『知性改善論』では,方法論の導入部分で,真理のしるしについて考察される前に,探求をしていくための道具instrumentumについての考察がされています。探求するのは知性intellectusですから,ここでいわれる道具というのは観念ideaのことを意味します。つまり探求を進めていくにあたってはその探求をするための道具としての観念が必要だということです。このこと自体は当然のことであって,方法について探求するためにはどのような思想であっても必要とされることです。ところがこの場合,この道具は方法そのものを意味することになってしまうので,ある種の無限遡行に至ることになってしまう危険性が伴っています。実際にスピノザはその危険の中に踏み入れてしまったといっていいと思うのですが,こうした危険性というのはやはりスピノザに特有のものではありません。
 何らかの道具を作るためには,その道具を作るために別の道具が必要とされます。しかしその道具を作るためには別の道具が必要で,その道具を作るためにも別の道具が必要で,といった具合に無限に連鎖していってしまうというのが,ここでいわれる無限遡行です。実際はこういう無限遡行があるということは,『知性改善論』を執筆している時点でのスピノザは気付いていました。スピノザはこのことを鉄を鍛えるという例を用いて説明しています。すなわち,鉄を鍛えるためにはハンマーが必要だけれども,ハンマーを製作するためには別のものが必要で,それを製作するためにさらに別のものが必要でといった具合に無限に連鎖してくけれども,だから人間は鉄を鍛えることはできないという結論を出すことはできないというのがその例です。

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